第7週「笑売の道」第45回 11月22日(水)放送より。
脚本:吉田智子 演出:東山充裕

45話はこんな話
風鳥亭は、この時代に珍しい、平日の昼興行を始め、女性客を取り込むことに成功した。
そこへ、風太(濱田岳)が京都からやって来たが、なにやら浮かない顔で……。
ざわざわ その1
「わろてんか」を観ていると、なんだか心がざわつく。
45話はとりわけ、15分間、解決しようのないざわつきが寄せては返す波のように襲ってくるのを止められなかった。
まずは、「おてんさんを僕に貸してくれないか」という栞(高橋一生)の申し出に、ものすごい深刻な音楽がかかるところ。
てん(葵わかな)も藤吉(松坂桃李)も怪訝な顔をするが、話はそれほど不穏なものではなかった(そりゃそうだ)。
大阪の小屋で物品を売ろうとしている栞は、てんのひやしあめの発想が気に入ったので、売るのを手伝ってほしいというのだった。
「そんな真顔で追われたら本気にしてしまうだろ」と藤吉。
ははは! と笑い出す伊能。
ざわざわする。
高橋一生は必死に笑っている。本来、からっと明るく笑うことよりも、影を残して笑うほうが合っている感じの俳優なのに。そこが切ない。
たぶん、このドラマで描きたいことのひとつだと思われる(顔で笑って、心で泣いて的なこと)を彼は体現している。
さらに、栞は、てんを借りる代わりに、藤吉の手伝いで、大きく赤い蝶ネクタイをしてちんどん屋をはじめた。
ただし、高橋一生は、意外とヘンテコな服は似合う。「カルテット」のウルトラソウルパンツとか、「池袋ウエストゲートパーク」や「怪奇大家族」のオタクぽい風貌とか。舞台「から騒ぎ」ではカールした髪(かつら)でドレスを着て女性を演じ、かなりハマっていたものだ。
ざわざわ その2
栞と藤吉を見て、「男前やなーっ」と女性たちが注目する。
老女の腰まで治ってしまった。
それを見て、すかさず「腰も治る風鳥亭〜」と宣伝文句にする藤吉。お、また役に立ったじゃないか。
「ええ男はんに頼まれたらいやとは言えませんわなあ」と啄子はほくほく。
てんには「妬いたらあきまへん。これが商いです」と釘を刺す。
松坂桃李、高橋一生、ふたりのイケメン売りしている「わろてんか」について、完全に開き直っているような場面だった。
ざわざわ その3
女性を呼ぶために、寄席の営業を平日の昼間にもやることにした藤吉たち。
ひやしあめを売って、呼び込みをしていたのは昼間だったが、あれは休日シーンだったのだろうか。とおそらく、ながら見してない視聴者たちはそろって疑問に思ったことだろう。
だいたい、かなり長いこと──6時間くらい興行しているようだったけれど、それも休日のプログラムだったのだろうか。
ミステリードラマならともかく、実は、実は、とあとから情報が出てくるのは、視聴者を困惑させるばかりだ。
ざわざわ その4
「さすが伊能さんやわ」と言った舌の根も乾かぬうちに「さすがはごりょんさん」と言うてんの調子の良さ。
ざわざわ その5
東京で成功したリリコ(広瀬アリス)と電話で話しているときに、ものすごくやさしい藤吉。
この優しさが、女を苦しめる。
あんまり関係ないけどざわざわ
リリコの記事を栞が読んでいる場面で、新聞に「訂正補正日本刑法論」(1895年発行)の広告らしきものが入ってる。これを書いた岡田朝太郎は、1912年(第二文学館が開業した年)に勲三等瑞宝章を受けている。たまたま新聞をリアルに再現しただけかもしれないが、刑法論だなんて、なんだか物騒。
最大のざわざわ
リリコに風鳥亭に出てほしいと思いながら、言い出せなかった藤吉。
「わかるよ つらいな、経営者は」と栞は言って、藤吉と相撲を取り出す。
「あさが来た」でも主人公のあさ(波瑠)が相撲をとるエピソードが印象的だったが、女性が土俵にあがれない競技を女性がやるから意味があったわけで、「わろてんか」では、つらさを隠してはしゃいでいるのはわかるのだが、「あさが来た」の相撲の使い方が巧かっただけに・・・。
でも、そのあと放送された「あさイチ」でイノッチ(井ノ原快彦)が「(男は)ふたりきりになったらだいたい相撲します」と肯定。
そうなの? ほんとうに? イノッチの言葉は影響力大なのに。
15分間に加えて「あさイチ」までざわつきが引っ張られた45話だった。
(木俣冬)