確定拠出年金で積立・運用する財産を「年金資産」と言いますが、加入者は年金資産を長期間に渡って、金融機関に預けていきます。複数の機関がそれぞれの役割を持って運営されますが、万が一破綻した場合の年金資産を保護する仕組みが法律で定められているのです。
今回は、企業型確定拠出年金(企業型DC)の各金融機関の役割と、破綻した場合の取扱いなどをご紹介していきます。最近では、金融機関が経営破綻するということもあり得る話なので、自分の資産がどうなるのか、理解しておくと変に不安になったり慌てたりせず済みますよ!
※前回記事「退職、転職時にすべきこと」についてはこちら
各金融機関の役割
企業型確定拠出年金の仕組みには、「運営管理機関」「資産管理機関」「商品提供機関」という3種の金融機関が関わっています。まずは、それぞれの役割について説明します。
1.運営管理機関
運営管理機関は、「運用関連運営管理機関」と「記録関連運営管理機関」の2種類です。
運用関連運営管理機関の役割は「運用商品の選定、および加入者等へ提示」、「商品の運用に関する情報の提供」をすること。
記録関連運営管理機関の役割は「加入者等の氏名、住所、個人別管理資産額等の記録管理」、「運用指図の取りまとめ」、「給付申請の受付」などです。役割からレコードキーパーとも呼ばれています。
2.資産管理機関
資産管理機関は、掛金と年金資産を企業の財産から分離して、保全管理する機関です。
1の運営管理機関がとりまとめた加入者の運用指図に基づき、運用商品の売買や受給権者への給付金の支払い等を資産管理機関が行ないます。
主に信託銀行が引き受けしています。
3.商品提供機関
商品提出機関とは、拠出された掛金で運用する金融商品を提供する機関のことです。銀行、投資信託会社、生命保険会社、損害保険会社などが該当します。
各機関が破綻した場合の年金資産の取扱い
次に、各機関が破綻した場合に、年金資産の取り扱いにどのような影響が出てくるかをみていきましょう。
1.運営管理機関が破綻した場合
確定拠出年金の年金資産は資産管理機関が保全しており、仮に運営管理機関が破綻しても年金資産は影響を受けず、守られます。2.資産管理機関が破綻した場合
資産管理機関(信託銀行)は、信託銀行の資産と加入者等の年金資産を分別管理することが信託法で定められています。そのため、資産管理機関が経営破綻しても、加入者の年金資産は銀行の資産とは分けて保全されるのです。したがって、加入者の年金資産は全額保護され、速やかに他の資産管理機関に引き継がれます。
3.商品提供機関が破綻した場合
商品提供機関では、運用商品を提供する金融機関によって加入者保護の仕組みがそれぞれ定められています。(1) 預金
決済用預金(当座預金や決済用普通預金)を除く一般の預金と合計して、元本1,000万円とその利息までが預金保険制度の保護対象です。
たとえば、確定拠出年金の定期預金がいつも使っている銀行と同じ場合、
「両方の合計額が1千万円とその利息まで」が預金保険機構によって保護されます。
なおこの場合、一般の銀行預金のほうが確定拠出年金の預金より優先して保護される仕組みです。
(2) 損害保険
損害保険契約者保護機構により、保険金・返戻金の9割までが補償されます。
(3) 生命保険
生命保険契約者保護機構により、責任準備金等の9割までが補償されます。
(4) 投資信託
販売会社:加入者等の年金資産を保有することはないため、販売会社が破綻しても年金資産は保全されます。
運用会社(委託会社):加入者等の年金資産を保有することはないため、運用会社が破綻しても年金資産は保全されます。
受託会社:加入者等の年金資産を保有していますが、受託会社の固有資産とは分別管理されているため、受託会社が破綻しても年金資産は保全されます。
4.勤務先の会社が破綻(倒産)した場合
年金資産は資産管理機関が管理し、会社の財産とは明確に分別されています。したがって、仮に勤務先の会社が倒産しても、それまで積み立ててきた年金資産は全額保全されます。今回は、運営管理機関や資産管理期間が破綻した場合の資産の保全規定に関して解説しました。現状では、基本的に保全される仕組みは整っていると言えます。ただし、どんなケースでも全額が保全されるというわけではないことも覚えておきましょう。
(解説:加藤博 イラスト:トレンド・プロ)
▼解説者プロフィール
株式会社LSFP 加藤博
保険会社、コンサルティング会社などを経て2013年にFP会社(株式会社LSFP)を設立。
金融商品の知識が深く、確定拠出年金に関しては、個人型と企業型の両方に精通。細かい制度内容や手数料などを、お客様にわかりやすく説明することで、お客様自ら判断できるようコンサルティングしている。
お金の心配をなくして、人生をもっと楽しくイキイキと送ってもらえるよう、金融面で支援することが使命。
▼トレンド・プロ
日本初のマンガ広告制作会社で1,500社、6,300件以上の実績を持つ。
動機付け、興味の喚起、ストーリー性、分かりやすさなど、マンガの持つ強力な訴求力を活用し、効果ある広告
を提案できるノウハウは、マンガ広告だけでなく難しい書籍をコミカライズするビジネスコミック制作にも拡がり
を見せ、10万部を超えるヒット作を続々手がけている。
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