今あるお金と未来のお金で区分して貯蓄を考えよう
前回は確定拠出年金の受け取り時の注意点について解説しました。
では、確定拠出年金のように毎月積立する場合は、お金の掛け方をどのように考えるべきでしょうか?
資産運用の方法として、「今ある貯金を運用していく方法」と「これからの給料から積み立てる貯蓄方法」では、考え方が少し違います。
まとまったお金を増やすためには、運用利回りが良い金融商品を選ぶ必要があります。
現在、日本は低金利が続いており、大きく増えるような商品はありません。金利が低いなかでも、少しでも有利な商品を選ぶ必要があります。
確定拠出年金は、ある金融商品に「定期的に」「一定金額を」「長期間に渡って」積み立てる方法です。
今回は一定金額を長期間にわたって積み立てする方法の一般的な例として「ドルコスト平均法」というシンプルな投資方法を紹介します。
※前回記事「一時金で受け取る? 年金で受け取る?」についてはこちら
「ドルコスト平均法」の特徴
さて、ドルコスト平均法による積立投資の特徴を理解するためのクイズを用意しました。
(特徴を理解するための架空の金融商品で、値動きは基本的に直線的に動くものとし、分配金や各種手数料、税金などは考慮しない。)
縦軸は商品の価格で、横軸は年数です。
商品は最初1万円ですが、毎年値下がりし7年目では2,000円となります。
その後、上昇に転じて10年目の価格は5,000円となりました。
この商品を毎月1万円積立投資した場合の、10年目の成績はいくらになるでしょうか?(積立総額は1万円×12ヶ月×10年=120万円)
答えは(3)「約139万円」となります。
この商品に最初に120万円一括投資した場合、10年後は半分の60万円になりますが、積立投資の場合は、同じ商品に120万円投資しても、10年後の価格が半分になっても約20万円増えているのです。
商品の価格が半分になっても、なぜ、増えたのでしょうか?
仕組みを分かり易くするために、次のような事例で考えてみましょう。
例えば、毎月1万円でリンゴを購入するとします。
1ヶ月目:リンゴの価格は 1つ100円でした。100個購入しました。
2ヶ月目:リンゴの価格が 50円に値下がりしました。このとき、200個購入できました。累計で300個持っています。
3ヶ月目:リンゴの価格は200円に値上がりしました。このときは、50個購入しました。累計で350個持っています。
この時点で、350個のリンゴを1個200円で売却した場合、いくら手に入れることができるでしょうか?
350個×200円/個=70,000円
積立投資もリンゴの場合と同じで、毎月同じ金額を投資していきます。毎月、投資信託などの「量」を買い込んでいきます。
投資する商品の価格は毎月変わるので、購入できる「量」は毎月変化していきます。価格が下がるとたくさんの「量」が購入でき、価格が上がると買える「量」が減ります。
このように「量」を積み上げていく方法が、ドルコスト平均法です。
最後に積み上がった「量」を将来の価格で売却します。
このときの成績が投資の成績となります。
投資の成績は次のような式で計算します。
もう一度、先ほどの問題をみてみましょう。
1万円からスタートしてから、2,000円まで価格が下がっていますが、この間購入できる「量」が増え続けています。7年目の2,000円のときは、最初の5倍の「量」が購入できています。
この投資の成績=買い込んだ「量」×最終価格5,000円=約139万円
となったのです。
積立投資の場合、金融商品の価格が下がっても購入できる「量」が増えていきます。
「商品の価格が下がると損をしてしまう」と考えがちですが、これは一括投資の場合で、積立投資の場合は、「量」×「将来の価格」で投資の成績は決まります。
長期的な成長が期待できる投資信託を選ぶ
ドルコスト平均法を活用する積立投資では、分散投資が可能な投資信託を利用しましょう。
投資信託はマーケットの動向で価格が上下する「元本変動型商品」です。政治的な要因やリーマン・ショックのように世界同時に下落することもあります。価格が下がっても慌てず、「量」を買い込んでいくチャンスととらえて積み立てすることできます。
上げ下げを繰り返しながら、ゆるやかに成長が期待できる世界経済全体に投資するような投資信託などを選択したいものです。
確定拠出年金では、元本確保型の商品を選ぶこともできます。代表的なものは銀行の定期預金ですが、定期預金は値動きしません。
低金利の今、金利で利息を増やすのか、「量を買う」投資信託を活用するのか、判断していく時です。
確定拠出年金は売却時の価格が重要
確定拠出年金は60歳まで積立し、60歳から70歳の間に受け取ります。大切なことは「売却時の最終価格」です。投資の終盤にかけては、価格変動が少ない商品へシフトするなど、売却時を見据えた商品構成にする必要があります。
例えば、貯まってきた積立残高を海外株式に投資する投資信託から、国内債券に投資する投資信託に移し換える等です。
積立残高はWeb上のマイページで確認できます。また、年1回紙ベースのものが送付されるので、そちらでも確認できます。
(解説:加藤博 イラスト:トレンド・プロ)
▼解説者プロフィール
株式会社LSFP 加藤博
保険会社、コンサルティング会社などを経て2013年にFP会社(株式会社LSFP)を設立。
金融商品の知識が深く、確定拠出年金に関しては、個人型と企業型の両方に精通。細かい制度内容や手数料などを、お客様にわかりやすく説明することで、お客様自ら判断できるようコンサルティングしている。
お金の心配をなくして、人生をもっと楽しくイキイキと送ってもらえるよう、金融面で支援することが使命。
▼トレンド・プロ
日本初のマンガ広告制作会社で1,500社、6,300件以上の実績を持つ。
動機付け、興味の喚起、ストーリー性、分かりやすさなど、マンガの持つ強力な訴求力を活用し、効果ある広告
を提案できるノウハウは、マンガ広告だけでなく難しい書籍をコミカライズするビジネスコミック制作にも拡がり
を見せ、10万部を超えるヒット作を続々手がけている。
▼漫画と専門家解説でわかる「企業型確定拠出年金」シリーズ
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