企業型確定拠出年金(企業型DC)ってどんな制度?

近年、退職金制度がない会社が増えており、会社員の平均収入も伸び悩むなかで、20~30代のうちから老後資金について考えなくてはいけなくなっています。
老後資金といっても、普通預金の金利は低く、どこの銀行も大差ありません。
そこで、「企業型確定拠出年金制度(企業型DC)」が注目されています。会社によっては、導入の際に社内向けに説明会を実施しているところもあるでしょう。

今回から、「企業型確定拠出年金制度」についてその制度や特徴などを紹介していきます。


確定拠出年金は「老後の資産づくり専用」の制度


「確定拠出年制度」は2001年に開始された「老後資産づくり専用」の制度です。
制度の仕組みやルールは、法律(確定拠出年金法「平成13年法律第88号」)によって定められている国の制度で、「企業型DC」と「個人型DC(iDeCo)」の2つの種類があります。

2018年1月末時点の企業型の加入者数は約650万人で、導入している企業数は約3万社となっています。一方、個人型加入者数は約82万人となっています。(データ出典:厚生労働省「確定拠出年金の施行状況」


企業が一定額の掛金を積立てしていく


「企業型確定拠出年金」では、会社が一定額の掛金を積み立てしていきます。掛金額は年次や役職によって異なる場合があり、就業規則などで決められています。

また、会社によっては、企業の掛金に加え自分の給与の中から任意の額を追加で積み立てすることができる場合があります(マッチング拠出など)。


制度全体の仕組みを簡単解説


確定拠出年金は、個人ごとの専用口座で管理されます。掛金は個人ごとの専用口座に振込まれて、管理されるようなイメージです。この口座は個人のものなので、転職した場合でもなくならずに、残高は自分で持っていきます。(3年以内退職など引き継げない場合もある)

転職先に同じ制度があればその制度に移換し、制度がなければ個人型の確定拠出年金に変わり、60歳まで継続していきます。
企業型確定拠出年金(企業型DC)とはどんな制度?しくみを漫画付きで解説

会社は、金融機関(運営管理機関と呼びます)と契約し、従業員ひとりひとりに一定額もしくは一定率で掛金を決めて、加入します。
掛金は別の金融機関(資産管理機関と呼びます)で管理されます。

対象となる従業員の範囲や掛金額は企業ごとにルールが決められています。拠出する掛金の負担は会社ですが、運用は従業員である自分自身が行います。自身が掛金の運用商品を選ぶので、選ぶ運用商品が違えば、将来受け取る金額は同じ会社の従業員であっても異なってきます。


「企業型確定拠出年金」の主な特徴


「企業型確定拠出年金」の主な特徴は以下の通りです。
・毎月定額を積み立てる(積み立てる金額が確定しているので、「確定拠出」と呼ぶ)
・積み立てする期間は、原則60歳まで
・運用先は自分で選択する
・60歳以降、一括か分割で受け取る。途中で引き出すことはできない
・運用主体は企業で、企業が運営管理機関を選定する
・税金面での優遇が多い


掛金の優遇(保険料算出対象外になる・非課税)がある


税金面での優遇についてもう少し詳しく解説します。皆さんは、会社から受けとる給与について、毎月、所得税や住民税、社会保険料などが天引きされていますよね?

通常、会社から受け取る給与は課税されますが、確定拠出年金の掛金には課税されず、非課税となります。

また、社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料)も、月額給与額に応じて保険料が算出されますが、確定拠出年金の掛金は保険料算出の対象ではありません。

例えば、給与として月に1万円受け取った場合と、確定拠出年金の掛金として毎月1万円を受け取った場合を比較してみましょう。(所得税率10%、住民税率10%、社会保険率15%の場合)
企業型確定拠出年金(企業型DC)とはどんな制度?しくみを漫画付きで解説

〇給与で受け取った場合
社会保険料、所得税、住民税が差し引かれて、手取額は6,500円となります。

〇確定拠出年金の掛金で受け取った場合
所得税・住民税、社会保険料が差し引かれず、全額10,000円が受け取れます。

会社は同じ1万円を従業員に支払うのですが、給与で受け取る場合と確定拠出年金の掛金で受け取る場合では、随分違いますね。


この例では、月10,000円に対して3,500円も違ってきます。

1年間でみると、
給与で受け取った場合は、手取額6,500円×12カ月=78,000円
確定拠出年金の掛金で受け取った場合、1万円×12カ月=120,000円
差額が42,000円となります。20年、30年で見るとさらに大きな差になります。

現金で受け取って、1年間で78,000円を120,000円に増やそうとすると、元本が約1.53倍になるような運用商品でなければなりません。これはなかなか大変です。

この他にも、企業型確定拠出年金を活用するメリットはさまざまあります。次回は「企業型確定拠出年金のメリット・デメリット」について解説します。
企業型確定拠出年金は60歳から受け取れて、税制面のメリットが多い制度です

(解説:加藤博 イラスト:トレンド・プロ)

次回は企業型確定拠出年金のメリットとデメリットについて解説



▼解説者プロフィール
企業型確定拠出年金(企業型DC)とはどんな制度?しくみを漫画付きで解説

株式会社LSFP 加藤博
保険会社、コンサルティング会社などを経て2013年にFP会社(株式会社LSFP)を設立。
金融商品の知識が深く、確定拠出年金に関しては、個人型と企業型の両方に精通。細かい制度内容や手数料などを、お客様にわかりやすく説明することで、お客様自ら判断できるようコンサルティングしている。
お金の心配をなくして、人生をもっと楽しくイキイキと送ってもらえるよう、金融面で支援することが使命。

トレンド・プロ

日本初のマンガ広告制作会社で1,500社、6,300件以上の実績を持つ。

動機付け、興味の喚起、ストーリー性、分かりやすさなど、マンガの持つ強力な訴求力を活用し、効果ある広告
を提案できるノウハウは、マンガ広告だけでなく難しい書籍をコミカライズするビジネスコミック制作にも拡がり
を見せ、10万部を超えるヒット作を続々手がけている。

▼漫画と専門家解説でわかる「企業型確定拠出年金」シリーズ
(1)企業型確定拠出年金(企業型DC)とはどんな制度?
(2)企業型確定拠出年金(企業型DC)のメリット、デメリットは?
(3)企業型確定拠出年金と退職金・確定給付企業年金は何が違う?
(4)企業型確定拠出年金のマッチング拠出 節税メリットはどれくらい?
(5)企業型確定拠出年金はiDeCoやNISAと同時加入できるの?
(6)企業型確定拠出年金は退職、転職したらどうすればいい? 何もしないとどうなる?
(7)企業型確定拠出年金を預けた金融機関が破綻した! 自分の資産はどうなる?
(8)企業型確定拠出年金、一時金で受け取る? 年金で受け取る?
(9)企業型確定拠出年金はどう運用すればいい? 金融商品の基本的な選び方
(10)確定拠出年金を始めたらスイッチングを検討しよう! 運用開始後の見直し方
(11)企業型確定拠出年金のメリットを生かすには投資信託がおすすめな理由
(12)投資信託(企業型確定拠出年金)の20代~30代、40代、50代の世代別にみた活用事例
※全12回
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