今回は、企業型確定拠出年金(企業型DC)とiDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)との関係についてご紹介していきます。
前回記事「マッチング拠出」についてはこちら
企業型DCとiDeCo、NISAは併用できるのか?
iDeCoは条件次第で併用が可能
iDeCoとは「個人型確定拠出年金」の愛称で、2016年5月の改正DC法により、加入者範囲が拡大されました。改正前までは、自営業者(国民年金第1号被保険者)や企業年金制度のない会社員に加入者が限られていましたが、公務員や専業主婦等(国民年金第3号被保険者)、企業年金制度のある会社員も加入できるようになりました。
iDeCoは掛金の限度額が法令で定められています。企業年金制度のない会社員の場合は、月額23,000円(年額276,000円)が上限です。企業年金制度にすでに加入している会社員の場合は、加入している制度によって、上限が異なります。
(1)確定給付企業年金や厚生年金基金などの企業年金に加入している場合の限度額
月額12,000円(年額144,000円)
(2)企業型確定拠出年金に加入している場合の限度額
マッチング拠出制度がある場合⇒iDeCoには加入できません。マッチング拠出を利用します。
マッチング拠出制度がない場合⇒月額20,000円(年額240,000円)※
※企業型確定拠出年金の拠出限度額が年24万円引き下げされます。会社側での変更手続が必要な場合がありますので、事前に確認が必要です。
(3)企業型確定拠出年金と確定給付企業年金を併用している場合の限度額
マッチング拠出制度がある場合⇒iDeCoには加入できません。マッチング拠出を利用します。
マッチング拠出制度がない場合⇒月12,000円(年額144,000円)※
※企業型確定拠出年金の拠出限度額が年14.4万円引き下げされます。会社側での変更手続が必要な場合がありますので、事前に確認が必要です。
NISAは誰でも併用加入可能
NISA(少額投資非課税制度)は、2018年1月から「つみたてNISA」が追加となり、従来制度とどちらかを選んで利用可能となりました。NISAもつみたてNISAも運用益に対して課税されないという税制優遇制度です。
iDeCoやNISAと併用する場合の注意点
iDeCoもNISAも税制優遇のある制度ですので、併用して節税効果を最大限利用したいと思いがちですが、注意点があります。
生活費が不足しない程度に掛金を設定して運用する
いくら税制優遇のある制度だからといって、毎月の生活費が不足するような状態に陥り、キャッシング借入や、クレジットカードのリボ払いを利用して金利を支払ったら、税制優遇を超える不要な支出となる場合があります。
iDeCoやつみたてNISAを毎月積み立てする場合は、毎月のキャッシュフローを考えて掛金を設定しましょう。ボーナス時にまとめて利用することも可能です。
なお、iDeCoは60歳まで積み立てし、60歳以降に受け取るのが原則です。掛金を途中で中断することは可能ですが、受け取りは60歳までできませんので、一時的にまとまったお金が必要なときに引き出すことはできません。あくまでも老後資産形成専用の制度として利用しましょう。
通常の投資信託や保険との併用と比較してどうか
iDeCoで投資できる商品は金融機関(運営管理機関)によって異なりますが、元本確保型の定期預金や保険の金利はどの金融機関でもほぼ同水準(低金利)です。
投資信託は保有期間中にかかる信託報酬(=手数料)が商品によって違いますが、信託報酬が低い商品を多く取り揃える金融機関が増えてきています。同じ投資信託であっても、一般の商品よりiDeCoの方が、信託報酬が低く設定されている投資信託もあります。
つみたてNISAの投資対象は金融庁が定めた基準を満たす投資信託・ETFとなっています。
金融庁が商品を選ぶ基準は「低コスト」に比重を置いていますので、一般の投資信託よりも、信託報酬が低い商品構成となっています。
また、iDeCoもつみたてNISAも販売手数料ゼロ(ノーロード型)となっていますので、販売手数料が無く、通常よりも信託報酬の低い投資信託を選ぶことができるといえるでしょう。
併用している状態で退職したらどうなる?
iDeCoを併用している場合
(1)退職して専業主婦等(国民年金第三号被保険者)になる場合
企業型確定拠出年金の残高をiDeCoに移換し、運用を継続します。
掛金の上限は月額23,000円(年額276,000円)となります。
(2)企業年金制度がない会社へ転職する場合
企業型確定拠出年金の残高をiDeCoに移換し、運用を継続します。
掛金の上限は月額23,000円(年額276,000円)となります。
(3)企業年金制度がある会社へ転職する場合
転職先でiDeCo加入を認めていない場合は、iDeCoでの積立継続はできません。
今まで積み立てた金額の運用のみを継続していきます。(運用指図者といいます)
なお、企業型確定拠出年金の残高は、転職先の確定拠出年金へ移換して運用、積立を継続します。
NISAを併用している場合
退職・転職に伴う影響はありませんので、変更手続き等も発生しません。
(解説:加藤博 イラスト:トレンド・プロ)
▼解説者プロフィール
株式会社LSFP 加藤博
保険会社、コンサルティング会社などを経て2013年にFP会社(株式会社LSFP)を設立。
金融商品の知識が深く、確定拠出年金に関しては、個人型と企業型の両方に精通。細かい制度内容や手数料などを、お客様にわかりやすく説明することで、お客様自ら判断できるようコンサルティングしている。
お金の心配をなくして、人生をもっと楽しくイキイキと送ってもらえるよう、金融面で支援することが使命。
▼トレンド・プロ
日本初のマンガ広告制作会社で1,500社、6,300件以上の実績を持つ。
動機付け、興味の喚起、ストーリー性、分かりやすさなど、マンガの持つ強力な訴求力を活用し、効果ある広告
を提案できるノウハウは、マンガ広告だけでなく難しい書籍をコミカライズするビジネスコミック制作にも拡がり
を見せ、10万部を超えるヒット作を続々手がけている。
▼漫画と専門家解説でわかる「企業型確定拠出年金」シリーズ
(1)企業型確定拠出年金(企業型DC)とはどんな制度?
(2)企業型確定拠出年金(企業型DC)のメリット、デメリットは?
(3)企業型確定拠出年金と退職金・確定給付企業年金は何が違う?
(4)企業型確定拠出年金のマッチング拠出 節税メリットはどれくらい?
(5)企業型確定拠出年金はiDeCoやNISAと同時加入できるの?
(6)企業型確定拠出年金は退職、転職したらどうすればいい? 何もしないとどうなる?
(7)企業型確定拠出年金を預けた金融機関が破綻した! 自分の資産はどうなる?
(8)企業型確定拠出年金、一時金で受け取る? 年金で受け取る?
(9)企業型確定拠出年金はどう運用すればいい? 金融商品の基本的な選び方
(10)確定拠出年金を始めたらスイッチングを検討しよう! 運用開始後の見直し方
(11)企業型確定拠出年金のメリットを生かすには投資信託がおすすめな理由
(12)投資信託(企業型確定拠出年金)の20代~30代、40代、50代の世代別にみた活用事例
※全12回