連続テレビ小説「なつぞら」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

第5週「なつよ、お兄ちゃんはどこに?」 27話(5月1日・水 放送 演出・田中正)視聴記録


川村屋と角筈屋とは
平成から令和に元号が変わった。新時代の到来に、なつは北海道から東京へ──。
兄を探して、富士子とふたり東京へやって来たなつ。
信哉に案内されて、川村屋というレストランに赴く。
最近、茨城のワープステーション近現代地区が撮影で大活躍している気がする。新宿の街から、セットの川村屋の一角へ。奥からちょっとカーブして向かって右手に店があるというこのアングル、「半分、青い。」のおもかげのときと似ている。そして、映っていない奥を曲がると雪月がありそうな気がしてしまう。

インドカリーが人気の川村屋のモデルは中村屋、近所の書店・角筈屋は紀伊国屋書店(角筈は昔、新宿1〜3丁目一帯の地名だった)であろう。いまもある新宿のランドマークに、いまはなき新宿ムーラン・ルージュなどこの当時、青春を過ごした人にはたまらないであろう。60〜70年代の政治の季節を過ぎて文化の中心は渋谷に移っていくが「なつぞら」は新宿が文化の中心として活気づいていた頃が描かれそうでわくわくする。

舞台俳優から声優もやることになった戸田恵子がムーラン・ルージュで歌っていたクラブ歌手として、美空ひばりの「リンゴ追分」(52 年)を歌うのも、「なつぞら」がやがてアニメ編に入っていくオープニングを思わせるようではないか。戸田恵子は「まれ」(15年)では魔女姫人形としてナレーションをやっていた。

川村屋の女主人は比嘉愛未。「どんど晴れ」(07年)のヒロイン。
彼女は盛岡の老舗旅館に嫁ぎ女将として奮闘する。岩手の土地の伝承なども取り入れて描いたドラマで、「ゲゲゲの女房」(10年)以前に座敷わらしなどの妖怪要素があった。「どんど晴れ」は美しい着物が視聴者に注目されたドラマだったが、今回比嘉はエキゾチックな民族衣裳で登場。ミステリアスな雰囲気でなにかを企んでいるふうだ。

「ケチで言ってるわけじゃないんだから」
面白かったのは、川村屋のメニューが高価(雪月の三倍 カレーは120円 週刊朝日の戦後値段史年表によると55年頃カレーライスは100円とあるので、ちょっとお高め設定)で富士子たちが節約しようとするところ。信哉が気を効かせておごると言うと「ケチで言ってるんじゃないのよ」と富士子もなつも言い、すっかり母子になっている感じと、それなりにプライドをもっている感じ、そのふたつを一気に描いてみせる。
さらに、それを聞いていた光子が「私、ケチなんですよ」と宿を手配する代わりに川村屋で食事をちゃんととってくれと交渉するとき言う。
「なつぞら」がいいのは、こういうチクリとしたところ。もともとなつに無理して笑うことはないと泰樹が言っていることをはじめとして過剰な気遣いがない。いやいや、いつでも互いに気遣いあってニコニコ穏やかに過ごそうよと思う人もいると思うが、泰樹とトヨのように相手に容赦なく切り込んでいきながらコミュニケーションする関係もあっていい。

第5週「なつよ、お兄ちゃんはどこに?」(4月29日・月〜 演出・田中正)あらすじ


ある日、東京からひとりの学生が訪ねて来た。なつ(広瀬すず)と生き別れた幼なじみ・佐々岡信哉(工藤阿須加)だった。感動の再会もつかの間、信哉から兄・咲太郎(岡田将生)が新宿で働いているらしいと知らされ、なつは動揺する。
そんななつを見ていた富士子(松嶋菜々子)は、一緒に東京に行こうと提案。夏休みを使って、なつは富士子とともに9年ぶりの上京を果たす。東京の目覚ましい復興に圧倒されつつ、なつは新宿の有名店・川村屋を訪ねる。そこの美人マダム・光子(比嘉愛未)から兄について貴重な情報を聞く。
「なつぞら」27話。東京には比嘉愛未、リリー・フランキー、戸田恵子がいた

第29回(5月3日・金 放送)あらすじ


信哉(工藤阿須加)に連れられ、なつ(広瀬すず)と富士子(松嶋菜々子)は浅草の劇場にやってきた。大音響と熱気のステージが終わり再び明かりがつくと、スポットの中に独特な格好をした男が姿を現す。男はステージの上でひとり歌いだし、やがて音楽に乗ってタップを踏み始めた。客席の男たちは一斉に、ステージに向かい罵声を浴びせる。すかさず、男も客を罵倒し始める。そのとき、なつがその男に向かって声をかけた…。
「なつぞら」27話。東京には比嘉愛未、リリー・フランキー、戸田恵子がいた

登場人物とキャスト 登場順


奥原なつ 広瀬すず 幼少期 粟野咲莉…主人公。戦争で父母を亡くし、兄と妹と別れ、剛男に連れられて北海道に引き取られてきた。生活を保障してもらう代わりに酪農の手伝いをする。
父の描いた家族の絵を大切にもっている。生きるために感情を押し殺してきたが、柴田家、とりわけ泰樹と触れ合うことで、素直に感情を出せるようになっていく。これからは酪農の時代だと考え、十勝農業高校で学んでいる。演劇部に入る。
佐々岡信哉 工藤阿須加 幼少期 三谷麟太郎…空襲のとき、なつを助ける。
柴田剛男 藤木直人…柴田家の婿養子。なつの父の戦友で、戦災孤児となったなつを十勝に連れて来た。妻を「ふじこちゃん」と呼ぶときがある。1955年時点では音問別農協組合で働いている。
柴田富士子 松嶋菜々子…剛男の妻。開拓で苦労してきたので、ひとに優しい。
柴田照男 清原翔(13 回から) 幼少期 岡島遼太郎…柴田家長男。
搾乳をさせてもらえない代わりに薪割りを頑張っていたが、なつが来たことを機にようやく搾乳させてもらえた。
柴田夕見子 福地桃子(13回から)幼少期 荒川梨杏…柴田家長女。牛乳嫌い。同い年のなつに嫉妬を覚えたが、剛男に説得されてなつを受け入れる。勉強ばかりして家の手伝いを全然しない。
柴田明美 平尾菜々花(13回から) 幼少期 吉田萌果…柴田家次女。
柴田泰樹 草刈正雄…柴田家当主。頑固者で幼いなつにも容赦なく厳しく接するが、意地悪ではなく、彼の人生哲学に基づいたもの。他人に頼らず己の力で人生を切り拓くことを心情としている。甘いものが好き。
奥原咲太郎 幼少期 渡邉蒼…なつの兄。タップダンスが得意で、米兵にかわいがられていた。
孤児院にいる。
奥原千遥 幼少期 田中乃愛…なつの妹。親戚に引き取られている。

2回
焼け跡にいたおばあさん北林早苗…情にほだされなつたちに食べ物を分ける。演じている北林は朝ドラ第1作め「娘と私」の娘・麻里の少女時代役を演じた。
戸村悠吉小林隆…柴田牧場で働いている。貧しい開拓団の八男に生まれ、幼い頃に奉公に出され、泰樹に世話になった恩を感じて尽している。
戸村菊介音尾琢真…悠吉の息子。嫁募集中。

4回
小畑とよ 高畑淳子…帯広在住。泰樹の昔なじみ。口の減らない元気な人。

小畑雪之助 安田顕…とよの息子。菓子店・雪月の店主。菓子作りに情熱を注ぐ。
小畑妙子 仙道敦子…雪之助の妻。
小畑雪次郎 山田裕貴(13回から登場) 幼少期 吉成翔太郎…雪之助、妙子の長男。十勝農業高校に通っている。演劇部。

5回
山田天陽 吉沢亮 幼少期 荒井雄斗…音問別小学校でなつと同級生になる。東京からやって来た。馬が好き。農業をしながら絵を描いている。
大作 増田怜雄…音問別小学校の生徒。
実幸 鈴木翼…音問別小学校の生徒。
さち 伍藤はのん…音問別小学校の生徒。
山田正治 戸次重幸…天陽の父。東京から北海道にやって来たが土地が悪く、農業ができず、郵便局で働いている。泰樹の協力を得て、土地を蘇らせる。

8回
山田陽平 市村涼風…天陽の兄。絵がうまい。

9回
なつの父 内村光良…日本橋で料理人をしていた。絵が上手。家族のことを思いながら戦死した。

10回
花村和子 岩崎ひろみ…音問別小学校の教師。 
校長先生 大塚洋…音問別小学校の校長先生。
山田タミ 小林綾子…天陽の母。

13回
居村良子 富田望生…十勝農業高校の生徒。演劇部に入り衣裳を担当する。
村松 近江谷太朗…柴田牧場と長い付き合いのあるメーカーの人物。奥様封筒をもってくる。

倉田隆一 柄本佑…十勝農業高校の国語の先生。

14回
田辺政人 宇梶剛士…音問別農協組合組合長。農協で一手に酪農事業をとりまとめ十勝を酪農王国にしたいと考えている。 

19回
門倉努 板橋駿谷 …十勝農業高校の番長。クマとサケを争った逸話をもつ。演劇部に入り、村長役を略奪する。
高木勇二 重岡漠 …十勝農業高校演劇部。メガネ。門倉に役をとられてしまう。
石川和男 長友郁真…十勝農業高校演劇部。
橋上孝三 山下真人…十勝農業高校演劇部。

21回
太田繁吉 ノブ(千鳥)…十勝農業高校の教師。ヤギのチーズは牛より「クセがすごい」と言う。

27回
前島光子 比嘉愛未… 川村屋のマダム
野上健也 近藤芳正… 川村屋の支配人
茂木一貞 リリー・フランキー… 角筈屋社長
煙カスミ 戸田恵子… 歌手。ムーラン・ルージュにいた。
三橋佐知子 水谷果穂…川村屋の店員
土間レミ子 藤本沙紀…カスミのいるクラブの店員

脚本:大森寿美男
演出:木村隆文 田中正ほか
音楽:橋本由香利
キャスト:広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 岡田将生 比嘉愛未 工藤阿須加 吉沢亮 安田顕 仙道敦子 音尾琢真 戸次重幸 山口智子 柄本佑 小林綾子 高畑淳子 草刈正雄ほか
語り:内村光良
主題歌:スピッツ「優しいあの子」
題字:刈谷仁美
タイトルバック:刈谷仁美  舘野仁美 藤野真里 秋山健太郎 今泉ひろみ 泉津井陽一
アニメーション時代考証:小田部羊一 
アニメーション監修:舘野仁美
アニメーション制作:ササユリ 東映アニメーション

制作統括:磯智明 福岡利武
(木俣冬)
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