久々の「道」パート。
こんなに無邪気すぎる若者、いないよ!
結婚し、北海道の悲別に行っていた里子の娘・しのぶ(清野菜名)が登場。清野菜名はこれでアザミ、しの、しのぶと一人三役だ。
里子が再婚する際、「母親の花嫁姿を娘に見せるなんて恥ずかしい」という不自然な理由で娘が出てきていなかったが、このサプライズのためだったのか(里子の年齢から、小学生くらいの娘を想像していたが……)。
里子からしのぶを預けられ、妻のしの(風吹ジュン)、孫の翔(菅谷哲也)&しのぶと一緒に暮らすことになった根来公平(橋爪功)は大喜び。
「しのぶは、昔のしのを思い出させるめんこい子だったんじゃ」
なんて言っていたが、そりゃそうだろう。
久々の登場となった清野菜名は、昭和感あふれるビジュアルに無邪気さ、そしてほんのりとただよう色気、そりゃあ「やすらぎ」スタッフたちや、シニア視聴者のハートを撃ち抜いてしまうわけだわという存在感。
そして、誰よりも清野菜名に思い入れがあるのは倉本聰じゃないだろうか。
翔&しのぶには、倉本聰の「理想の孫像」が投影されているのか、ファンタジーにもほどがある孫っぷりだった。
農作業の最中や、台風が迫る怖い夜にはふたりで歌いまくり。年齢設定は19歳&15歳らしいけど、いくら平成初期とはいえ、こんなに無邪気なティーンエイジャーいないよ。
歌のラインナップもだいぶシニア向けだ。
滝廉太郎作曲の「花」、北原謙二「若いふたり」、童謡「肩たたき」、唱歌「旅愁」、植木等「スーダラ節」、フォーク・クルセダーズ「帰って来たヨッパライ」……。
「スーダラ節」に関しては平成になってからリバイバルヒットしていたのでまだしも、バンドブームを直撃世代の若者がこんな歌、嬉々として歌うか!? ブルーハーツとか歌おうよ。
このふたり、「性」に関しても無邪気すぎる。
公平の語った怪談を怖がって、15歳の娘が19歳の男の布団に入り込んで一緒に寝るって……。あと何年かすれば、ブルセラや援助交際が問題になるような時代に、なんちゅうピュアな若者なのか。
山梨から北海道の悲別に移り住んでいた、しのぶはともかく、翔なんてちょっと前まで東京で、PC-9801のゲームやってたのに……。どうせ、エロゲーとかでしょ!?
「平成編」というには、さすがに違和感のある孫ふたりのキャラクター。「昭和編」(しかも戦時中)のノリを引きずってしまっているんじゃないだろうか。

理想の孫エピソードが続く孫ポルノ状態
これだけ倉本聰のファンタジーを投影された孫。当然、祖父の公平からするとかわいくて仕方がないようだ。
息子夫婦の家が停電や断水で困っていた時には「人の不幸は密の味。ずっと停電が続くといいと思ったな」なんて言っていたのに、ゴーカイな息子嫁・文子(秋元才加)が、翔としのぶの関係が噂になっていると告げると、
「孫の噂はやめてもらおう! あいつら、かわいいわしらの孫なんじゃ!」
と憤慨していた。
翔たちも、祖父母の愛情にバッチリ応えるパーフェクトな孫っぷりを発揮。孫のいる視聴者全員の胸をわしづかみにするセリフが飛び出していた。
翔は、かつて山で一緒に暮らしていた鉄兵(藤竜也)から、こんなことを言われたのだという。
「最近は子どもがみんな親を捨てて、よそへ出てっちまうのか」
これを聞いた翔はドキンとした。
「おじいちゃんとおばあちゃんの寂しさに気付いた。おじいちゃんとおばあちゃんの事だけは、そばにいて、オレ、ずっと守ってやろうって」
ファンタジー孫!
こんなこと言われたら、じいちゃんばあちゃん号泣モノだと思うが、翔よ、お前は東京の両親を捨てて山梨に来ているわけだが、それはオッケーなのか!?
ジジババ・ホイホイなエピソードはまだ続く。
翔は密かに養蚕を復活させようとしているというのだ。かつて、公平たちが家業としていた養蚕。しかも「小淵丸」という当時の品種を再現することを考えているようだ。
「今は大量生産の繊維じゃ。生糸なんかどこも扱ってくれん」
とは言っていたが、息子たちがバブル景気に踊りまくっているのを苦々しく見ていた公平だけに、孫が自分たちの「もったいない」精神を受け継ぎ、なおかつ養蚕を復活させようとしていると聞いて嬉しくないはずがないだろう。
じいちゃんばあちゃんにとって理想的すぎる孫エピソードが続きまくって、シニア層を喜ばせ過ぎ! もはや孫ポルノ状態だ。
てっちゃん(「テラスハウス」)、演技がんばって!
孫ふたりと暮らすハッピーな根来家に、以前、翔が農園の手伝いに行った際に知り合った木宮詩子(渡辺早織)が転がり込んできた。翔としのぶ、詩子の三角関係がスタート!
「道」パートが平成編に突入してからは、基本的に公平の目線でストーリーが進んできているが、ここにきてだいぶ翔が話の中心になりつつある。
しかし見ていて気になるのが、翔を演じる菅谷哲也の演技力……。
ヘタとまでは言わないが、橋爪功や平泉成、藤竜也といった名優たち、若手演技派として定評のある清野菜名と絡んでいると、どうしても見劣りしてしまう。
東京で、愛用のゲーム機やパソコンを捨てられた時、なんだか変な表情をしていたので「メチャクチャ怒っているんだな」と思っていたら、後に祖母の思いを知って感動していたと判明したこともあった。どうにも表情が硬くて感情が伝わりにくいのだ。
これから翔は、両手に花のハーレム状態に突入し、ますますストーリーの中心になっていくはず。もうちょっとがんばってくれると気持ちよく見られるんだけど……。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・Tver
『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日