プロデュースするコロナ禍での配信ライブと意識の変遷
持ち前の行動力と、人と人とを繋ぐコミュニケーション能力、そして音楽家としての成熟とキャリア四半世紀超のプロフェッショナルであることのプライド。そういったTERUの美点全てが最高の形で融合したのが、配信ライブイベントシリーズ『LIVE at HOME』ではないか? と考える。発端は2月、カーニバル中にサンマルコ広場でライブをするためHISASHIらと共にヴェネツィアへ向かったTERUは、ヨーロッパを襲ったコロナ第一波の影響により空港で足止めされるというハプニングに見舞われたこと。
カーニバルは途中で中止となり、発表の場が一旦は消失したが、そもそもTERUがヴェネツィアに魅了されるきっかけとなった友人でありヴェネチアガラス作家・土田康彦氏の計らいで急遽ムラーノ島のアトリエを借り、2日後には現地からオフィシャルYouTubeチャンネルを通じてライブを配信。カーニバル会場からの中継に代えてファンを楽しませた。
この初めての無観客ライブに手応えを得たTERUは、ドーム公演が立ち消えた失意のステイホーム期間中、コロナ禍におけるエンターテインメントのつくり方・届け方を熟考。偶然『ミュージックステーション』で目にした友人[Alexandros]の演出にインスパイアされ、自らメンバーに連絡を取り、映像制作チームと接触。
『LIVE at HOME』を企画立案し、自身の誕生日である6月8日、配信ライブ第1回をスタートさせる。プラットフォームはGLAY app。2018年にリリースした公式ストリーミングサービスのシステムを大改造し、配信機能を完備して臨んだ。
第1回はTERUが自宅スタジオから1人、弾き語りで配信。第2回は家を飛び出し函館のスタジオを舞台にTAKUROとアコースティックライブを実施、第3回は湘南のヨットハウスでHISASHIとDJ Mass MAD Izm*、キーボーディストのREOと共にクラブミュージック・アレンジを披露。10月3日に行われた第4回は、大学のキャンパスを舞台にJIROとTOSHI NAGAI、村山☆潤、ストリングス・カルテットを招きクラシック・アレンジに挑んだ。
TERUはプロデューサー兼演者として、まずは自分のアイディアを出発点にしつつ、各メンバーの性格や得意分野を把握した上でテーマを練り上げ、丹念にデモ音源を制作し、内容にふさわしい会場を選択。曲の世界観とシンクロした照明・映像演出にこだわり、オープニング映像やエンドロール、選曲理由のテキスト化に至るまで、配信を一つの作品として驚異的な手腕でまとめ上げている。
コロナ感染防止対策のため大人数で集うことは避けながら、少数精鋭のチームで経験値を積み上げ。会場側の人々とも緊密にコミュニケーションを取りながら、クオリティーの高い配信ライブを毎度つくり、届けている。