
アニメ『NIGHT HEAD 2041』まもなく放送開始
1992年に放送されカルト的人気を誇った伝説の深夜テレビドラマ『NIGHT HEAD』が、原作者・飯田譲治の生み出した新たな物語と、映像制作スタジオ白組による3DCGを駆使した映像により復活。オリジナルテレビアニメ『NIGHT HEAD 2041』の放送が本日、7月14日(水)からスタートする。エキレビ!では、本作でも原作と全話の脚本を務めた飯田譲治にインタビュー。【インタビュー前編】原作・飯田譲治の名作ドラマ『NIGHT HEAD』がアニメ化「ただのリブートでもリメイクでもない」

黒木兄弟は自分一人では書けなかったキャラクター
──プロデューサー陣からの意見の中で、『NIGHT HEAD』を新たなアニメとしてリブートするにあたって、特に重要だったと思うことを教えてください。飯田 ドラマにも翔子とかいろいろなキャラはいたけれど、基本的には直人と直也の二人の話だったじゃないですか。今回は、二人の兄弟の話を軸にしながら新しい要素を加えるため、メインキャラクターを増やそうと思いました。
それで、霧原兄弟の他にメインキャラを作るとしたら、どういう話、どういうキャラクターにすればいいのかなと考え、舞台を未来の話にして、タクヤとユウヤというもう一組の兄弟を作ったんです。最初にアイデアを出したのが自分なのか、それともスタッフの誰かなのかは、まったく覚えてないんですけど。
その設定で1話の脚本を書いたら、2組の兄弟を対比するような形で話を進めていくアイデアをみんながすごく面白がってくれたので、その方向で進めていくことになりました。
──飯田さんから見て、テレビドラマ版『NIGHT HEAD』でも主役だった霧原兄弟(直人&直也)は、どのようなキャラクターですか?
飯田 直人と直也は基本的に自分の分身みたいなところがあるんです。いつもイライラしていて、すぐにキレそうになるし。逆にすごく弱いところもあって、すぐにへこんじゃったりもする。自分の中のキャラクター性を二人に分けたようなキャラクターなんです。
──飯田さんの中には、普段は冷静なのにキレると超能力を使ってしまいがちな直人と、優しくて争いごとが苦手な直也の両方の面があるのですね。
飯田 キレても、直人みたいに手は出さないですけどね(笑)。

──では、もう一組の主役でもある黒木兄弟(タクヤ&ユウヤ)も、飯田さんの中にある要素から生まれたキャラクターなのでしょうか?
飯田 この二人は霧原兄弟とは完全に逆で、自分の中にはいないキャラクター。プロデューサーたちの意見をエッセンスとして取り入れたキャラクターになっています。(脚本から)コンテになるときに、そこでまた良い具合にキャラクターが跳ねているところもあって。
そういう意味では、より今のアニメらしいキャラクターに近づいた感じがあるし、自分一人では書けなかった、みんなの意見をもらったからこそ書けたキャラのような気がします。自分の中にはいないキャラだから、少し大変なところもあったけれど、それはそれですごく面白い作業でした。
──黒木兄弟のどういったところが飯田さんにはない要素だったのですか?
飯田 いろいろあるけれど、ちょっと斜に構えたものの見方とか。あとは、ギャグのセンスもそうですね(笑)。間違いなく、全部自分が書いたけれど、自分の中にはなかったキャラクターです。
アニメだと、こういうキャラでもいけるんだと驚いた
──霧原兄弟の他にも、翔子、御厨恭二朗など『NIGHT HEAD』シリーズのファンには、おなじみのキャラクターが登場しますね。飯田 そこに関しては、書いていたら自然にそうなった感じです。曽根崎(道夫)も自分の中では愛着あるキャラなんですよ。
──テレビドラマ版で霧原兄弟を狙う企業ARKの刺客だった曽根崎は、本作では黒木兄弟の同僚として登場します。
飯田 曽根崎に関しても、周りのスタッフが上手く味付けをして面白く膨らませてくれた気がします。あと、(小林)君枝も面白いキャラになりました。いつも裸みたいな格好をしていて、実際にいたら怪しい人だけど(笑)。
──君枝は本作のオリジナルキャラクターである謎の女性ですね。たしかに、あのビジュアルは実写では成立しづらいですし、アニメならではのキャラクターかもしれません。
飯田 テレビアニメだと、こういうキャラクターでもいけるんだなって驚きました。そういうところも勉強になったし、新しい感覚があって楽しかったですね。

──個人的には、テレビドラマ版に登場したミラクルミックが登場することも嬉しかったです。ただ、若い視聴者は、元ネタである「超魔術師」のあの人を知っているのかなという心配もありますが(笑)
飯田 ははは(笑)。
──昔からの『NIGHT HEAD』ファンへのサービス的な感覚もあったのでしょうか?
飯田 いや、全然そんなことはなくて。
最初から最後までアニメだから成立した物語
──脚本を書く際、実写か、アニメーションかという違いは大きかったのですか?飯田 それはもうまったく違いますね。アニメは映像化できることの範囲がすごく広いから、自分のチョイスできる選択肢の幅もすごく広くなるので、自分のアイデアを試される。そういう意味でもすごく面白かったです。
ただ、アニメならではの制約もあって。今回は、3DCGだったのでキャラクターの人数制限があることには驚きました。
──そこは、実写と真逆のところですよね。実写の場合、登場する役者さんを増やすことはそこまで大変なことではないと思いますが、3DCGアニメの場合、主要キャラだとモデルから制作する必要があるので、コストも時間もかかってしまいます。
飯田 そうそう。脚本で、10人の想定で書いたところを「人数を半分に減らせませんか」と言われて、5人で成立させる方法を考えたり。そういう苦労はありました。
──放送開始前なので、具体的には話せないことも多いかもしれないですが、アニメだからこそ描けたアイデアなどもあったのでしょうか?
飯田 それはもう、ほとんどがそうです。逆に、最初から最後までアニメだから成立したってところしかないくらい(笑)。
──この取材の時点では、3話までの完成映像をご覧になっているそうですが、映像になったことで、さらに魅力的に感じたキャラクターなどがいれば教えてください。
飯田 みんな良かったですけど、特にタクヤとユウヤは、きっと今の若い方々が好きになってくれるだろうなと思いました。中世的な雰囲気の直也のキャラクターも、僕だけでは絶対に作れない。
あとは、さっきも話しましたが、君枝も必要以上にセクシーな女性になっていて面白いですね。
今の時代の感覚をすごく込めている作品
──「企画の始動から放送まで5年」という言葉を聞き、すごく大変だったのだろうと想像していたのですが、お話を伺っていると、すごく充実した時間だったのかなと感じました。飯田 書くのはもちろん大変だったけれど、その過程は楽しかったし、本当に幸せだなと思いました。だって、もう還暦を迎えた男が、自分よりも若い40歳くらいのスタッフから新しい『NIGHT HEAD』を書いてくれと頼まれること自体が幸せなことですからね。
しかも、そうやってできたアニメを今度は10代、20代の若い方々に観てもらえる。本当に幸せな環境の中で成立した作品だと思いました。

──このインタビューを読んでいる人の中には、私のように『NIGHT HEAD』が好きで、「あの『NIGHT HEAD』がまたアニメになるんだ!」と楽しみにしているファンと、本作で初めて『NIGHT HEAD』という作品に触れることになる人がいると思います。それぞれに向けてのメッセージをお願いします。
飯田 旧作を知ってくれている方は、「30年経って、飯田はどんなところが進化したのかな」という視点で観てくれたら嬉しいです。まったく新しく観る人は、今の社会をテーマに、今の時代感覚を込めた作品なので、それを受け取って、自分たちが生きている時代の背景をもう一回考え直すことにも繋がればと思います。
でも、そういった難しいことを抜きにしても、若い世代の方々が作品を純粋に楽しんでくれたなら、それだけでこんな幸せなことはないと思いますので、ぜひ観てください。
──私も2話まで観させていただいたのですが、旧作ファンとして懐かしい感覚もあるけれど、まったく新しい物語でもあって。『NIGHT HEAD』に関する知識がゼロでも楽しめるというバランスが絶妙だなと感じました。
飯田 息子が今22歳で、アニメが好きなのですが、3話まで観せたら「面白いから早く続きが観たい」と言っていたし、きっと若い人にも楽しんでもらえるんじゃないかと思っています。息子も『NIGHT HEAD』は観たことがないですからね。
──『NIGHT HEAD』を知らないのですか?
飯田 「ナイトヘッドって、ポケモンの技だよね」と言ってたので、「『NIGHT HEAD』の方が先だよ!」と教えておきました(笑)。
(丸本大輔)
番組概要
『NIGHT HEAD 2041』・フジテレビ「+Ultra」
2021年7月14日(水)放送スタート
毎週水曜24時55分〜
ほか各局でも放送
・FOD
2021年7月14日(水)より独占配信スタート
毎週水曜24時55分〜
※初回放送・配信は10分押しの25:05から予定
※放送・配信時間は変更になる場合あり
関連リンク
・公式サイト:https://nighthead2041.jp・公式Twitter:@nighthead2041
丸本大輔
フリーライター&編集者。瀬戸内海の因島出身、現在は東京在住。専門ジャンルは、アニメ、漫画などで、インタビューを中心に活動。「たまゆら」「終末のイゼッタ」「銀河英雄伝説DNT」ではオフィシャルライターを担当した。にじさんじ、ホロライブを中心にVTuber(バーチャルYouTuber)の取材実績も多数。
@maru_working