芸能界で最強の男は果たして誰なのか? 吉川晃司、氷室京介、宇梶剛士岡田准一、GACKT、藤岡弘、千葉真一……。幻想は広がるばかりだが、こうした話題のときに必ず名前が挙がるのが本宮泰風である。
「ネオVシネ四天王」として同枠で扱われることも多い中野英雄は、出演番組内で「本宮泰風の強さはレベルが違う」と証言。柔道や空手の猛者である小沢仁志も「一番強いのは本宮泰風」と主張してきた。実際にどれくらい強いのかを検証する前に、まずは本宮の格闘キャリアを本人証言のもとに振り返ってみたい(3回連載の3回目)。

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「最初はボクシングからでしたね。高校の頃は普通に日本代表としてオリンピックに出場することを目指していました。ボクシングのあとも、キックボクシングや打撃系の格闘技を何種類か続けていまして。でも、当時は格闘技でメシが食える時代でもなかったんですよ。なので俳優になってからは格闘技から離れた時代もあったかな」

確かなバックボーンを持ちつつも、「あくまでも観る側」「趣味の範疇」という姿勢を崩さなかった。しかし40歳を超える頃、転機が訪れる。前田日明が始めたTHE OUTSIDERをはじめとする地下格闘技ブームが勃発し、つき合いのあった制作会社も団体を設立。経験者である本宮に「ちょっと教えてあげてくれないか」と声がかかったのである。

「当時の地下格闘技なんて、やっているのはほぼ全員が不良ですよ。
不良の子たちをぶっ飛ばすと、大体2つの道に分かれるんです。不貞腐れてやめちゃうか、心を入れ替えて真面目に練習するか…。一生懸命にやる子は本当に死に物狂いで練習するから、実際にどんどん強くなるし成績も上がってくる。中にはアマチュアからチャンピオンを目指すような子も出てくる。そうすると、こっちも教えるのに熱が入るじゃないですか。その時点で僕は組技や寝技は習ったことがなかったんですけど、MMAのコーチとスパーリングしても感覚的に対応できちゃったんですよね。ただその動きを他人に教えるとなると、やっぱり体系的な技術が必要なので、人に教えるために、自分もグラップリングやレスリングを習い始めた感じです」

現在の本宮はMMA格闘技チーム『本宮塾』を主宰し、後進の育成にあたっている。筋金入りの強者だけあって、「芸能人最強と囁かれていますが……」と水を向けたところで「くだらない噂話ですよ、そんなの」と取り付く島もない。それでも「武井壮さんが相手なら、どう闘います?」「本宮さんから見て『この人は強い!』と感じる芸能人は?」などとしつこく質問攻めしたところ、「もう年齢的には初老に差し掛かっているんだから、勘弁してくださいよ」と苦笑いしつつ、根負けしたように持論を展開し始めた。

「まず最強を決めるとしても、ルールはどうするんだという話になりますよね。本当のバーリトゥード、つまり路上のケンカだとしたら…やっぱり打撃よりは組技ができる人が有利でしょう。というかレスリング技術を持っていて、なおかつ打撃もできる人が最強なんじゃないかな。
芸能界で喧嘩っ早い人としてよく名前が挙がる方がいるじゃないですか。正直言うと、そういう人が相手だったら僕は秒殺できると思うんですよ。だけど学生時代にしっかり練習を積んできた柔道出身者とかだと、僕なんかよりよっぽど強いと思います」

喧嘩っ早い芸能人が相手なら秒殺できる──。その言葉が本宮の口から洩れた瞬間、取材陣からは「おお……」というどよめきが自然発生した。やはり噂は限りなく真実に近かったようだ。路上では組技が有利という自説も、1993年に行われた第1回UFC大会で柔術家のホイス・グレイシーが空手家、力士、キックボクサーたちを一網打尽にしたことで裏付けされている。だがこうした技術的な分析とは別に、本宮は最強を決めるのは別の要素が関わってくると言葉を続けた。

「なんで自分が最強とか言われるのか不思議だったんですけど、たぶんそれは性格的なものが大きいと思うんです。僕、相手が誰であっても物怖じせず自分の意見をぶつけちゃうんですよ。こうしたほうがいいんじゃないかと考えたら、黙っていられない性分なので。そんな躊躇しない様子を見て、『あいつは強い』とか勝手に噂されるようになったと思うんですよ。やっぱり人間は最終的に精神的なガッツやタフさが大事。
そこはいくつになっても磨いておきたいですね」

まさに『日本統一』シリーズで本宮が演じる氷室蓮司と同じ生き様である。強さとは何か? 男らしさとはどういうことか? 任侠Vシネマを鑑賞しながら、改めて考え直すのもいいかもしれない。
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