春ドラマでもいくつか刑事ドラマが放送されている。森カンナが男性関係に奔放なキャラで事件を解決していく『多すぎる恋と殺人』(日本テレビ系)。
『踊る大捜査線』(フジテレビ系・1997年)の君塚良一が脚本を担当する『ボーダレス~広域移動捜査隊~』(テレビ朝日系)。『アンナチュラル』(2018年)新井順子プロデューサーが手がける『田鎖ブラザーズ』(ともにTBS系)に『刑事。ふりだしに戻る』(テレビ東京系)。連続ドラマのラインナップには欠かせない、老若男女に関わらず、いつの間にか観たくなってしまう。それが刑事ドラマだ。

【写真】佐藤二朗×橋本愛出演のドラマ『夫婦別姓刑事』場面カット【4点】

◆刑事バディが夫婦だったら?

ドラマオタク代表として、作品を一通りチェックした。その中で私が毎週放送を楽しみにしているのが『夫婦別姓刑事』(フジテレビ系)だ。初回スタート前は「夫婦が別姓で刑事が……? え……?」と、思考が迷路に入ってしまったが、始まって視聴するとニヤニヤが止まらない、とても愛おしいコメディだった。

このドラマの主人公は四方田夫妻。沼袋署刑事課強行犯係の係長・四方田誠(佐藤二朗)。彼は前妻を殺害された経験があり、一人娘がいる。彼は周囲には秘密にして再婚をした。
なぜめでたい再婚なのにひた隠しにしているのかといえば、妻はバディの鈴木明日香(橋本愛)だから。警察には「夫婦は同じ部署に所属してはいけない」と言われる、暗黙のルールがあるらしい。二人ともさまざまなキャリアを経て、たどり着いた刑事の職。このまま働くためにも職場には絶対にバレないように、結婚生活を続けている。このことを知っているのは沼袋署署長のみ。さて夫婦生活はバレるのか、それとも腹を括って事実を周囲に話すのか……? と、こんなあらすじだ。

◆アドリブなのかセリフなのか表裏一体の佐藤

ニヤニヤしてしまう大きな理由に、主演の佐藤二朗の存在感がある。つい最近『日本アカデミー賞』にて『爆弾』で最優秀助演男優賞を受賞したばかり。細かな部分は割愛してニュアンスのみだけど「日本映画を愛してくれるすべてのみんな、愛してるぜ、ありがとう」というスピーチに、日本が泣いたと思う。共演した山田裕貴は号泣していた。そんなスターがタイミング良く、本作に登場だ。意外にも民放ゴールデン・プライム帯の主演は本作が初めてらしい。
今までたくさんのドラマで彼の姿を観ていたので、意外だった。57歳、現代にふさわしい中年の星である。

佐藤といえばセリフとアドリブの境界線を視聴者に不明にさせてしまう、独特の演技が持ち味。『夫婦別姓刑事』でも存分に発揮されている。いや、コメディとシリアスが表裏一体になった演技で笑うために観ている。この面白さを文章にするのは、とても難しいので、とにかく一度ドラマを観て体感してほしい。

さらに。四方田夫妻のコントラストも好きだ。佐藤の素朴で温かみのある個性的なビジュアルに対して、妻はトンデモ美人の橋本愛。この見た目で妻が夫を好きだ! とときめいているのが存分に伝わってくる。関係に打算はなく、特に妻は夫の仕事ぶりをリスペクトしている気持ちが、ドラマから溢れてくるのがいい。夫の前妻の写真にも毎日手を合わせて、娘のことも気にかけている。
未婚の私が物申すのも恐縮だけど、めちゃくちゃいい夫婦。

夫婦を囲む人物もいい。四方田夫妻に気づいていそうな小寺園ちづる(斉藤由貴)、軽ノリの若手・池田絆(中村海人)、鋭いのか鈍いのか掴みどころのない軍司綾(齊藤京子)。そして退職後の天下り先の心配ばかりしている井伏幸吉(坂東彌十郎)。そうそう、刑事ドラマにはよくいる父親が警察幹部のエリート候補生・上山晋吾(矢本悠馬)もいる。

おそらくこのドラマの核は、四方田の最初の妻が殺害された事件の真相究明。いまだに事件から5年経過した今も、捜査を続ける彼の執念は実るのか。それまでを(あくまでもコメディ要素に)ほくそ笑みながら、展開を待つ。犯人探しをしたり、伏線を探して観るのも楽しいけれど、ただ物語に思考をゆだねるだけの刑事ドラマもいいのだ。

(文/コラムニスト・小林久乃)

【あわせて読む】『リボーン』『サバ缶、宇宙へ行く』『GIFT』…数字が示す“本当に観られている春ドラ”開幕トップ5
編集部おすすめ