香港貿易発展局(HKTDC)が主催するアジア最大級のファッションイベント「CENTRESTAGE(センターステージ)」が、9月2日に香港コンベンション&エキシビションセンター(HKCEC)で開幕。4日間の日程を終えて盛況のうちに閉幕した。
会期中には24の国・地域から出展者が集まり、93の国・地域から1万2,000人以上の業界バイヤーが来場。過去最多の業界バイヤー数を記録した。
アジアのファッションハブとして存在感を高めている香港。本稿では世界各地から「CENTRESTAGE」に集結した各国のブースや注目の海外ブランドを一挙に紹介していく。
サステナブル×クラフトマンシップが光るブランドの数々
オーストリアは「CENTRESTAGE」の「サーキュラー・ファッション(循環型ファッション)」ゾーンで初のナショナル・パビリオンを出展。アジア初進出のブランドも多く含む、7つのサステナブル・ファッション・ブランドがブースを構えた。
1世紀以上の歴史を持ち、伝統的な木靴作りの技を受け継ぐハンドメイドシューズブランド「woody(ウッディ)」は、木製でありながら柔軟に曲がる多重構造の木製ソールを紹介した。
幾度ものイノベーションを経て開発したというソールには軽くて丈夫、かつ柔軟性に優れた地元産のヤナギの木を使用し、靴内を常に快適な環境に保つ。熟練の職人が約35の工程を手作業で行い、人間工学に基づいた疲れにくい歩行を実現しているという。
2017年に工業デザイナーがウィーンで創業した「MY MAGPIE Vienna(マイ マグパイ ヴィエナ)」は、ウィーン近代建築の装飾、家具、テキスタイルのパターンからインスパイアされたアートジュエリーのブランド。
ゼロ・ウェイストの取り組みなどエコフレンドリーな制作アプローチをとり、留め具のないシンプルな構造、3Dプリンティング技術と伝統工芸を融合させた意匠のユニークさが光る。つけているのを忘れるほど軽量で快適な装着感で、肌なじみが良く重ね付けもしやすいそうだ。
カナダ・パビリオンは在香港・マカオのカナダ総領事館の主導でプレミアムブランドの数々を集結させた。
「Iris Setlakwe(アイリス・セトラクウェ)」は、女性のエンパワメントを核に2001年にモントリオールで設立された高級アパレルブランド。テキスタイルにこだわり、イタリア製や日本製の高品質・高級生地を積極的に採用して、ビジネスからカジュアルまで着回しがしやすいコレクションを展開する。
同じくモントリオール発の「BEDI(ベディ)」は、極寒のカナダの冬に対応する防寒性の高い高級アウターウェアとバッグのブランド。廃棄された漁網から作られた再生ナイロン、ヤードから回収した廃棄シートベルトなどを素材に用い、高い機能性を備えた冬用コートやレインコートが紹介された。
世界で存在感を示す韓国ファッションの最前線
「CENTRESTAGE」の「Featured Partner」として、今年特設パビリオンを展開したのが韓国だ。K-POP/K-ドラマ人気も追い風に、韓国ファッションの海外プロモーションに注力する韓国の政府機関「KOTRA」(大韓貿易投資振興公社)のバックアップのもと、新進気鋭の韓国ブランドが集まった。
「Et demain(エドゥメン)」は2019年設立のレディースのデザイナーズブランド。上品なフォーマル感と、ゆったりとした日常着やノームコアを美しく調和させた「フォームコア」スタイルを追求する。
一見シンプルな仕立てだが、着用者の動きに合わせて変化する可変的シルエットやシャツの袖にねじり(ツイスト)を加えるなど、エッジの効いた立体的なディテールが随所に施されている点がポイント。
変化に富んだ自由なスタイルの中にも優雅さと適度な格調を失わないデザインが支持され、日本でも一部商品がオンラインストアなどのセレクトアイテムとして取り扱われている。
モードストリートウェアブランド「HOLY NUMBER 7(ホーリーナンバーセブン)」も注目だ。
ジェンダーレスブランド「Asparagus(アスパラガス)」も海外バイヤーから大きな関心を集めた。創設者兼デザイナーはメゾン・マルジェラの「アーティザナルライン」で経験を積んだJe Lee氏。ヴィンテージと現代的要素、マスキュリンとフェミニン、機能的なディテールと彫刻的なシルエットといった境界線を行き来する、アバンギャルドでハイエンドなストリートウェアを展開する。
プラスチックやデニムの工業用端材といった廃棄素材を独創的なデザインに落とし込むフットウェアブランド「NUOSMIQ(ヌスミク)」も注目だ。「バランス メリージェーン ローファー」は、ブランドのアイコンとなっており、「MUSINSA」などで日本からも購入可能。
「デザイナーを世界へ送り出す」――AFCが語った豪ブランドの対アジア戦略
今年はオーストラリアのアパレル業界団体「オーストラリア・ファッション・カウンシル(Australian Fashion Council/AFC)」も参加規模を大幅に拡大。サステナブルファッションに注力するブランドの数々が紹介された。
アップサイクル・ファッションブランド「Briar Will(ブライヤー・ウィル)」は、デザインに視覚的トリックの要素を取り入れている点が最大の特徴。古着のジーンズやグラフィックTシャツなどの質感をスキャンし、最先端のデジタル加工でスポーツウェアなどの高機能素材へ落とし込むことで、エッジの効いた唯一無二のコラージュ柄を実現する。日本では渋谷のセレクトショップなどで取り扱いがあるようだ。
オーストラリア・ファッション・ウィーク常連で、20年以上のキャリアを持つ実力派ファッションデザイナーのゲーリー・ビゲニ氏も、自身の名を冠したデザイナーズブランドを紹介した。
流麗なドレープや美しいシルエット、大胆な色使いで知られる同氏。環境に配慮した受注生産を中心とするスローファッション体制を導入し、長く愛用できるカスタムメイドのファインアートコレクションを展開する。
ニューヨークでキャリアを積んだデザイナーによって、シドニーで設立された「WEST 14TH(ウエスト・フォーティーンス)」は、タイムレスなレザーウェアを得意とするウィメンズブランド。
NYの都会的な雰囲気とオーストラリアらしい優雅でリラックス感溢れるスタイルを掛け合わせた、トレンドに左右されないデザインや柔らかく着心地の良い素材にブランドの信念があるようだ。本革はレザーワーキンググループ(LWG)認定のタンナーから調達している。
AFCエグゼクティブ・チェアのマリアンヌ・ペルコビッチ氏は、「『WEST 14TH』は、すでに韓国や日本のバイヤーと具体的なパートナーシップを確立している」と語る。
同氏はステージプログラムに登壇した際、「関税導入以前、オーストラリアのデザイナーにとっては米国が主戦場で、特にリゾートウェアとの相性が良い多くのブランドが進出を目指していました。しかし、現在は頻繁に変動する上乗せ関税でコストが上昇し、他市場への展開を真剣に検討せざるを得なくなった」と明言。
豪政府の新市場開拓支援施策「Accessing New Markets Initiative(ANMI)」の支援を受け、「バイヤーを豪州に招く」だけではなく「デザイナーを世界へ送り出す」方向に重心を移したと説明した。
今年は昨年から規模を拡大し、10ブランドを帯同。
同氏によると、アジア(香港)と欧州(パリ)の2市場に的を絞り、昨年の出展を機に「Monika Branagan」が日本の百貨店でポップアップを実施。今年も韓国や香港の大手百貨店との商談が進行中だという。
同国の綿や羊毛といった天然繊維の質感と肩肘の張らないデザインは、亜熱帯気候の香港をはじめアジア市場と親和性が高く、豪ブランドは既存の品揃えを補完するエッジとしてバイヤーのニーズが大きいとも語っていた。
伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら
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