レビュー

「測定できないものは管理できない」――経営の世界で繰り返されてきたこの“格言”は、地域社会にもそのまま当てはまる。少子高齢化が進む地方では、雇用の喪失や若者の流出といった目に見える課題の裏で、お金の流れの偏りやコミュニティのつながりの希薄化といった「見えにくい問題」が静かに進行している。

問題が見えなければ、危機感は共有されず、対策は後手に回る。著者はこうした構造を打破するための武器として「見える化」を位置づける。
本書が扱う「見える化」の射程は驚くほど広い。製品の一生涯にわたる環境負荷を定量化するLCA(ライフサイクルアセスメント)から、地域経済の血流ともいえるお金の循環を明らかにする産業連関表、そして社会的なプロジェクトの成果を金銭換算するSROI(社会的投資収益率)まで、環境・経済・社会の三領域を横断している。専門的な手法の解説でありながら、著者自身が各地の現場で実践してきた経験が随所ににじみ出ており、理論が地に足のついた形で語られている点が本書の大きな魅力だ。
要約者として特に印象的だったのは、著者が「見える化」を万能薬としてではなく、あくまで対話と行動の起点として提示している点である。データで現実を共有することで、立場の異なる関係者が同じ土俵に立ち、議論を前に進められる。その姿勢は、エビデンスに基づく意思決定が求められるいまの時代に、多くのビジネスパーソンや自治体関係者に対して実践的な示唆を与えるだろう。

本書の要点

・LCA(ライフサイクルアセスメント)を活用すれば、製品やサービスの環境負荷をライフサイクル全体にわたって定量的に把握でき、企業の意思決定に役立てられる。
・産業連関表は、地域経済のお金の流れや産業間のつながりを可視化し、地域の強みや外部依存の構造を客観的に浮かび上がらせるツールである。
・TOC(変化の理論)とSROI(社会的投資収益率)という2つの手法を用いることで、社会的プロジェクトの目標設計から成果の金銭換算までを体系的に行うことが可能になる。



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