自民党内の事前審査が大紛糾している「再審制度の見直し」。刑事訴訟法改正に向けた政府案をめぐり、多くの議員が検察の不服申し立て(抗告)の全面禁止を求めるなど異論が噴出しているためだ。

「抗告が審理の長期化を招いている」との批判がある。


 自民党の法務部会などの合同会議で了承を得られる見通しがたたないため会議が延期され、5月の連休明けの7日にも開かれる方向。法務省は修正案として、検察抗告を「原則禁止」とする案を出す見通しだ。しかし、あくまで「原則」。例外的に抗告できる余地を残しているため、了承を得られるかは依然、不透明だ。


 そんな中、27日の参院予算委員会で泉房穂議員(立憲民主党会派)がこの件について高市首相に質問。「首相が政治決断すべきテーマだ」「罪なき者が犯人にされ、何十年も放置されていいのか」などと迫った。しかし、高市首相は逃げの一手。「私一人の政治決断で決めていいことではない」「与党内審査を丁寧にしていただき、修正すべきところがあったら提案いただく」「私一人が決断してみんな従ってくださいと、自民党はそういう政党ではない」などと繰り返したのだった。


 だが、「政府のトップである首相が政治決断すれば変えられる」と言うのはジャーナリストの鈴木哲夫氏だ。


「法改正とは全く次元は違うけれど、司法に絡む人間の尊厳という観点では、ハンセン病関連訴訟を終わらせた小泉純一郎首相や安倍晋三首相の政治決断がありました」


 小泉氏は2001年にハンセン病の元患者らが国を相手に起こした訴訟で控訴を見送り、患者らに謝罪した。安倍氏も19年、ハンセン病患者の家族が起こした訴訟で控訴を断念。

「ご家族のご苦労をこれ以上長引かせてはいけない」とおわびした。政治決断では、石破茂前首相も、森友問題で財務省の決裁文書をめぐり上告を断念し、開示を進めた。


 裁判と法案という違いはあるが、政治による人権救済は同じことだろう。


「この法案は政府提案です。つまりトップは高市首相。まさに国論を二分する政策をどんどん実現させていくと言っているのだから、これも決断したらいいんじゃないですか」(鈴木哲夫氏)


 再審で冤罪が晴れた袴田巌さんは、検察の抗告により再審決定から開始確定まで9年かかった。これを人権侵害と言わず、何と言う。姉の袴田ひで子さんは23日の日本記者クラブでの会見で「制度に不備があるなら正してもらいたい」と訴えていた。


  ◇  ◇  ◇


 袴田巌さんの姉・姉の袴田ひで子さんのあまりにも長かった国家権力との闘い。つらく苦しかった過去と、自由を取り戻した今の気持ちは、関連記事【もっと読む】で詳しく報じている。


編集部おすすめ