黒くてギラついた笑顔がアメコミのダークヒーロー「ヴェノム」にそっくりと話題のイルカがいる。
英語でニセシャチ(False Killer Whale)と呼ばれるオキゴンドウだ。
体長6mにもなる迫力満点の巨体と鋭い歯を持ちながら、性格は驚くほど人懐っこく、ダイバーに獲物を差し出すこともあるという。見た目と中身がこれほどかけ離れた海の動物も珍しい。
ヴェノムそっくりのイルカ「オキゴンドウ」
海洋に生息する動物種のうち、約91%はまだ人類に発見・分類されていないと、アメリカ海洋大気庁(NOAA)[https://oceanservice.noaa.gov/facts/ocean-species.html]の研究は指摘している。
広大な海の中に何が潜んでいるかは、実際に遭遇してみるまでわからない。
そんな海の生き物の中でも、ひときわ個性的な存在として注目されているのがオキゴンドウだ。
口を大きく開けた黒光りする顔が、アメリカンコミックのダークヒーロー「ヴェノム」にそっくりだと、SNSや海外メディアで話題になっている。
全身がほぼ黒か非常に濃い灰色で、腹側の胸のあたりだけ薄い灰色の模様がある。
体長は最大6m、体重は最大1,500kgにもなる大型の動物だ。
額には「メロン」と呼ばれる丸い脂肪の塊があり、これが音波を発して獲物の位置を探るエコーロケーション(反響定位)に使われる。
44本の鋭い歯を持ち、水面から頭を出して口を開ける行動も観察されており、その姿がまさにヴェノムを思わせる。
英語でニセシャチと呼ばれる理由
オキゴンドウの英語名は「False Killer Whale」、直訳すると「ニセシャチ」だ。
分類上はマイルカ科に属するイルカの一種だが、体型や行動がシャチに似ていることからこの名がついた。
名前の由来は外見だけではない。
シャチと同様に、マグロなどの大型魚やイルカといった海洋哺乳類まで捕食することがあり、その貪食さもシャチを彷彿とさせる。
延縄(はえなわ)漁でかかったマグロの肉だけを巧みに食いちぎってしまう「シャチ食い」と呼ばれる現象も、オキゴンドウの仕業であることが多い。
体型が細長いことから「キュウリゴンドウ」という別名もある。
なお、外見が似ているコビレゴンドウと混同されることがあるが、オキゴンドウは体が大きく、途中で曲がった独特の胸びれを持つため、慣れれば見分けることができる。
見た目とは真逆の穏やかな性格
迫力ある外見とは対照的に、オキゴンドウは非常に社交的で人懐っこい動物だ。
通常は10~50頭ほどの群れで行動し、複数の群れが合流して数百頭規模のスーパーポッドを形成することもある。
バンドウイルカやハナゴンドウなど、ほかのイルカ類と混合の群れを作ることも珍しくない。
群れの中では食べた獲物を仲間と分かち合う行動が確認されており、ダイバーに獲物を差し出すこともあるとも言われている。
水面から全身を飛び出させるブリーチングも得意で、人間の乗るボートに近寄ってくることも多い。
水族館での飼育実績もあり、日本では沖縄美ら海水族館やアクアパーク品川などで見ることができる。
謎多いオキゴンドウの生態
オキゴンドウは世界中の熱帯から温帯の海域に広く分布しているが、外洋を好むため目撃例が少なく、生態の詳細はまだ十分に解明されていない。
国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでも2001年以降「情報不足」に分類されており、個体数の正確な把握すら難しい状況だ。
NOAAはハワイ周辺に生息する約150頭の個体群を絶滅危惧種に指定しており、混獲や海洋汚染による個体数の減少が懸念されている。
寿命は約60年と長く、出産間隔も平均約7年と非常に長い。
謎が多い海の動物だが、だからこそオキゴンドウは研究者たちを今もひきつけてやまない存在だ。
References: Oceanservice.noaa.gov[https://oceanservice.noaa.gov/facts/ocean-species.html]











