“ゾンビたばこ”入り口の一つに“ニコパフ”か 実態を取材

 最近よく耳にする危険ドラッグ、“ゾンビたばこ”。今月、広島東洋カープに所属していた元プロ野球選手の羽月隆太郎被告に有罪判決が言い渡されるなど、摘発が相次いでいる。

 静かに日本社会に広がっている危険ドラッグに手を染める入り口の一つと指摘されているのが、電子たばこ。

中でも大阪・ミナミの若者の間では“ニコパフ”が流行しているという。

 ニコパフとはどのようなものなのか。また、ニコパフが“ゾンビたばこ”のまん延に繋がっている実態とは。取材班が迫った。

〔全2回の特集・前編〕

「ミナミでは2人に1人吸っているレベル」若者たちの間で広がる“ニコパフ”

「ミナミでは2人に1人吸っているレベル」大阪の若者たちに流行...の画像はこちら >>

 大阪・ミナミ。夜の街を行き交う若者たちの手に“見慣れない器具”が。

(20代)
「まじニコパフじゃね?やっぱりニコパフが一番はやっている
「ニコチンが入っている水たばこなんやろうな、くらいの感覚」
「ミナミとかやったらほんまに、2人に1人ぐらいは吸っているレベルです」

 若者たちが吸っていたのは、“ニコパフ”と呼ばれる電子たばこの一種。「ニコチン」の「ニコ」と「吸う」を意味する「パフ」をかけ合わせた造語で、ニコチン成分が含まれる液体を加熱し気化させた蒸気を吸う。

喫煙年齢の規制の対象外…中には10代の使用者も

「ミナミでは2人に1人吸っているレベル」大阪の若者たちに流行する“ニコパフ” 国内での販売・譲渡は禁止だが…フリマアプリで隠語使い販売横行か より危険な“ゾンビたばこ”の入り口に?【連載・ゾンビたばこ(1)】
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 器具のデザイン性の高さや多様な香りが魅力だという。

(20代)
「見た目もかわいいし。ファッション性が高いですね」
「味も濃いので。これやったら例えば“ストロベリーアイスクリーム”なんですけど、ほんまにアイスの味がするんですよ」

 ニコパフは20歳未満の喫煙を禁じる法律の対象にはならないものの、若者たちのなかには10代だという人も。

(10代)
「違法やけど、誰かから買ったりして、パフパフ吸っている感じですね」

ニコチン入りニコパフは「未承認の医薬品」扱い 国内での販売・譲渡は禁止

「ミナミでは2人に1人吸っているレベル」大阪の若者たちに流行する“ニコパフ” 国内での販売・譲渡は禁止だが…フリマアプリで隠語使い販売横行か より危険な“ゾンビたばこ”の入り口に?【連載・ゾンビたばこ(1)】
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 そもそも、このニコパフ、日本国内での販売・譲渡は認められていない

 たばこの葉の入ったスティックを加熱して吸うIQOSなどの「加熱式たばこ」とは異なり、ニコパフはニコチン成分が入った「液体」を加熱して吸う。

 ニコチン成分入りの液体は日本の法律では「医薬品」に分類されるが、厚生労働省はこれを承認していない。

 したがってニコチン入りのニコパフは「未承認の医薬品」という扱いになっているのだ。

「nありですか?」フリマアプリでは隠語でのやり取りが

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 しかし、フリマアプリで記者が検索してみるとたくさんの商品が。

 ニコチンは入っていないと謳っているものが大半を占める一方で、ニコチン入りかどうかを明記していない商品も数多くあった。

 出品者に商品の詳細を尋ねることができるコメント欄には、こんな文言が。

「ミナミでは2人に1人吸っているレベル」大阪の若者たちに流行する“ニコパフ” 国内での販売・譲渡は禁止だが…フリマアプリで隠語使い販売横行か より危険な“ゾンビたばこ”の入り口に?【連載・ゾンビたばこ(1)】
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 「nありですか?」

 ローマ字の「N」は「ニコチン」を指す隠語で、昆虫の「蟻」の絵文字は「有り」の意味で使われているとみられる。

「ニコチン」明記ない商品 購入し分析してみると…

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 取材班はニコチン入りかどうかの明記がない、3000円台から5000円台の商品を複数購入し、専門機関で成分の分析を行った。

 すると…

(日本分析化学専門学校 石川裕一郎さん)
明らかにこれはニコチンが入っているのではないかということが言えます」

 3つの商品のうち1つで、ニコチン成分が入っている可能性がきわめて高いことが判明した。

メルカリ「順次調査の上で削除」

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 この商品が出品されていたフリマアプリ・メルカリは取材に対し、「順次調査の上で削除を行っている」としたうえで、このように回答しました。

 「同様の出品が行われないよう、公的機関との連携も含め、検知・監視の強化およびお客さまへの啓発にも引き続き取り組んでまいります」

“ニコパフがより危険な薬物への入り口に”専門家が懸念

「ミナミでは2人に1人吸っているレベル」大阪の若者たちに流行する“ニコパフ” 国内での販売・譲渡は禁止だが…フリマアプリで隠語使い販売横行か より危険な“ゾンビたばこ”の入り口に?【連載・ゾンビたばこ(1)】
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 たばこなどによる健康リスクを研究する専門家は、ニコパフがより危険な薬物への導入につながると指摘する。

(鳥取大学・医学部 桑原祐樹助教)
「ニコパフを使うことで、リキッドをかえて、大麻とかエトミデートとか、より危険な違法性のある薬物を使用する若者が増えてしまうことが心配されます」

“ゾンビたばこ”の名で知られる「エトミデート」強い多幸感が得られる一方…

「ミナミでは2人に1人吸っているレベル」大阪の若者たちに流行する“ニコパフ” 国内での販売・譲渡は禁止だが…フリマアプリで隠語使い販売横行か より危険な“ゾンビたばこ”の入り口に?【連載・ゾンビたばこ(1)】
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 専門家が警鐘を鳴らしたのは、去年5月に規制の対象になった指定薬物「エトミデート」。使用者が見せる異様な様子から、“ゾンビたばこ”の名で知られている。

 笑気麻酔とも呼ばれ、短時間で強い多幸感が得られる一方、幻覚作用もあり数分から数十分で激しいめまいや体の硬直をもたらす。

 ニコパフと同様に電子たばこの器具を使い液体を加熱して吸引するケースが多いという。

プロ野球選手が逮捕・起訴される事件も

 このゾンビたばこをめぐっては、広島東洋カープに所属していた現役のプロ野球選手が逮捕・起訴される事件も。

「ミナミでは2人に1人吸っているレベル」大阪の若者たちに流行する“ニコパフ” 国内での販売・譲渡は禁止だが…フリマアプリで隠語使い販売横行か より危険な“ゾンビたばこ”の入り口に?【連載・ゾンビたばこ(1)】
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 5月15日、広島地裁で行われた裁判で有罪判決となったが…。

(羽月隆太郎元選手)「周囲にも同じように吸っているカープの選手がいたので、大丈夫だと思った」

 選手が所属していた広島カープは、再調査に乗り出すという。

特に逮捕者が多いのは沖縄 「沖縄手押し」SNS上で販売を持ちかけも

 広がりをうかがわせる、ゾンビたばこ。中でも、とりわけ逮捕者が多いとされるのが沖縄県だ。

 SNS上では…

「ミナミでは2人に1人吸っているレベル」大阪の若者たちに流行する“ニコパフ” 国内での販売・譲渡は禁止だが…フリマアプリで隠語使い販売横行か より危険な“ゾンビたばこ”の入り口に?【連載・ゾンビたばこ(1)】
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 密売人とみられるアカウントが、ゾンビの絵文字とともに「沖縄手押し」という文言で販売を持ちかけている様子が散見された。

 ちなみに「手押し」とは手渡しでの販売を意味する。

 取材班は実態を探るため沖縄へ向かった。

【後編に続く】

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