「高配当株」&「優待株」で長期的かつ安定的に資産形成するため...の画像はこちら >>


株式投資と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、「株価が安いときに買って、高いときに売り、キャピタルゲイン(売買差益)を得る」という手法ではないだろうか。

しかし、株式はキャピタルゲインだけではなく、インカムゲイン(保有中に得られる収益)を受け取ることもできる。

企業が利益の一部を株主に還元する「配当金」と呼ばれるもので、保有株数に応じて得られる。

「高配当株(株価に対して配当金の割合が高い株式)」と「優待株(株主優待が実施されている株式)」を中心とした長期投資を実践し、40年以上の時間をかけて資産11億円を築いたのが、現在は専業投資家のかんちさん。かつては働きながら株式投資を行っていたかんちさんに、これまでの経験と高配当株の選び方について聞いた。

不景気でも入金し続けたことで得られた「成長」

かんちさんが株式投資を始めたのは1980年代。20歳を過ぎた頃で、消防士として働きながら投資をスタートしたが、不安やためらいはあまりなかったという。

「祖母と父が株式投資をしていて、早いうちから『投資とは何か』ということを叩き込まれていたんです。だから、株式に対するアレルギーや不安感のようなものはなかったですね。祖母と父は投資で大成功していたわけではなかったようですが、配当金が入ってくると聞いていたので、不労所得になるならいいかなと思って始めました」(かんちさん・以下同)

祖母から「投資している会社がつぶれたら、株式は紙くずになる」という話も聞き、できるだけたくさんの銘柄を持ってリスクを分散させようと考えていたそう。ただ、当初は分散させるほどの資金がなかったため、まずは鉄鋼メーカー1社の株式から始めた。

「当時、父に購入する株式について相談した際に、『お前の安月給で買えるまともな株式は鉄鋼株ぐらいのもんだ』と言われたのがきっかけです。買ってからしばらくしてバブル景気になり、株価が10倍ぐらいになったんですよ。ただ、素人なんでそこまで待てず、株価が購入した時点の倍になったら一部を手放して利益を確定し、3倍になったらまた一部を手放すということを繰り返して、5倍ぐらいになったときには既にほとんど売却していました(苦笑)」

初めての株式投資でキャピタルゲインを得るという経験が自信になるかと思いきや、その後すぐにバブルが崩壊する。

「バブル崩壊してからの5年ぐらいは、株価がずっと下がったままでしたね。

バブルで3000万円くらいまで増えた資産が、半年ほどで1000万円近くまで減ったことを覚えています。ただ、それでも毎年100万円入金して、株式を購入し続けました。すぐ回復するだろうと思ったからです。実際は、入金した分だけ資産が減っていく状況が続いたんですけどね」

我慢を強いられる時期ではあったが、入金を継続したことで、株数と配当は増えていった。

「入金し続けた甲斐あって、株価が回復し始めると、すごい勢いで資産が増えたんですよ。株式投資を始めた頃に読んだ投資関連の書籍に、『長期的に保有すると、平均リターンは7%になる』『下がるときもあるが、最終的には右肩上がりになる』といったことが書かれていたんです。それを信じて継続してよかったなって思いましたね」

株価が下がっているときに買うと、安い株式を多く仕入れられるため、上がってきたときに大きな成長を見せるという経験を積んだのだ。

「バブル崩壊後の経験があったので、2008年のリーマン・ショックも乗り越えられました。当時、資産が3億円を超えたぐらいだったんですが、リーマン・ショックで1億円ぐらいまで減ったんです。ただ、株価は下がったものの配当はそのままという会社が多く、配当利回りが20%を超える銘柄もあったので、仮に株価が回復しなくても5年保有していれば元が取れると考えて、入金し続けました。その結果、株価の回復とともに資産を増やすことができたんです」

「株式」を長く保有することの意義

消防士として働いている間は、毎年100万円の入金を継続し、高配当株や優待株を購入。49歳で消防士を早期退職した2011年時点では資産が2億円を超え、配当金が年間800万円ほど入ってくる状態となっていた。退職してからは入金していないが、保有している銘柄が増配しているため、配当金が年間3000万円入ってくるようになり、資産も11億円まで増えたそう。



退職後、入金していないにもかかわらず配当金で資産が大きく増えているのは、現役の間に入金を欠かさず、保有し続けたからだという。

「私は配当金や株主優待を得ることを前提に株式投資をしているので、入金・購入を継続することはあっても、基本的に売却してキャピタルゲインを得ることは考えていません。配当金や優待を目的にしていると、入ってくる配当金と優待さえ維持されていれば、株価は上がらなくてもいいんですよね。保有し続ければ配当金や優待は継続的に入ってきますし、買い増せば増えます。『入金して購入する』以外にすることはないんです」

キャピタルゲインを狙って売却するのも投資手法のひとつではあるが、購入した株式を保有し続けることのほうがメリットは大きい。

「株式を保有して市場に残ることで、時間を味方に付けて資産を増やすことができます。なおかつ、複利が利いて、売買しなくても自ずと資産が育っていきます。逆に売却してしまうと、その都度税金が差し引かれるので複利の効果を得にくいですし、いまは投資人口が増えているので、一度手放したものを買い戻すのは困難でしょう」

購入した株式を保有し続けるという手法は、特に優待株だと実践しやすいとのこと。

「優待株は保有している限り、基本的にずっと優待が届きます。その優待に魅力を感じていれば、仮に株価が下がったとしても売らずに耐えられますよね。私の周りで株価の上昇を狙って新興株に投資していた人は、リーマン・ショックの際に売却して退場した方が多かった一方、優待株を主軸にしていた人は売却せず、いまも株式投資を継続している方が多い印象です。キャピタルゲインは、株式投資における“おまけ”くらいに考えておいたほうがいいのかなと思います」

ただし、ある程度資産が増えてくると、優待株は限界が来るという。



「優待って消費に限界があるんですよ(苦笑)。例えば、優待としてお米が届く銘柄を購入したとして、家族で年間60キロしか食べないのに、100キロも200キロも届いても困るじゃないですか。外食で使える食券や割引券も、外食の回数以上に持っていても無駄になってしまうので、高配当株に切り替えていったという背景もあります」

「高配当株」を見つける5つのステップ

かんちさんが株式投資の主軸としている高配当株。その見つけ方となるステップを、著書『ほったらかしで年間2000万円入ってくる 超★高配当株 投資入門 「自分年金」を増やす最強の5ステップ』(ダイヤモンド社)から紹介してもらった。

「高配当株」&「優待株」で長期的かつ安定的に資産形成するために知っておきたいこと
かんち著『ほったらかしで年間2000万円入ってくる 超★高配当株 投資入門』ダイヤモンド社刊

(1)「配当利回り3.5%以上」の銘柄を抽出
(2)「増収増益・増配」の銘柄だけを絞り込む
(3)「PER×PBR=15倍超」の割高銘柄を除外する
(4)一時的な要因で株価が上がった銘柄を除外する
(5)厳選した銘柄を株価が下がったところで買う

「5ステップのなかでも特に重視しているのは、最初の(1)です。『4%以上』が理想ではあるのですが、『3.5%』の銘柄のなかにはすぐに増配して『4%』を超えるものも潜んでいるので、スクリーニングは『3.5%以上』でかけています。めぼしい銘柄がないと思ったときは『3%以上』まで下げて探すこともあります」

このステップを定期的に行い、購入する銘柄やタイミングを決めているそう。

「まず配当利回りが高い順で見ていき、もともと気になっていた銘柄や保有している銘柄の配当利回りが高いところに来ていたら、株価が下がっていることの裏付けといえるので、買いどきかなと感じます。知らない銘柄の配当利回りが4.5%を超えていたら、企業情報などを調べてみるという動きになっていきます」

「高配当株」「優待株」を売却するタイミング

「高配当株、優待株の購入・保有を継続する」というかんちさんの投資手法について聞いてきたが、まれに売却することもあるという。

「優待株に関しては、購入する時点で2種類に分けています。『優待目的で購入し、優待がなくなったら売る銘柄』と『たまたま優待が付いてきた成長中の銘柄』の2つで、優待がなくなったときの対応が変わります。前者はその時点で損していようが儲けていようが、優待がなくなった翌日には売ります。後者は成長が続いていれば、優待がなくなっても保有し続けます」

高配当株に関しても、「売上や利益が上がらないなかでギリギリ配当を出している銘柄が減配したら売る」という基準を設けているそう。

このような状況になると、立ち直ることが少ないからとのこと。

「重要なのは、『株式は何が起こるかわからないもの』という前提で始めること。『仮にこういう状況になったら、こうしよう』という方針を決めておくと、アクシデントがあったとしても動じずに対処できます。投資は、感情に任せてやると損するようにできているものです。感情は無視して、決めたルールのなかで機械的に行うことが大切だと思います」

株式投資歴40年超のかんちさんの投資術を聞いてきた。後編では投資初心者がしがちな失敗と、最初の一歩におすすめの投資について伺う。

(取材・文/有竹亮介)

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