■「割り切れなさ」に惹かれた脚本の魅力
――脚本を読んだ時の率直な感想を教えてください。
正義と悪といった単純な構図ではなく、「こいつが悪い」「こいつがいい」と割り切れる物語ではない点に惹かれました。僕自身、そうした作品が好きです。怒りのぶつけどころが分からない、割り切れない感情が丁寧に描かれており、とても面白いと感じました。この作品に関われることを光栄に思います。
――茂木についてどのような人物だと思われましたか?
とてもピュアな人だと思っています。どこか大人になり切れない、「ピーターパン」のような一面があって、いろいろな経験をしてきたんだろうなと感じさせる部分もある。少し世間との距離感が独特で、周りと同じペースで歩くのが得意なタイプではないのかもしれないな、と感じています。
その中で、真と稔の兄弟、特に稔と一緒にいる時間は、茂木にとって心がほっとするような、とても大事な時間なんじゃないかなと。2人は友達でありながら、家族のような距離感もある特別な存在だと思います。
また、町中華「もっちゃん」という店も、茂木にとっては自然体でいられる居場所であり、今の関係性を含めて大切にしている場所だと感じます。
着ている白衣があまりきれいではないのですが、それを見た時にこのキャラクターを象徴しているなと感じました。もともとは真っ白だったはずの白衣が、油で少しずつ汚れていく。その変化が、これまでの時間や積み重ねを表しているようにも感じられました。
■微調整を重ねて見えてきた茂木幸輝というキャラクター
――役の設定について、監督やプロデューサーとのやりとりや、撮影の中で生まれたことがあれば教えてください。
プロット(創作物における物語の「設計図」や「骨組み」)やキャラクター表が細かく用意されていたので、直接説明を受けるというよりも、それらを基に自然と共通認識ができているのかなと思います。
その上で、撮影に入ってからは、茂木がどの程度社会になじめていないのか、その加減については少しずつ微調整していきました。最初はそれぞれの捉え方が違う部分もあったので、話しながらすり合わせていったかたちです。
若い頃から60代くらいまでを演じる必要があったので、その年齢差をどう表現するかを衣装合わせの段階で監督たちと話しました。若い頃は短めのカツラを使うのですが、60代の見せ方にはかなり悩んで、最終的には銀縁の眼鏡をかけることになりました。それと、監督から「猫背な感じで」というリクエストもあったので、そこは意識しています。
■画になる2人が生み出す兄弟の空気感
――岡田さんと染谷さんの印象を教えてください。
自分の出番ではない時にモニターでお二人のお芝居を見せてもらったんですが、本当に画になるんですよね。
撮影現場でも自然と兄弟感があって。岡田さんはすごく気遣いができる方で、真摯に接してくださいますし、いろいろ話しかけてくださるんです。染谷さんは、どこか末っ子っぽい自由さがあって、飄々(ひょうひょう)としていながらも愛らしさがある。すごくバランスのいいお二人だなと思います。
――実際に対峙してみて、お芝居の中で感じる魅力は?
実際に向き合っていても、本当に兄弟のように見えますし、岡田さんの「しっかりしなきゃ」というお兄ちゃんとしての意識がお芝居にも自然と現れていて、そこがすごく面白いんです。一緒にシーンを演じるたびにワクワクします。
先日、稔とのシーンがあったのですが、とにかく楽しくて。演じている側にしか分からない感覚かもしれませんが、「一緒にやっていて楽しい」という空気は、きっとカメラ越しにも伝わるはずです。
「(俳優を)やっていてよかった」と感じられるくらい、素敵な方々と共演できています。現場の雰囲気もとてもいいので、撮影に行くのが楽しみです。
■作り込まれた空間がもたらす説得力
――撮影現場の雰囲気や、作品の世界観づくりで印象に残っていることを教えてください。
撮影監督の宗(賢次郎)さんがムードメーカーで、撮影現場を盛り上げてくださるんです。手応えを感じられるような、すごくいい空気が流れています。
この作品では、美術の力も大きいと感じています。実在する中華料理屋さんを使わせていただいているのですが、装飾などを美術部の方々が整えてくださっていて、初めて入った時は驚きました。そこにいるだけで自然と世界観に入れるというか、「もっちゃん」という店が本当に存在している感覚があるんです。
ポスターなども30年前と現在とでは微妙に違っていて、そうした積み重ねによって、人物の背景や生活が自然と見えてくるんです。そういう形で作り込んでいただいているので、無理に何かを足さなくても、自然と役に入っていける。俳優としてすごく助けられていますし、感謝しています。
■熱意が伝わる座組の空気
――新井プロデューサーとは『Nのために』(2014年)ぶりかと思いますが、この座組の特徴はありますか?
新井さんが朝から晩まで撮影現場にいらっしゃることかもしれません。それはなかなかできることではないと思いますし、それだけ作品への思いが強いんだと感じます。面白いものを作りたいという熱意がすごく伝わってくるので、自然と「自分も頑張ろう」と思える。
『Nのために』から約12年経って、また声をかけていただけたのは純粋にうれしかったですし、ご一緒できることを光栄に思っています。
――最後に視聴者の方にメッセージをお願いします。
もちろん、真と稔がどうやって事件を解決していくのかという面白さもありますが、それぞれのキャラクターの背景を知っていくとより深く楽しめると思います。茂木と兄弟のシーンのちょっと肩の力が抜けるような空気感や関係性も含めて、楽しんでいただけたらうれしいです。

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