※本稿は、石黒成治『糖質リスク 自覚なき「食後高血糖」が万病を招く』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■朝食を菓子パン&カフェオレにすると…
朝、コンビニで甘い菓子パンとカフェオレで手軽に朝食をすませたとします。すると体が少し熱く感じ、体調が悪いわけではないのに、昨日の疲れからか午前中のパフォーマンスが上がらない……そんな経験はありませんか? しかもそのとき、なんとなくお腹の調子も優れない気がしたことはないでしょうか。
これは腸と血糖の間に密接なつながりがあるサインであり、砂糖たっぷりの朝食による食後血糖スパイクと、それに伴う腸の炎症が起こっていることを意味します。体の中で「腸」と「血糖」はまるで車の両輪のような関係です。腸の調子を整えるほど、食後の血糖値の乱高下(血糖スパイク)は穏やかになります。逆に血糖値が安定しているほど腸への負担も軽く、快調なお腹を保ちやすくなります。つまり腸と血糖はお互いに支え合いながら健康を維持する二輪駆動の関係なのです。
腸は単に食べ物を消化するだけでなく、食事に応じてインスリンの分泌を促すホルモン(インクレチン)を出すなど、血糖調節に積極的に関わっています。腸内環境が良好だと栄養の吸収も緩やかになり、食後に血糖値が急上昇しにくくなります。
■腸が慢性炎症になり、血糖値上昇
(腸本来のバリア機能が失われ、本来通してはいけない物質が腸をすり抜けてしまう)リーキーガットの状態では、細菌の成分(例えばLPSなどの毒素)や未消化の食事成分が血液中に入ると、免疫がそれを異物として攻撃し、炎症が起こります。
こうした腸由来の慢性炎症はインスリンの働きを妨げ、血糖値をさらに上昇させてしまうのです(Biomedicines. 2024 38927482)。実際、肥満や2型糖尿病では腸から毒素が漏れて軽い炎症が続いていることは確認されています(Am J Pathol. 2013 23201091)。
腸内環境を整えると、炎症が治まりインスリンの効きもよくなることが期待できます。例えば腸内細菌が作り出す酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸は、腸のバリアを強化して炎症を抑え、肝臓や筋肉でのインスリン抵抗性を改善する作用があります(Rocz Panstw Zakl Hig. 2022 35322958)。さらに、腸内細菌の多様性を高めるような食事介入によって腸のバリア機能とインスリン感受性が向上し、空腹時血糖やHbA1c(長期の血糖指標)が改善した例も報告されています(Eur J Clin Nutr. 2015 25369829)。
■緊張するとお腹がユルくなるワケ
腸と血糖の関係は脳や自律神経を介してもリアルタイムに影響し合っています。緊張したり強いストレスがあったりすると、なんとなくお腹の調子が悪くなる経験は誰にでもあると思います。
これはストレスにより自律神経が乱されて、腸の動きが変化するためですが、同時に増えたストレスホルモン(コルチゾールなど)も腸に作用します。コルチゾールは腸のタイトジャンクションを緩め、腸内細菌のバランスも変えてしまうことがわかっています(Front Microbiol. 2020 32010111)。このストレスホルモンもまたリーキーガットを誘導し、腸内の炎症や不調が起こりやすい環境にしてしまいます。
さらにストレス反応で分泌されるアドレナリンやコルチゾールは、血糖値も一時的に上昇させます。
このように、血糖コントロールには腸活が不可欠です。血糖値だけに注目して糖質制限するだけでは、血糖をコントロールするための体作りとしては不十分です。腸を健康に保つことが糖尿病予防や血糖管理の重要な鍵となります。腸と血糖という2つの車輪をセットで回すことで相乗効果が生まれ、健康的なサイクルを長く維持できるのです。
■理想的な腸内環境とは?
私たちの腸内には数百~数千種類もの細菌が棲みつき、腸内細菌叢と呼ばれます。
それらが作る「腸内環境」が良好であることは全身の健康に深く関わっています。では「良い腸内環境」とは具体的にどのような状態でしょうか? それは大きく分けて、腸内細菌叢の多様性(様々な菌がバランスよく共存)、安定性(乱れてもすぐ元に戻る回復力)、そして低炎症性(腸が刺激や毒素に対して過剰な炎症を起こしにくいこと)の3つの観点に注目する必要があります。
■回復力のためには多様性が大切
腸内の多様性が高いとは、多種多様な細菌が腸内で共存している状態です。
この不調から立ち直る力を、「腸のレジリエンス(回復力)」と呼びます(Trends Ecol Evol. 2018 29477443)。実際、腸内細菌の多様性や菌の豊富さ、そして特に酪酸産生菌の多さはレジリエンスの高い腸内環境の指標とされています(Front Microbiol. 2020 33042082)。
■酪酸産生菌が多いと「強い腸」に
酪酸は大腸の細胞のエネルギー源となり腸粘膜を保護するとともに、炎症を抑える作用も持つためです。食生活の急変や一時的な下痢、抗生物質の使用などで腸内細菌叢がかく乱されても、レジリエンスの高い腸では速やかに回復し機能を取り戻します。腸内の多様性が高いほど、その働きを補う能力が高く安定した腸内細菌バランスを維持します。言い換えれば、腸内という生態系が豊かでバランスがとれているほど長期的なディスバイオシス(腸内環境の乱れ)に陥りにくいのです。
良い腸内環境のもう1つの条件は、腸で不必要な炎症反応が抑えられていることです。腸は外界(食べ物や細菌)と接する臓器であり、多くの免疫細胞が待機しています。
■1週間の食事に入れるべき5食品
健康な腸では腸の粘液層(腸粘膜バリア)が厚く保たれ、腸壁を細菌や毒素から守っています。酪酸は炎症を改善し、粘液層の産生を促し、腸のタイトジャンクションも強化して異物の侵入を防ぎます(EBioMedicine. 2018 29627390)。
腸内環境を良好に保つには、やはり食事の影響が大きいです。特に腸内細菌叢の多様性を高めるには、様々な種類の食物繊維や発酵食品を日常的に摂ることが鍵となります。実際、米国の大規模調査プロジェクト「American Gut Project」によれば、1週間に30種類以上の植物性食品を食べている人は、10種類以下しか食べない人に比べて腸内細菌の多様性が高いと報告されています(mSystems. 2018 29795809)。
特に腸内細菌の好物である食物繊維やポリフェノール豊富な野菜、果物、豆類、海藻、きのこ類などを、1週間の食卓に数種類ずつ取り入れることは、有効な腸内環境改善対策です。普段のサラダに数種類の野菜や豆を混ぜる、毎日の食事に発酵食品を一品加える、おやつにナッツや果物を選ぶ。そんな小さな工夫の積み重ねで腸内細菌叢は豊かになっていきます。
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石黒 成治(いしぐろ・せいじ)
消化器外科医 ヘルスコーチ
1973年生まれ。1997年名古屋大学医学部卒。国立がん研究センター中央病院(当時)で大腸がん外科治療のトレーニングを受け、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務。現在は予防医療を目的とした健康スクールを主宰。
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(消化器外科医 ヘルスコーチ 石黒 成治)

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