「日本の富裕層」とはどんな人たちか。金融資産1億円以上の人を対象にしたインテージの調査によると「富裕層全体の約6割を60歳以上が占め、81.2%が男性、51.1%が京浜エリア居住者だ。
ただし金融資産5億円以上の『超富裕層』では60歳未満が50.5%と現役世代が逆転する」という――。
※本稿は、株式会社インテージ『なぜ日本人は、それを選ぶのか? データで読み解く時間とお金の使い方』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
■貧富の二極化における「超富裕層」の誕生
国内における経済成長の長引く停滞や老後不安などを背景に、給与収入や年金制度を過度に期待せず、資産運用や投資を積極的に行う人が増えてきました。
以前は、1億円以上の金融資産を保有する人を「富裕層」と定義して語られることが多かったものの、2022年頃を境にさらにその上をいく「超富裕層」(金融資産5億円以上)というワードもさまざまなメディアで目にするようになりました。
一方で、「貧富の二極化」が社会課題にもなっています。資産や可処分所得をセグメンテーションのキーとして用いた生活者理解アプローチはよく用いられる分析手法ですが、超富裕層の誕生や二極化という社会的な変化の中で、現代の生活者をより正しく理解するためには、これまで以上にきめ細かな分析や洞察が求められる時代を迎えているのではないでしょうか。
そのような課題のもと、今回は金融資産を1億円以上保有する富裕層に注目して分析を行い、生活意識や価値観、消費意識や行動なども重ね合わせながら「ヒトトナリ」に迫ることにより、富裕層マーケティングのアップデートにつながるヒントを探っていきます。
■「ニッポンの富裕層」の資産内訳
今回は、世帯で金融資産(預貯金、社債や国債などの債券・株、投資信託、生命保険のうち満期金のあるもの、貸出金など)を1億円以上保有している層を富裕層と定義し、「インテージ 金融行動調査MAT-kit」から該当するモニターを抽出して調査を行いました。
また、比較対象として、金融資産1億円未満の層を「インテージ マイティモニター」から抽出して調査しています。
この結果、金融資産1億円以上を保有する3243人(内金融資産5億円以上保有する「超富裕層」200人)からの回答を得ることができました。
以下はアンケート調査に回答をいただいた方の集計結果となりますので、日本全体の富裕層の割合を示したものではないことを前提に分析を進めていきたいと思います。
調査に協力してくれた富裕層の保有資産の内訳は図表1の通り。
金融資産2億円以上5億円未満が747人(23.0%)。5億円以上が200人(6.2%)となっています。
■富裕層の「年齢・居住」プロフィール
ここからは、前記3243人の回答から得られた富裕層の実態を見ていきます。
年齢構成
年齢構成は図表2の通りであり、富裕層全体(富裕層+超富裕層)では約6割を60歳以上が占めています。
ただし、金融資産5億円以上の超富裕層では、60歳未満(現役世代)率が比較的高く、50.5%を占めています。
なお、男女別に確認すると各層ともに男性が多くを占め、富裕層回答者の81.2%が男性となっています。
居住エリア
次に居住エリアを見てみます(図表3)。
富裕層では51.1%が京浜エリア(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に居住していることが明らかになりました。超富裕層では京浜エリアへの集中がさらに高まり58.0%に達します。
日本の富裕層が京浜エリアに集中している結果となりました。
■お金持ちは休日に何をしているのか
では、このように多くの金融資産を持つ富裕層は日頃どんな生活をしているのでしょうか?
特に嗜好の差が出ると思われる「休日の過ごし方」を一般層との比較で確認して見ました(図表4)。
スポーツ観戦や個人レッスンなどの一部のものを除いて資産額が上がるほど体験率が高い傾向にあります。

しかし、富裕層と一般・準富裕層との差はそこまで大きくはなく、富裕層は一般層と全く異なることをして休日を過ごしているというより、何をしているかは似通っているが、その内容(かける金額)や頻度が異なるということかもしれません。
■「超富裕層」の休日の過ごし方
一方、全く違う休日を過ごしていそうなのは超富裕層です。
特徴的な体験としては、「海外旅行(1人あたり100万円以上の予算)」に関して「超富裕層」は37.6%が体験し、「準富裕層」と比較して25.3ポイント高いという結果でした。
同じく「会員制ゴルフ」29.3%(23.4ポイント差)、「別荘・セカンドハウス滞在」24.8%(20.9ポイント差)、「デパートの外商サロン」23.3%(20.9ポイント差)なども特徴的でした。
もう一点、「超富裕層」で特徴的なポイントとしては、お客様を限定して招待するイベントへの参加が多く見られた点です。
「ハイブランドの招待イベントへの参加」21.1%、「ハイジュエリー・ウォッチのプライベートプレゼンへの参加」16.5%、「高級車オーナー向けのドライブイベントへの参加」15.8%。
多くのハイブランドでは、参加者を「超富裕層」に絞ったクローズドなイベントが開催され、招かれた「超富裕層」もステータス感を持って商品を吟味し、休日の買い物を楽しんでいる姿が浮き彫りになりました。
■富裕層&超富裕層の消費の特徴
では、このような優雅な休日を過ごしている富裕層は、どのようなこだわりを持って、商品やサービスを吟味しているのでしょうか?
図表5は、商品・サービス購入時の考え方を調べたものです。
「富裕層」「超富裕層」に見られる特徴は高い“こだわり”です。
特に「超富裕層」では“強いこだわりをもって選んでいる商品やサービスが多い”が57.0%(「準富裕層」と比較して26.6ポイント高い)、“作り手の思いに共感して買う”が41.0%(同25.7ポイント高)。
■富裕層が多くのお金をかけるポイント
加えて“自分軸”に関する項目でも差がつきました。
“気持ちの良いことや快適なことにはお金をかける”が76.0%(同20.3ポイント高)、“自分を向上させるために時間やお金を使っている”が60.0%(同19.4ポイント高)、“自分の時間を捻出できるものにはお金をかける”が58.0%(同18.3ポイント高)となりました。

快適さや自己成長、時間捻出のため、より多くのお金をかけていることがわかります。
加えて、「超富裕層」との差が著しい項目は、休日の過ごし方でも特徴的であった「ステータス志向」に関する項目でした。
“有名ブランド/メーカーのものを選ぶ”が46.0%(同20.5ポイント高)、“人の持っていないものを身につけたい”が29.0%(同15.6ポイント高)と特徴的でした。
「富裕層」「超富裕層」は豊富な資金を背景に、自分自身の成長を重視した「自分軸」を持ち、養われた選択眼により「こだわり」を持って商品・サービスを選択しています。
また、他者との差異を通じ自分を際立たせる「ステータス志向」を意識した購買行動をとっていることが明らかになりました。
■超富裕層の特に際立つ志向とは
富裕層をターゲットとした商品・サービスでは、「自分にぴったり合った生活や、人生を高めてくれる質の高い商品・サービス」と感じてもらえることが大事と考えられます。
富裕層の中でも超富裕層は特にステータス志向が強いため、「選ばれた人だけの/あなただけの特別感」を演出する必要があると言えます。
商品・サービスそのもののステータス性だけでなく、前項で見たような、限定イベント招待や限定付帯サービス、富裕層同士のコミュニティ形成などプロモーション・コミュニケーション上での特別な演出が望まれるでしょう。
しかし、富裕層・超富裕層も吟味・コスパ意識は一般層と同じくらい強い傾向があります。
高付加価値や、特別感のあるサービスでも、富裕層・超富裕層にその価値を感じてもらい、気持ち良くお金を出してもらえる仕組みづくりが大事なのではないでしょうか。

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株式会社インテージ(かぶしきがいしゃ・いんてーじ)

マーケティングリサーチ会社

1960年に創業。インテージグループは、日本のみならずアジアNo.1(*)のマーケティングリサーチ会社であり、生活者の意識・行動データを長年にわたり蓄積・分析している。
全国規模の消費者パネルデータや各種調査を通じて、消費・メディア・社会意識の変化を定点観測し、企業・行政・研究機関にも知見を提供。事業ビジョンとして「Create Consumer-centric Values」を掲げ、生活者中心マーケティングの実現・支援に力を尽くしている。本書では、同社が長年培ってきたデータと分析知をもとに、現代社会の実像を読み解く。 

*「ESOMAR’s Global Top-50 Insights Companies 2025」に基づく(グループ連結売上高ベース)

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(マーケティングリサーチ会社 株式会社インテージ 文=未来共創センター長 濱賢太郎)
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