※本稿は、つみきち『知らない間に嫌われる言葉、話すたびに好かれる言葉』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■「よく喋るね」をスマートに言いかえ
楽しそうにたくさん話してくれる人に、「よく喋(しゃべ)るね」と言ったことはありませんか? 悪気はゼロ。むしろ「楽しい」と思っている。でも、聞いた側は一瞬ドキッとすることがあります。「喋りすぎた?」「うるさかった?」と、急に不安がよぎるからです。
特に、過去に「うるさい」と言われた経験がある人にとっては、「よく喋るね」はその記憶を呼び起こすトリガー(引き金)になることも。褒めるつもりが、古い傷をつついてしまいかねません。
実際、「よく喋りますもんね」と言われた瞬間、「すいません、私ばっかり喋って……」と反射的に謝ってしまう人は少なくありません。場を盛り上げようとしてくれていた人に、頭を下げさせてしまう。褒めたはずのひと言が生むこのねじれに、気づいている人は案外少ないのです。
その点「話題が尽きなくて楽しい」は、矢印が自分に向いています。
褒め言葉に迷ったら、「あなたは○○だ」ではなく「あなたのおかげで私が○○になった」という形にすると、うまくいきます。
■「若いのに」は今や禁句。どう言いかえるか
後輩や年下の人がめざましい成果を出したとき、「若いのにすごいね」とつい言ってしまうことがあります。
純粋に感心しているし、称えたい気持ちから出てくる言葉でしょう。ところが、この言葉には落とし穴があります。「若いのに」は、「若い人は普通すごくないけど」という前提を含んでしまうのです。
それでは言われた側は「若くなければすごくないってこと⁉」と捉えてしまいかねません。しかも「若いのに」は、無意識に“上から見ている”ポジションを作ってしまいます。
「男だから」「女だから」が差別的だと多くの人が気づき始めている時代です。
一方「素晴らしい成果だね」というフレーズでは、年齢については触れていません。純粋に“その成果”だけを見ているから、相手は「自分の努力が認められた」と感じることができます。
つまり、褒めたいときには属性(年齢・性別・立場)をきちんと外すこと。すると、言葉は何倍も強く届きます。
■「やればできるじゃん」の裏メッセージ
何かを達成した人に「やればできるじゃん!」と伝える。テンションが上がって、つい出てしまいがちな言葉です。もちろん根本には、相手の成功が嬉しいし、「ほら、やっぱり!」という気持ちがあふれているはず。
ただ、「やればできるじゃん」には「今までやってなかったでしょ?」という裏メッセージが潜んでいます。本人はずっと試行錯誤していたかもしれないのに、外から「ようやく行動に移したんだね」と言われた気持ちになることがある。
しかも、この言葉の奥底には「正直、半分はできないと思っていた」という本音が横たわっていることも……。その半信半疑は相手に驚くほど届いてしまいます。
相手が見せた成果の裏には、見えない時間が山ほどあります。うまくいかなかった日も、やめたいと思った日もあったかもしれない。それを知らずに「やればできるじゃん」と軽く言うと、「苦労を知らない人に評価された」と感じさせてしまうリスクがあるのです。
ところが「できると信じてたよ!」は、結果が出る前からの信頼を伝えています。「あなたの力があれば成功を遂げると思っていた」と言っている。結果だけでなく、プロセスまるごとを肯定しているから、相手は素直に嬉しいのです。
■驚きを「感動」に変換して伝える
誰かの思いがけない一面を見て、「意外とやるね!」と口にする。これは「見直した!」というポジティブな驚きから出ている言葉でしょう。
ところが「意外」は、「もともとは期待していなかったけど」という前置きが含まれます。「意外と」は「普段はそうじゃないけど」と表裏一体の言葉だからです。
人によっては、「意外とおいしい」は「おいしくなさそうだったけど」、「意外とできるじゃん」は「できなそうだったけど」と聞こえてしまう。褒めているようで、実は“低い期待値”を先に出してしまっています。
そのため言われた側は「今までの自分はダメだと思われていたんだ」と受け取ることがあるのです。一瞬嬉しくても、あとからじわじわともやもやが広がる。頼んでもいないのに、評論家に勝手に酷評されたような居心地の悪さだけが胸に残ります。
それとは対照的なのが「すごいね、見惚れちゃった!」です。この言葉は、驚きを“感動”に変換しています。「すごい」はストレートな称賛、「見惚れた」は自分が圧倒されたことの表現。相手を下げる要素がどこにもない。驚きの気持ちは同じなのに、届き方がまるで違います。
驚いたときほど、素直に感動として伝える。それだけで褒め言葉は毒を持たなくなります。
■あえて付け加えたい「一言」
久しぶりに再会した友人に「変わったね!」という言葉。いい意味で言っているつもりだし、ポジティブな驚きがあふれているように感じますよね。
でも残念ながら、相手の中では、「昔の私はダメだったってこと?」という疑問がチラつくことがあります。
また「髪切った?」のひと言にも要注意。美容室で切りすぎて内心落ち込んでいる日なら、痛む傷口に触れられた気分になります。
つまり「変わった」は、ビフォー・アフターの“ビフォー”を否定するニュアンスを含みやすい言葉なのです。特に見た目や雰囲気に対して使うと、「前はよくなかった」と受け取られるリスクが高いです。本人は過去の自分も大事にしているかもしれないのに、その時代を丸ごと否定されたような気持ちになってしまいます。
ほしいのは「変わった」という事実の指摘ではなく、「いいね」という手放しの称賛なのです。
そこでおすすめしたいのが「前よりもっと素敵になったね!」。「もっと」という一語が大切です。これなら、相手も安心して「ありがとう」と言えます。
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つみきち
好かれる言いかえラボ代表
セミナー講師、司会者、元ラジオパーソナリティ。大阪府出身。これまで企業や自治体の式典の司会者、イベントMC、ラジオ特番や番組のメインパーソナリティを担当。聴き手・読み手が心地よく、親近感や前向きな印象を感じられる「言いかえ」を十数年にわたり研究。2023年に「フォローしたくなるインフルエンサーアワード」で最優秀賞を受賞。著書に『なぜか好かれる人の言いかえ手帖』(SBクリエイティブ)がある。
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(好かれる言いかえラボ代表 つみきち)

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