■「令和のビジネスシューズ」の新常識
「履き心地と見た目は両立するか」――。じつは今、ビジネスシューズのトレンドは大きく変化し、新たな局面を迎えています。
契機となったのは2018年頃、スポーツ庁が革靴やヒールではなく、スニーカーなどの「歩きやすい靴」での通勤・勤務を推奨する取り組みを始めたことです。
当時の世間からの受け止めは「スニーカー通勤=ダサい」でした。ところが時代は変わり、今ではラクな履き心地とスマートな印象を両立させるビジネススニーカーも登場しています。
代表例は、3月20日発売のワークマン「ハイバウンスバラストローファー」(3300円)です。発売直後から品薄となり、一部では1万円以上の高値で転売される事態に。その反響は、当初の予想を大きく上回っています。
今こそ、これまでのビジネスシューズを見直すタイミングなのではないでしょうか。そこで今回は、「新時代の足元攻略法」をお伝えします。
■なぜスニーカー通勤は「ダサい」のか
前述のように、2018年当時からビジネスシーンのスニーカーは、批判の対象となってきました。
これはビジネスファッションのみならずコーディネート全般に共通しますが、「ルーツが離れているほど、水と油のように合わせづらい」のです。当時は、通年ノーネクタイという人も少なかったため、なおさらスニーカーが悪目立ちする状況でした。しかも、「ビジネススニーカー」というカテゴリーも生まれていません。
当時の工夫といえば、各社に並ぶスポーツやカジュアルのなかでも「極力シンプルなスニーカーを合わせる」というもの。もしくは「パンツ丈の最適化」です。これは靴とパンツ丈の関係性を見直すことで、だらしなさを解消する作戦です。
■「第1世代」は工夫のしようがなかった
そもそも革靴とスニーカーでは、ボリューム感が異なるため、「革靴でピッタリだったパンツ丈は、スニーカーに長すぎる」のです。この事実に気づかぬままでは、どんなにスニーカーが素敵であったとしても、余計なシワが足元に生まれ、だらしなく見えます。つまりは、「革靴とビジネススニーカーで、最適なパンツ丈を変える」という工夫です。
また、ファッション感度の高い人は、これらの工夫のみならず、レザー素材のスニーカーを選択していました。これは「素材を革靴に近づけることで、かけ離れていたルーツを近づける」という作戦です。
このように2018年からの「第1世代」のビジネススニーカーは、全身の組み合わせをスタイリッシュにする打ち手が限られていました。それから数年が経ち、コロナ禍を迎える2020年頃には、各社からビジネスシーンを想定した商品が発売され、いよいよビジネススニーカーの最適解が明らかになったのです。私はこの時代を「第2世代」と捉えています。
■「第2世代」でビジネススニーカーが定着したワケ
水と油のようなアイテム同士を馴染ませるには、質感に工夫を凝らすことがセオリーです。「第1世代」においては、感度の高い人のみ、レザー素材を選択していましたが、それでも限界がありました。というのもスニーカーの木型(フォルム)がカジュアルなので、レザー素材であったとしても、なかなかしっくりくるものがありません。これこそビジネススニーカーが、揶揄されていた理由です。
一方「第2世代」では、革靴の木型でつくられた洗練されたフォルムのビジネススニーカーが登場。スニーカーソール(靴底)に革靴のアッパー(靴の「底」以外の足全体を包み込む部分)デザインを載せたものなど、水と油だった関係性自体が変わりました。
「革靴の木型」でつくられたレザースニーカーが打ち出されたことで、「ビジネススニーカー」というカテゴリーが確立したのです。スニーカーの歩きやすさを持ちながらも、見た目は革靴同様のフォルム。これが現在もビジネスシーンのメインストリームであり、多くの40代~50代にとっての「ビジネススニーカーの成功体験」として定着してきました。
■「足元の色」の唯一の正解とは
洗練されたフォルムのビジネススニーカーは、スニーカーというより、むしろ革靴のような印象になります。そのため各社から登場したビジネススニーカーのなかには、白ソールなどスニーカーらしさを取り入れたデザインも増加しました。アイテム単体でみれば、爽やかなのですが、これはコーディネート次第では野暮ったく見えます。
それが「足元の色数」問題です。ビジネスシーンに限らず、足元の色数は2色までに抑えることが好ましく、足元3色以上の場合、散らかった印象になります。つまりは、白ソールのビジネススニーカーならば、アッパーとスラックスの色を近づけること。
これが唯一の正解ですが、このルールを知らない人は、アッパーと異なる色のスラックスを合わせ、なんだか全身が散らかって見えていたのです。その一方、オンオフ兼用を試みた人たちは、ビジネススニーカーを休日ファッションに取り入れるという問題に直面していました。
「スニーカーだから、カジュアルに合わせられるだろう」という目論見は、ドレス感とカジュアル感という関係性からアウトです。つまり通勤スニーカーとして、ビジネス用途のスラックスに合うということは、裏を返せば、「カジュアルなデニムやチノパンでは、足元が浮く」ということ。これはのべ5500人のファッション相談に乗り、一緒にショップで試着を見てきたからこそ断言できます。
■「第3世代」でスニーカーは流行→定番へ
今なおスニーカー通勤のメインストリームは「第2世代」ですが、ここ数年、変化の兆しがあるのです。ニューバランスと「JUNYA WATANABE MAN(ジュンヤ・ワタナベ・マン)」のデザイナーズコラボから火がついた「スニーカーローファー」をご存じでしょうか。
スニーカーのソールにローファーを合わせたシューズ「スニーカーローファー」が、ナイキやコンバースなどのスポーツブランドのみならず、セレクトショップでも完売が続出しているのです。この春、ワークマンから3300円で販売されたことをきっかけとして、「スニーカーローファー」は流行というより定番化しつつあります。
一見するとビジネス向きですが、じつは「第2世代」とは決定的な違いがあります。それは、ベースとなる木型が「スニーカー特有の丸みとボリュームを持ったもの」であるという点です。つまり、ビジネススニーカーとして似合うパンツが「第2世代」とは異なるのです。
これまでのスラッとしたビジネススラックスではなく、気持ちゆとりのあるワンタック(ウエスト部分につまんで作られた「生地の折り目」が左右に1本ずつ入っているデザイン)のスラックスに合わせてみてください。いつもの「ピシッとした細身のスラックス」に、第3世代の「スニーカーローファー」では、シャープなパンツの裾から、ポテッとした丸いボリューム靴が顔を出すため、スラックスのドレス感に対して、靴のカジュアル感が完全に負けてしまいます。
結果として、歩きやすさだけを優先した「平成ビジネスマンの革靴見えウォーキングシューズ」のような状態に陥るのです。
■最大のポイントは「全体最適の視点」
この「平成の手抜きビジネスマン化」を回避し、スニーカーローファーをスマートに履きこなすための処方箋は、靴単体のみならず、「合わせるパンツのシルエット」を調整することです。このワンタックへの移行は、単なるファッションの枠を超えた、現代のビジネスシーンに求められるマインドセットに通じると私は捉えています。
2000年代から2010年代にかけて、ビジネスファッションは無駄なフォルムを削ぎ落とした「ピシッとした細身(タイト)」が正解とされてきました。しかし働き方も多様化した令和の今、求められているのは、ガチガチのルールに縛られない「適度なゆとりを、だらしなくない方向で整える柔軟性」です。
「とりあえず黒いローファー型だから大丈夫だろう」と靴単体を見て、過去の成功体験でコーディネートすることは、コーディネートの本質を見誤るリスクがあります。「スニーカーローファー」という新しいツールの特性を理解し、それに合わせて自らのスラックスもアップデートすること。これは全体を調和させる「全体最適の視点」です。
ビジネススニーカーは、色のみならず、パンツ丈やレザーの質感を意識すること。また同時にフォルムによって、スラックスの幅を変えることをお忘れなく。スニーカー通勤の本質を見分けることでのみ、履き心地と好印象を両立できますから。
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森井 良行(もりい・よしゆき)
スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事
1979年千葉県生まれ。日本大学卒業後、一般企業を経て2007年に独立。これまでのべ5500人を超えるビジネスパーソンの買い物に同行し、スタイリングを手がける。感性で語られがちなファッションを独自のロジックで言語化し、戦略的にビジネスパーソンの魅力を引き出す着こなしのメソッドに定評がある。
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(スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事 森井 良行)

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