■インド料理や中華が食べられなくなる?
スパイシーなカレーがおいしいインド・ネパール料理店や、本場の味が楽しめる中華料理店などの一部がいま、窮地に立たされている。
背景にあるのは、2025年10月16日に省令改正された外国人経営者のための在留資格「経営・管理」の厳格化だ。これにより、人気店であっても要件をクリアできず、店を畳んで帰国しなければならない人が出てくる可能性がある。
省令改正からまだ半年であり、厳格化が直接的な原因で閉店に追い込まれるかどうかは不明だ。だが、SNSなどでは在留資格の更新ができるか心配する経営者が声を上げ始めており、一部の日本人が彼らを救うために署名活動まで行う事態となっている。
在留資格の厳格化で、いま現場ではどんなことが起きていて、何が問題となっているのか。外国人の在留資格に詳しい行政書士に話を聞いた。
■「まじめな外国人」まで追い出しかねない
「がん細胞が見つかったとき、本当は手術をして、悪い部分を摘出する、あるいは、適切な治療をするべきだと思うのですが、それができない状態。いま起きていることは、身体にとっていい細胞まで、すべて殺してしまうことです。こうしたやり方が本当に日本のためになるのでしょうか?」
行政書士は、ため息をつきながらこう語る。
がん細胞に例えたのは、「経営・管理」を日本移住のために悪用したり、ペーパーカンパニーを設立したりしている人々だ。
本来、このような人々を徹底的にあぶり出して調査を行うことが重要だが、昨年の厳格化の内容は「一律に要件のハードルを上げるもので、『不許可が前提』といってもいい。まっとうに仕事をしてきた人々が犠牲になり、不正を働いている人は裏技を使って生き残る……。そんな事態にもなりかねません。まじめに働く外国人を日本から追い出すことになってしまわないだろうかと疑問を感じます」と同行政書士は語る。
■在留資格「経営・管理」とは
まっとうな仕事をしてきた人々とは、「経営・管理」を取得し、その要件に合った仕事(飲食店経営、貿易などの実業)をきちんと行い、税金を支払い、まじめに暮らしてきた人々だ。
法務省の統計によると、2024年末に「経営・管理」を取得した外国人は4万1615人で、この半数以上の2万1740人が中国人だった(他に比較的多いのはネパール、パキスタン、韓国だが、中国の多さは群を抜いている)。
そもそも、「経営・管理」は2015年、日本経済を活性化する目的で導入された在留資格だ。従来は資本金500万円以上、または常勤職員2人以上のいずれかの要件をクリアすれば、最長5年までの在留資格が認められ、家族も帯同でき、日本で事業を行うことができるというものだった〔在留期間は3カ月(または4カ月)、1年、3年、5年がある〕。
2015年の同資格の取得者は1万8109人だったので、この9年間で2倍以上に増加した。
■「厳格化」に舵を切らせた背景
増加の背景にあると思われるのは、全体の半数以上を占める中国人の母国での事情だ。2020年から始まった新型コロナウイルスの流行や不動産不況により、中国国内の人々の間で一気に不安感が高まった。
移住するための在留資格は日本に存在しないため、彼らは「経営・管理」に目をつけた。諸外国(韓国の場合、日本円で約3200万円、シンガポールは同約1100万円)に比べて格段に安い費用で日本の在留資格を正式に得られるという点に魅力を感じ、一部の人は仲介業者(ブローカー)を介して申請、取得した。
その中には、飲食店のノウハウを一から学んで、まじめに生きようとする人がいる半面、すべて嘘で固めた架空の内容で書類を作成し、ペーパーカンパニーを作ることで日本移住を成功させた人もいた。民泊事業などでは、同一住所のオフィスに複数の人が登記したケースも発覚した。後者が問題視されたことが、日本政府が厳格化に舵を切った要因ともいわれている。
■「資本金3000万円」へ引き上げの衝撃
しかし、厳格化の内容を見ると、従来なら在留資格の取得をすんなり許可されてきた人々まで不許可になる可能性が大きくなった。資本金は500万円から3000万円に引き上げられ、常勤職員1人以上の雇用、3年以上の実務経験や修士号以上の学位、中小企業診断士などによる事業計画書の確認、日本語能力(N2=中上級レベル)などが求められることになった。
メディアの報道の中には「3000万円なんてとても用意できない。もうお店をやっていけない」と悲観する声のみをクローズアップしているものがあるが、経過措置として2028年10月16日までは現行基準での更新が可能だ。そのため、今すぐに大金を用意しなければならないというのは誤解で、そういうわけではない。
しかし、前出の行政書士は「問題は、それ以外の点は2028年を待たずにクリアしなければならないというところにある」という。
■小規模飲食店が直面する「厳しい現実」
たとえば、コロナ禍の中国を逃れて来日後、夫婦2人で小さな中華料理店を開き、子どもは日本の学校にようやく馴染み、カツカツで生活していたのに、いきなり従業員の雇用が必須になったり、高度な日本語力を身につけたりしなければならないことは現実問題として非常にハードルが高い。だが、これらの要件を解決しなければ、在留資格の更新が難しくなる。
また、昨年の改正前は認められてきたオーナーシェフも認められなくなった。そうしたことから、「小規模の飲食店にとっては相当厳しいのが現状」(同前)だ。
小規模店の場合、「経営・管理」の在留資格は1年ごとの更新が多く、毎年更新し続けなければならないという「苦しさ」もある。
もし留学生として来日した場合、「留学」の在留資格で過ごしたあと、日本企業などに就職し、「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)という会社員が多く取得する在留資格に切り替えるケースが多い。日本で10年以上、普通に働けば、「永住者」も認められる(高度専門職などの場合はもっと短い期間で可能)。
■経営・管理→永住者は、ほとんどいない
しかし、「経営・管理」から「永住者」に切り替えられるケースは「ほとんどない」と同行政書士はいう。可能性としてあり得るのは、別の在留資格に切り替えること。たとえば、いったん経営者をあきらめ、企業の社員になり「技人国」に切り替えることが法的には可能だ。
ただし、「技人国」を取得する際、日本語を使う業務に就く場合は、原則としてN2レベルの日本語力が求められることになり、今月(4月)15日から運用が開始された。「技人国」で入国しながら、単純労働に就くケースがあり、問題となったことが、政府がハードルを上げた背景にある。
このように、一部の人が在留資格を悪用したり、資格外の活動をしたりしたことにより、要件が厳格化され、在留資格通りにきちんと働いてきた人に「とばっちり」が及ぶ事態となっている。
■対象は「この10年以内」の来日層
現在、日本にあるインド・ネパール料理店や中華料理店は、近年来日した人々ではなく、日本に10年以上居住して、すでに「永住者」となったり、日本国籍を取得したりした人が経営しているケースのほうが多い。「要件をクリアできず、店を畳んで帰国しなければならない」という飲食店経営者の人数は、全飲食店の数から見れば、それほど多くない。
筆者の知人に、東京・池袋や上野などで中華料理店を経営している在日中国人が大勢いるが、彼らは日本語がペラペラで、元留学生だったり、日本企業を脱サラして飲食店経営に乗り出したりした人だ。そのため、今回の厳格化問題は彼らには関係ない。
日本メディアの報道では、この点をあいまいに書いているものがあり、誤解を生んでいると感じるが、今回対象となっているのは、この10年以内に来日し、「経営・管理」で働く人々だ。同行政書士によると、中国人で「経営・管理」を取得している人の仕事分野は、貿易、民泊、EC、飲食店などがあり、飲食店は参入しやすいが、数としては多くないそうだ。
■富裕層の足枷となる「送金制限」
一方で、日本で民泊や貿易などを行おうとして同在留資格を取得する富裕層はどうだろうか。同行政書士によると、昨年10月16日前は「駆け込み申請」が非常に多かったそうだが、今ではすっかり鳴りを潜めているという。富裕層ならば新規の申請でも「3000万円」の要件は軽くクリアできそうだが、問題はそこではないそうだ。
「3000万円は調達できるのですが、それをどうやって日本に持ち込むか? それが至難の業なんです。中国から海外には原則5万ドル(現在のレートで約115万円)までしか送金できません。マネーロンダリングとか地下銀行などを使おうと考える人がいますが、それは絶対に入管(東京出入国在留管理局)に認められません。
富裕層は香港に銀行口座を持っている人がかなりいて、以前は香港から日本に送金する人がいましたが、現在はこの手段も厳しくなりました。たとえ香港に口座を持っていても、香港の居住権がない場合は不許可、というケースが出始めたのです。ですので、送金の問題が足枷となり、新規で日本の『経営・管理』を取得しようとする中国人は確実に減っています」(同前)。
■感情的な厳格化は国益にかなうのか
同行政書士によると、民泊や貿易などの事業をやるという名目で、日本の「経営・管理」を取得した富裕層の中には、今後も更新が難しいのなら、いっそのこと、日本から引き揚げるという人も増え始めているという。裏技を使って日本に居続けるという場合もあるが、多くの人は「日本がダメなら、別に他国へ行けばいい」と考え、日本で購入した不動産を売却する動きも出ているそうだ。
日本にしか居場所がなく、子どもも日本語しかできず、まじめにコツコツ働いてきた人々が厳格化の影響で切り捨てられようとしている一方、不正を働いた人々は日本を荒らすだけで、のうのうと生き残る――。
在日外国人に対する風当たりが厳しい「世論」の中、実態を十分にふまえない「感情論的な厳格化」が本当に国益に適うのか。しっかり議論していく必要があるのではないだろうか。
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中島 恵(なかじま・けい)
フリージャーナリスト
山梨県生まれ。
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(フリージャーナリスト 中島 恵)

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