※本稿は、森豊、松生恒夫『血糖値は「腸」で下がる』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■食べ過ぎをやめると腸が整い糖尿病予防に
多忙でストレスに満ち、生活が不規則になりがちな現代人は、食生活も乱れがちで、日常的に「腸ストレス」にさいなまれています。
なかでも過食や欠食・偏食は腸に大きなダメージを与え、「腸ストレス」をもたらします。冷えや精神的ストレス、運動不足なども腸ストレスの原因となります。とくに気をつけたいのが、過食=食べ過ぎです。
食べ過ぎをやめること、すなわち摂取カロリーを減らすこと(カロリー・リストリクション)が腸ストレスを軽減し、腸の健康を守り、さらには糖尿病を防ぐポイントです。
この問題に関連して、最近注目を集めているホルモンに、腸から分泌されるインクレチンという物質があります。
インクレチンには、GIPとGLP-1の2種類が存在します。
GLP-1は主に小腸の下部より分泌され、すい臓のβ細胞からのインスリン分泌を促進します。GIPは主に小腸の上部から分泌され、GLP-1と同様にすい臓に作用してインスリン分泌を促します。
インスリン分泌促進作用はGLP-1のほうが数倍強いとされています。
■代謝そのものが老化を促進する
もう一つ重要なのが、インクレチンは、脳に作用して食べる行動を抑制する働きをするという点です。さらに、胃に作用して、胃の蠕動運動を抑制する、つまり食欲を抑える方向に働くのです。
カロリー・リストリクションを行えば、腸へのストレスが減少し、インクレチン分泌促進にもつながります。すると、血液中の糖分の分解が進んで、すばやくエネルギーに変わることで、肥満になりにくくなるのです。
また、カロリー・リストリクションは老化予防にも有効とされています。じつは、人間が食べ物をエネルギーに変えること自体、つまり代謝そのものが老化を促進することがわかっています。
ということは、多くの食べ物を摂取し、多くのエネルギーを消費していくことが老化を加速するのなら、逆に摂取カロリーを必要最小限にし、代謝をコントロールすれば、加齢に対抗できるかもしれません。
この考え方は、現在の抗加齢医学の主流となっているだけでなく、腸の疾患や糖尿病、メタボリックシンドロームなどの改善にも共通する概念となっています。
食べ過ぎれば、当然、吸収しなければならない多くの内容物が腸内に流入してきて、腸に負担(腸ストレス)をかけます。このストレスが、腸の老化だけでなく、肥満を招き、糖尿病を引き起こすことにつながるのです。
■腸を元気にすると高血圧が改善
食べ過ぎによる腸ストレスと糖尿病との関連について、次のような研究も発表されています。
慶應大学の伊藤裕(いとうひろし)教授らの研究では、高脂肪食をたくさん食べさせた動物は、早い段階で腸に炎症が起こっていることを報告しています。つまり、この腸の炎症は、ストレス反応の一つといえるのです。
さらに驚くことには、肥満を解消するための減量手術(小腸の一部を切り離し、それを直接胃につなげることで、食べ物が通過する部分を少なくするバイパス手術)で、バイパスした分だけ栄養分の吸収面積が減少し、肥満解消につながるわけですが、それによってインクレチンなどの腸のホルモン分泌が改善し、インスリンの分泌が促され、高血糖の改善が認められたというのです。
つまり、腸へのストレスが少なくなることで、腸の炎症が抑えられる上、肥満・糖尿病が改善することが明らかになってきたのです。
この研究のように、「腸を元気にすれば糖尿病がよくなる」ということが、次々と報告されてきています。
■ほかの油脂から置き換えると動脈硬化予防に
ここからは、腸の健康を維持・増進し、糖尿病の予防にも役立つ食品を紹介したいと思います。
◇インスリンの効き目が向上する「オリーブオイル」
イタリア料理でおなじみのオリーブオイルですが、じつは、糖尿病に有効な成分を含んでいることがわかってきています。
血糖値をコントロールするインスリンというホルモンは、太っている人ではその効き方が悪くなっていることがよく見られます(インスリン抵抗性)。こうなると、血糖値を低下させるために本来より多くのインスリンが分泌され、それでも血糖値が低下しないと糖尿病ということになります。
オリーブオイルは、インスリンの効果を改善し、血液中のインスリン濃度を下げるとされています。
アイルランドのダブリン大学トリニティ・カレッジのトムキン氏らは、インスリンの効きが悪いインスリン抵抗性の糖尿病患者11人に2カ月間、オリーブオイルに豊富に含まれる脂質であるオレイン酸が多い食事を摂取させた場合と、コーン油や綿実油に多く含まれるリノール酸が多い食事を摂取させた場合とを比較検討しました。その結果、オレイン酸を摂取した場合のほうが、インスリンの効き目が向上(インスリン抵抗性が改善)したと報告しています。
また、糖尿病の患者さんは、糖尿病による動脈硬化症が問題になります。その点、アメリカの食品医薬品局(FDA)は、ほかの油脂をオリーブオイルに置き換えた場合(大さじ1杯13.5g相当)、動脈硬化の予防につながることを確認しました。
これは、オリーブオイルのオレイン酸が悪玉コレステロールを減少させ、善玉コレステロールを増加、または維持させたということです。
さらに2012年には、欧州食品安全機関(EFSA)が、オリーブオイルは悪玉コレステロールの酸化を予防するということを提示しました。
悪玉コレステロール(LDL)が酸化されて酸化LDLになると、本当の悪玉になって血管内部に集まり、動脈硬化を引き起こします。この酸化をオリーブオイルに含まれているポリフェノール(オレウロペイン、ヒドロキシチロソールなど)が予防するということが認められたのです。
■大腸がんの手術後に推奨してきた
もともとオリーブオイルには便秘解消効果があるとして、ヨーロッパでは古くから用いられてきました。
オリーブオイルに豊富に含まれているオレイン酸は、短期間に比較的多くとった場合(1回につき約15ml程度)、消化管で吸収されにくいため、小腸内に長くとどまります。とどまったオレイン酸が小腸を刺激したり、大腸内のすべりをよくすることで、便通を促すと考えられているのです。
また、オリーブオイルには、大腸がんの予防効果があります。実際に、オリーブオイルの摂取量が多い南イタリアやスペインなどの地中海沿岸地域では、大腸がんにかかる人が少ないことが指摘されています。
私のクリニックでは、大腸がんの手術をしたことがある患者さんに、必ずオリーブの果実からとれた精製していないオイルであるエキストラバージン・オリーブオイルの摂取をすすめています。
そんな患者さん150人ほどのデータですが、これまで大腸がんが再発したのは1人だけで、大腸がんで亡くなった方はいません。
オリーブオイルには主成分のオレイン酸以外にも、ポリフェノール、ビタミンE、葉緑素といった抗酸化物質が豊富に含まれています。
■一日大さじ2杯以内に
なかでも、オレオカンタールというポリフェノールは、エキストラバージン・オリーブオイルにだけ含まれています。
このオレオカンタールには、強い抗炎症作用があることがわかっています。つまり、エキストラバージン・オリーブオイルは、腸や体の老化防止・健康維持に欠かせない抗酸化作用・抗炎症作用という二つの大きな働きが期待できるのです。
近年、大腸に原因不明の炎症が起こる潰瘍(かいよう)性大腸炎の患者さんが増えていますが、この潰瘍性大腸炎に対してエキストラバージン・オリーブオイルのポリフェノールの一種であるオレウロペインが有効であることが判明しています。
ほかにも、アルツハイマー病に対する効果が期待できるなど、オリーブオイルのいろいろな有効性が明らかになってきています。
ただし、オリーブオイルは油の一種ですので、とり過ぎはよくありません。
厚生労働省は、一日に必要なエネルギーの20~30%を脂質からとるのがよいとしています。一日2000kcalをとるとして約50g。ほかの食品から脂質をどの程度とるかにもよりますが、一日30g(大さじ2杯弱)以内なら問題ないと思われます。
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松生 恒夫(まついけ・つねお)
松生クリニック院長
1955年生まれ。
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(東京慈恵会医科大学客員教授 森 豊、松生クリニック院長 松生 恒夫)

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