※本稿は、森豊、松生恒夫『血糖値は「腸」で下がる』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■野菜ファーストの食べ方で血糖変動が30%も減少
食事のとり方として、最近では食べる順番が大事であることが広く知られるようになりました。最初に野菜を食べて、次いで主食(炭水化物)という食べ方です。
ダイエットだけでなく、この食べ方は血糖値が高い糖尿病予備群や糖尿病の人にこそ効果的な食べ方です。
京都女子大学などの研究グループの実験によると、野菜→主食の順で食べると、主食→野菜の順で食べたときと比べて食後の血糖変動が30%も減少したことがわかりました。
血糖変動が大きいと心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中)の発症率が高くなり、認知機能が低下することも指摘されています。
また、血糖変動だけでなく、食事前後のインスリンの測定では、食後の血中インスリン値が30%抑制されたそうです。つまり、インスリンの節約になるわけです。元来、インスリンの分泌量が少ない日本人にとっては、うれしい結果です。
さらにインスリンの過剰分泌はがん細胞の増殖やアルツハイマー病を促進することもわかっているので、それらの予防効果も期待できます。
■空腹で糖質主体の炭水化物で血糖値爆上がり
なぜ、野菜→主食の順番で食べると血糖上昇が抑えられるかというと、野菜に含まれる、主に水溶性食物繊維が糖質の吸収を遅らせるからだと考えられています。
野菜を先に食べることで胃が膨らんで満腹感が得られ、少量の主食でも満足できるという効果もあります。ぜひ、試してみてください。
逆に空腹状態で糖質主体の炭水化物から食べた場合は、血糖値は一気に上昇し、インスリンが必要以上に分泌されてしまいます。これによって糖分を脂肪として蓄積することに拍車がかかります。
さらに過剰なインスリン分泌で今度は血糖値が急激に下がり、その変動がジェットコースター状態になります。この急激な変化は食欲の増進にもつながり、食欲増進→血糖値乱高下→食欲増進という悪循環をも招きます。
図表1は、野菜と炭水化物の食べる順番で血糖値の変動にどう影響するかを、健常人と2型糖尿病患者で調べたものです。2型糖尿病の患者さんのほうが、血糖値の上がり幅が大きく、食べる順番を野菜→炭水化物にすることの効果が高いことがわかります。
■最善は野菜と主食の間にこれを食べる
これまで紹介した野菜→主食の食べ順ですが、近年の研究で、野菜と主食の間にたんぱく質を摂取することで、より効果が高くなることがわかってきました。
野菜の次にたんぱく質である魚や肉を摂取すると、インスリンの分泌を促すホルモン「インクレチン」が腸で分泌され、インスリン分泌をいち早く促すからです。
では、たんぱく質の代表である肉と魚では、どちらを意識してとったほうがいいのでしょうか。
図表2は、2型糖尿病患者を対象に、肉→米飯、魚→米飯の順で食べることで、食後血糖値がどう変化するかを調べたものです。
しかし、長期的に見ると、肉に多く含まれる脂質をとり過ぎると結果的には糖尿病を悪化させる可能性があります。
魚の脂質は糖尿病の合併症である動脈硬化を防ぐ効果があります。その違いは肉の脂質には飽和脂肪酸が多いのに対して、魚の脂質はDHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸(オメガ3系脂肪酸)が多い点です。
もちろん、エネルギー源となる飽和脂肪酸も必要ですが、それは日常の食事の中で自然にとれていることが多いので、どちらを意識したほうがいいかといえば断然、魚です。
■血糖値を上げない究極の日本の伝統の料理
ところで、インスリンの分泌を促す「野菜→魚→ご飯」という食べ順は、和食の会席料理と通じるものがあります。
インスリン分泌予備能が低く、インスリン分泌も遅れる傾向がある日本人にとっては、とても理にかなった食事形式です。先人の慧眼(けいがん)に驚きすら覚えます。
しかも会席料理は一品食べ終えてから、次の料理が運ばれ、その間の時間もあり、じっくりと時間をかけていただきます。
ゆっくり食べると満腹感を得やすく、食欲をコントロールし、過食を抑えやすくなります。実際、通常の食事がゆっくりな人は早い人に比べ、肥満になりにくい傾向があります。
会席料理は血糖値を上げない、理想的な食事スタイル。
とはいえ、残念ながら、現代の日本人、とくにビジネスパーソンはじっくりと食事をする時間もないのが実情です。
外で食べることが多い昼食はともかく、せめて家庭ではゆっくり、よく噛んで食べる習慣を身につけたいもの。もちろん、食べ順は「野菜→魚(肉)→主食」です。
ある実験によると、野菜、たんぱく質、炭水化物をそれぞれ5分以上かけて食べると効果的だそうです。トータルで15分。家庭でも十分可能な時間です。
■いくら栄養豊富でも夜の果物は絶対にタブー
ビッグミールになりやすく、血糖値も上昇したままになりやすい夕食では、とくに野菜を意識して最初にとったほうがいいことは間違いありません。ただし果物は、野菜と同じようにビタミンや食物繊維がとれますが、血糖コントロールが悪い人は夕食時にとってはいけません。
果物には、ビタミンや食物繊維だけでなく、各種ミネラルやポリフェノールなど、健康維持に効果がある成分が豊富に含まれています。
近年の研究では、野菜と果物を積極的に食べていると、胃がんや肺がんなどの発症リスクを低下させたり、認知機能の低下、動脈硬化などを予防したりする効果も明らかになっています。
厚生労働省・農林水産省作成の「食事バランスガイド」では、一日に果物200g(みかん換算で中サイズ2個分)摂取することが目標とされています。ところが現状、日本人の60%以上の人が不足しているそうで、積極的に取り入れたい食物ではあります。
ただし、果物は主に果糖が豊富に含まれています。果糖は体内に取り込まれると肝臓で10~20%がブドウ糖に変換され、残りは果糖として血中を回ります。そのため、血糖値の上昇は同じ糖類のでんぷんの20%程度に過ぎません。
しかし、血中のインスリンが不足していると、果糖から変換されるブドウ糖の量が増加し、血糖値を上げてしまいます。
■朝食後、昼食後に適量がベスト
また、果糖は肝臓で中性脂肪に変換されるため、太りやすく、インスリン抵抗性を増強させます。
さらに果物によっては血糖値上昇に直結するブドウ糖やショ糖(砂糖)も多く含んでいます。ブドウ糖はブドウ、サクランボ、梨、キウイなどに、ショ糖は柿やバナナ、マンゴー、桃、パイナップルなどに多く含まれています。
一般的には果物は体によいイメージなので、通院する糖尿病患者さんの中には、白米やパンといった主食の代わりとして果物をとっている、とおっしゃる人がよくいます。
しかし、インスリンが不足している状態で果物を多く摂取すると、でんぷん以上に血糖値を上昇させてしまいます。
もちろん、体によい成分を含むので、図表4を参考に適量をとりましょう。
また、果物をとるタイミングは朝食後、昼食後がベストです。
夕食後は血糖値を上げてしまうので厳禁です。
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松生 恒夫(まついけ・つねお)
松生クリニック院長
1955年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業後、同大学第三病院、松島病院大腸肛門病センターなどを経て開業。医学博士。便秘外来を設け、5万件以上の大腸内視鏡検査をおこなってきた第一人者。著書に『血糖値は「腸」で下がる』(青春新書インテリジェンス)、『「腸寿」で老いを防ぐ』(平凡社新書)など多数。
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(東京慈恵会医科大学客員教授 森 豊、松生クリニック院長 松生 恒夫)

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