※本稿は、市野瀬早織『東大合格者が身につけた 一生使える「読み方スキル」』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。
■超進学校で身に付ける「推理読み」とは
中高の進学校で、現代文の授業を担当していると、熱心に読解問題に取り組んでいる生徒から、このような質問を受けることは日常茶飯でした(マンガ①)。
この質問に対する答えは、やはりこれに尽きるのです。
「わからない単語や内容は、わかることで推測しよう」
これは、読解に限った話ではなく、日々の生活にもいえることですよね。
私たちは瞬間瞬間で「何を選択するのか」を「確実な答えがない」中で、自己判断して行動していき、その結果を受け取っています。読解のときにあなたに起こっている「ここがよくわからない……」という現象も、まったく同じ論理で成り立っているのです。
わからなければ、わかるところをつないで、〈おそらくこういうことを言おうとしているのだろう〉と予測を立てながら読み進めていく。
こうする中で、じつはまた「新しい光」が見えてくるものなのです。
あなたもよくご存じだと思いますが、文章にはメッセージがあります。
たとえば『アフターコロナで、会社を立てなおすために大事な20のこと』という本があったとします。
その場合、この1冊で著者が伝えたいのは「アフターコロナでの会社の業績の上げ方」です。
■「全てを理解しようとする」のはNG
読者が確認するのは、この20個の方法です。
それさえ理解できれば、「この一文の意味がわからない」「なんか難しい専門用語が出てきた……」という問題は、もはや問題ではなくなるのではないでしょうか。
自分の未来に役立つ何かを得ることができれば、文章を読む目的は達成したようなもの。
ですから、基本的には書き手のいちばん伝えたいメッセージさえ理解できればOKなのです。
細かな言葉の意味を調べることを読解の醍醐味にしている人は、それ自体が大きな目的ですよね。
その場合、そもそも「難しい文章のよくわからない箇所」が、かえって読解の楽しみを生み出しているなんていうこともあるかもしれませんが。
では、ここで最もお伝えしたい読解スキル「意味がわからないまま『推理読み』する力」とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
簡単にいえば、「理解できるパーツだけでパズル全体を完成させる」イメージです。
これは年齢の低いお子さんであっても、早くから身につけているスキルですよね。
たとえば、「顔パズル」があるとします。
3歳くらいになれば、「ここに耳があるってことは、ぽっかり空いているここには目と鼻が入るんじゃないかな?」と考えながら、パズルのピースを埋めていくことができます。
「推理読み」もまったく同じこと。
まわりの文章から推測して、わからない単語の意味や内容に「当たり」をつけるのです。
パズル遊びが読解に置き換わっただけということですね。
■東大入試で「問われている力」
じつは、東京大学の現代文の入試問題を含め、国語の読解問題で問われている力も、まさに「推理読み」です。
そして、私たち大人も無意識に「推理読み」を体験済みだということです。
このノウハウを日常の読解にも活かしていくと、難しい文章でも、速く読み進めます。
そしてこれは、経験値を高めることで、どんどん要領を得るスキルです。
まずは「わからない箇所は飛ばして、先をどんどん読み進めていこう」という意識で読解に当たることをおすすめします。
そうはいっても、読み進めるうちに、理解できない箇所が多くなりすぎて、「何の本だったのかわからなくなってしまった」なんていうことがあるかもしれません。
そんなときには、項目ごとでもかまわないので「だいたいこういう内容のことが書いてあった」とメモなどしてみるのも効果的です。
書かずに頭の中で確認するだけでも効果はあります。少しずつでも「この項目はこんなことを言いたいのかな」と自分なりの理解を確認していくのです。
そうすることで、その先を読み進めるときにも「私の解釈は合っているのかな?」という視点をもつことができ、理解の確認・修正もしやすくなります。
■読解術はビジネスに応用できる
さて、冒頭の質問をしてきた生徒に、「わからないところは『推理読み』」の手法を伝えてどうなったと思いますか?
見事に「わからないことは当たり前」というマインドができあがったため、「理解できないこと」に執着しなくなりました。
その結果、わかるピースをつなげて、わからないところに入るピースを予測する習慣がついたのです。そして、「ここはこういうことだよね」と、理解できる箇所が浮き上がって見えるようになりました。
こうして、「文章がわからなくて不安」という気持ちがなくなり、現代文の文章問題にも抵抗感や苦手意識なく取り組むことができるようになったのです。
これは慌ただしい日々のなか、分刻みで読解せざるを得ないビジネスパーソンにおいても、応用していただけるスキルなのではないでしょうか。
このスキルにより、生徒たちは、文章を読むことががぜん楽しくなり、現代文のテストの点数もぐぐっと上がりました。大学入試では現代文の「読むスキル」が貢献し、見事合格を勝ち取ったというわけです。
読解も人生も「何を当たり前にするか」ということが、とても大事なのですね。
■「ガイド本3冊同時読み」を勧めるワケ
私が勤めていた中高一貫の進学校では、高校2年生が各自の関心に合わせた研究テーマを選び、研究論文を提出・発表することがカリキュラムの中に入っていました。
通常は大学生が卒業論文として書くようなことを、高校生が行うということです。
研究テーマによっては専門的な要素が強すぎて、高校生には難しい用語が出てくることもあります。
そのため、「そもそもこの言葉の意味は何?」と、一つひとつ言葉の意味を調べないと、「結局、何を言っている本なのかがわからない」ということも少なくありませんでした。
そこであがったのが冒頭の漫画にあるような質問です(マンガ②)。
「一つひとつの言葉や文章の意味を、がんばって理解しなきゃ……」と思って努力すればするほど、読書は楽しくなくなってしまうものです。
右脳の感情が「この本、読みにくいな……」と感じはじめたら、読書効率も悪くなり、当然その本から吸収できる知識なども薄くなります。
そんなときに役立つのが「ガイド本を3冊見つけて同時読みする」という読書法です。
この読書法のやり方はいたって簡単。
たとえば「地産地消」というテーマについて知りたい場合、これに関係する本を3種類程度集めてくるのです。
■「なんだ、そういうことか!」と理解が進む瞬間
1冊目の本を読んでわからなかったことでも、2冊目をチェックしてみると、同じような内容を違う表現で書いている場合があります。
そこで、急に「なんだ、そういうことか!」と理解が進む、なんていうのはよくあることです。あなたもそんな経験はありませんか?
そして、3冊目を読む中で、
「1冊目にも2冊目にも似たような内容が書いてあるな。ということは、いまの農家が『地産地消』をどう考えているかについての、大事なポイントなのかもしれない」
といった具合に、3通りの「ガイド本」を同時読みする視点に立つからこそ、情報が整理され、ひとつのテーマについての理解が深まるのです。
このときとても大事なのは、3冊のガイド本を選ぶとき、「自分の読書スキルのレベルに合わせる」ということです。
当然ですが、13歳が「おもしろい!」と思って読む内容や分量と、社会人が「おもしろい!」と思える内容や読む分量は違います。
そして年齢を問わずに話せば、「それまでにどのくらい読書をしてきたか」といったことや、現時点で読書が好きか/嫌いかなども違います。
それぞれの経験や嗜好により、読みやすい本は人それぞれなのです。
■自分の「読みたい」を基準にする
13歳だと挫折してしまう難解な本も、大人になってから読むと、これまでの体験と照らし合わせて興味深く読むことができるでしょう。
大学時代までの約18年間で得てきた漢字や語彙、読解力によって、すいすい読み進められるなんていうことは当然のことなのです。
生徒たちからは、よく「どんな本を選ぶといいですか?」という質問を受けていました。
そのたびに私は、「パラパラとその本をめくってみて、『読みたい』『おもしろそう』と思える本を選んでみてね」と答えていました。
これは、普段読む本を選ぶときも同じです。
冒頭の会話に出てきた、当時高校2年生の生徒は、私のアドバイスどおり「地産地消」に関する研究論文や書籍を数冊選びました。
その過程で、「そうだ、実際に体験もしてみよう!」と自分でも地産地消を体験することを思い立ったのです。
この実体験をもとに完成した論文は、公益財団法人図書館振興財団主催の「図書館を使った調べる学習コンクール」で全国1位に当たる「文部科学大臣賞」を受賞するに至りました。
■本の読むときに大切なのは「目的」
このことからも「自分にとって理解が進む読書」は、本人の行動への意欲も高めるのだなと実感することができたのです。
そして、最後にお伝えしたいかなり大事なポイントは、「ちょっと読んでわからなかったら、先に2冊目を読んでみる」ということです。
本の内容を「全部を理解しよう」とするのは無理な話。
そんな負荷のかかる読み方をすれば、途中で読むことすらやめてしまいたくなります。せっかく読みはじめた本も、ひとつも記憶に残らずに終わってしまうことになりかねません。
大切なのは読書の目的です。
目的に応じて、挫折しない読書の工夫をおすすめします。
趣味の読書なら「楽しむこと」が目的、お仕事や勉強のための読書なら「自分の考えをまとめるための読書」「新しいアイデアを生み出すための読書」「評価されるための読書」が目的となります。
そんなとき、1冊の本だけに頼らなくてもいいのです。
自分の心がときめく「ガイド本の3冊同時読み」が、あなたの目的達成のための貴重な相棒になってくれるでしょう。
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市野瀬 早織(いちのせ・さおり)
市野瀬教育研究所 所長
岡山県生まれ、神奈川県横浜市育ち。早稲田大学大学院教育学研究科国語教育専攻修了。教育学修士。2008年から2018年までの10年間、渋谷教育学園渋谷中学高等学校にて専任の国語科教諭として勤務。担当生徒の5人に1人を東京大学合格へ導く。第一子出産後の2018年4月より、Alecioの創業メンバー・執行役員として人材開発事業に携わり、同年7月に独立。2024年8月、The Rhythmを創業。親が自分自身と子どもの本心や才能を読み解くことで、子どもの問題解決力と自己実現力を育む教育プログラムを展開。2025年までに受講生は460人を超える。
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(市野瀬教育研究所 所長 市野瀬 早織)

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