※本稿は、須田慎一郎氏のYouTubeチャンネル「ただいま取材中!」の一部を再編集したものです。
■中国からの支給品をすべて捨てて帰った
5月14日、15日の2日間にわたって行われた米中首脳会談が終了した。アメリカの訪中団と、それに同行した記者団が帰国する際、驚くべき出来事が起きた。本件については海外のメディアを中心に報道されているが、この背景に何があるのかはあまり語られていない。米中首脳会談の意図を読み解くうえで非常に重要な出来事だったため、ご紹介したい。
何が起きたのかと言うと、中国側から支給された物品をすべて、飛行機のタラップの下に設けられた巨大なゴミ置き場のような場所に捨てて帰ったのである。
捨てられたものは、各種施設の立ち入り許可証、代表団のバッジ、アメリカの訪問団や記者団が自ら持ち込んだ使い捨ての携帯電話や端末など、一切合切であった。
アメリカの政府関係者から訪中団および記者団に対し、「中国で受け取ったものは、いかなるものでもエアフォースワン(大統領専用機)への機内持ち込みを禁止する」という厳命が下ったためだ。その結果、大量の物品が廃棄処分されたのである。
この出来事はまず、ニューヨーク・ポストのホワイトハウス担当記者のSNS(X)に投稿された。
これを受けて、アジア・ビジネス・ダイアリーやザ・インディアンエクスプレスなど、アジアの有力メディアが報道したことで、この一件は中国側にも広く知れ渡ることとなった。
■メディアの前で行われた政治パフォーマンス
これはいわゆる「デジタルロックダウン」であり、アメリカのサイバーセキュリティの観点からすれば、ごく当然の対応と言える。
支給品の中に極小の追跡チップや盗聴装置が混入しているのではないか、あるいは不正プログラム(マルウェア)が仕込まれているのではないか、と警戒したためである。それらがエアフォースワンに持ち込まれることで、既存の機器が感染したり、何らかのサイバー攻撃に遭ったりするリスクを遮断するために、このような措置が取られたのである。
ただ、驚くべきは、この措置が公然と行われたことである。そもそも、そうした物品をすべて廃棄してくるのは敵対国や非友好国に対しては通常の対応であるが、重要なのはそれが公の場で行われたという点である。通常であれば、裏で事前に集めて廃棄処分にするところを、広くマスコミに報道されることを前提として実行されたのである。
しかも、アメリカ側のやり方は徹底しており、ホテルのWi-Fi接続や、公共の場所でのUSBポートからの充電も一切禁止された。事前に安全性のチェックを受けた電源からしか充電できないという徹底ぶりであり、Wi-Fiへのアクセスも禁じられるなど、完全に通信が遮断された状況であった。
これは一体どういう意味を持つのか。この件が気になったため、徹底的に取材を行ったところ、意外な事実が分かってきた。
■6G時代を見据えた動き
2030年代に入ると、いよいよ通信規格が5Gから6Gへとシフトしていく。
これにより、いよいよ本格的なIoT(Internet of Things)の時代を迎える。この6G時代を見据え、第1次トランプ政権の頃からサイバーセキュリティのあり方について協議が行われ、同盟国間でも水面下で密かにすり合わせが進められてきた。
その結果として、アメリカが導き出した結論は次のようなものである。6G時代に突入すると、サイバー攻撃などのリスクが格段に高まる。それに対処すべく、中国を強く意識した形で、サイバー攻撃にどう対応していくかという基本方針が、すでに決定しているのである。
それは一体どういうことか。今後6Gの時代に突入すると、サイバー空間(デジタル空間)は2つの陣営に分かれることになる。最先端の技術を備えたグローバルなアメリカを中心とするネットワーク陣営と、技術的に遅れた中国を中心とするローカルなネットワーク陣営の2つに、世界は二分されていくだろう。アメリカは現在、そのような方向へ事態を進めようとしている。
ここで注目すべきは、これら両陣営に「互換性を持たせない」という点である。
■世界のサイバー空間は二分される
つまり、デジタルにおいて両陣営は完全に分断される。そのことをまざまざと見せつけたのが今回の出来事であった。
繰り返すが、2030年を迎えるとサイバー空間は分離し、世界各国はアメリカ陣営と中国陣営のどちらにつくのか「踏み絵」を踏まされるというのがアメリカの認識である。両陣営に同時に属することはできず、必ずどちらか一方を選ばなければならない。
そうしなければ、デジタル空間におけるサイバー上の安全は構築できないのである。インターネットは開発当初、グローバルで世界統一の通信規格になることが想定されていた。ところが、悪意のあるサイバー攻撃によって状況は一変した。さらに、AIが軍事利用されることが明らかな今、安全保障の観点から「両陣営が一体化している状態は非常に大きなリスクを招く」と判断された。そのため、両者を分離させ、相互に互換性を持たせないというのがアメリカの戦略となったのである。
こうした背景を踏まえれば、最先端の半導体を中国に提供しないという結論に至るのも当然である。そして、一般のユーザーではなく、世界各国の関係者や専門家に対してこの方針を強く認識させるために、今回の米中首脳会談が利用されたのだ。
■日米の「サイバーセキュリティ同盟」
日本がアメリカ陣営に加わることはすでに明らかだ。
実は第一次トランプ政権時代、日本はサイバーセキュリティの分野において、アメリカ側と相当緊密なすり合わせを行ってきた。6GやAIが非常に大きな影響力を持つであろう2030年を見据え、日米間でこの分野における強固な連携を目指し、すでに「サイバーセキュリティ同盟」が結ばれていたのである。
米中首脳会談が始まる2日前の5月12日、片山さつき大臣はスコット・ベッセント財務長官と会談を行った。この会談で、今後の安全保障の鍵を握るAIについて、三菱UFJや三井住友など、日本の三大メガバンクに提供する方針が決定した。このAIはGoogleやアップルといったアメリカのIT大手など約50の会社や組織と、イギリス政府にしか提供されてこなかった。ここに日本が加えられた。厳密には、アメリカ側からそうした提供の申し入れが行われたのである。
■AI「クロード・ミュトス」の脅威
このAIとは、4月7日、アメリカのAIベンチャーであるアンソロピック社が開発していることを発表した「クロード・ミュトス(Claude Mythos)」だ。電力や通信といった様々な重要インフラに対するサイバー攻撃を防ぐ目的で開発されたAIで、対象となるシステムが抱えるバグや弱点をいち早く発見する。
いち早くバグを発見し、それを塞ぐために使えば、これはポジティブな技術となる。
取材した専門家の中には、1月3日、アメリカ軍が電撃的にベネズエラへ侵攻し、マドゥロ大統領夫妻を拘束した件や、2月28日にイランの宗教指導者、ハメネイ師が爆殺された件に使われたという見方を示す人もいる。マドゥロ大統領夫妻が拘束された時にベネズエラの防空システムは完全にダウンしており、システムが骨抜きにされた状態でこの作戦が決行されたことは明らかになっている。
そこにクロード・ミュトスが使われていたかどうかは定かではないが、少なくとも同等のシステムが使われた可能性がある。ベネズエラにおいてもイランにおいても、中国製の防空システムが使用されていた。それがいとも簡単に突破され、さらには両国の公共インフラや重要インフラへのサイバー攻撃まで許してしまったのである。
いつ何時、中国も同じような状況に陥るかもしれないというリスクが、白日の下に晒されてしまったのだ。そうした点を考慮すると、今回の一件は中国に対して非常に大きなブラフ(脅し)になったと考えられる。
■民間企業も対応を迫られる
このAIの動向に関して、あるアメリカ政府関係者は私にこう語った。
「これから世界は、このAIの分野において二大陣営に分かれるだろう。一つは中国、そしてもう一つはもちろんアメリカである」と。
アメリカにおいて、「クロード・ミュトス」に代表される人工知能は、中国をはるかに凌駕するレベルに達している。
今後世界は、システム的に優位に立つアメリカ陣営の人工知能を選ぶのか、それとも中国陣営のものを選ぶのかという二者択一を迫られることになる。このアメリカ陣営の基軸となるのが、アメリカ、イギリス、そして日本である。
この流れは民間企業も無視できるものではない。第一次トランプ政権の時代から、中核を担う日本の主要企業はすでにその方向へシフトしている。
ただ一つ懸念されるのは、ある国内通信大手企業がDeepSeekに代表される中国製の人工知能(AI)を使用している点である。あえて具体名は挙げないが、2030年の6G時代を迎えるにあたり、こうした方針についていけない企業も日本国内に出てくるのではないだろうか。あと4年の間にどう対応していくかが問われている。
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須田 慎一郎(すだ・しんいちろう)
ジャーナリスト
1961年東京生まれ。日本大学経済学部を卒業後、金融専門紙、経済誌記者などを経てフリージャーナリストとなる。民主党、自民党、財務省、金融庁、日本銀行、メガバンク、法務検察、警察など政官財を網羅する豊富な人脈を駆使した取材活動を続けている。週刊誌、経済誌への寄稿の他、TV「サンデー!スクランブル」、「ワイド!スクランブル」、「たかじんのそこまで言って委員会」など、YouTubeチャンネル「別冊!ニューソク通信」「真相深入り! 虎ノ門ニュース」など、多方面に活躍。『ブラックマネー 「20兆円闇経済」が日本を蝕む』(新潮文庫)、『内需衰退 百貨店、総合スーパー、ファミレスが日本から消え去る日』(扶桑社)、『サラ金殲滅』(宝島社)など著書多数。
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(ジャーナリスト 須田 慎一郎)

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