[J2第38節モンテディオ山形4-0ジェフユナイテッド千葉、10日、NDソフトスタジアム山形]
J1昇格プレーオフ(PO)進出をかけた千葉との一戦に臨んだ山形は、前半2分にDF安部崇士が先制し、同27分にはFWディサロ燦(あきら)シルヴァーノがペナルティーキックで追加点を挙げ、同31分にMF土居聖真が追加点、後半35分にはMF坂本亘基がダメ押し弾を決めて、計4得点でクラブ新記録となるリーグ戦9連勝を挙げてJ1昇格POの切符をつかみ取った。
左足ゴラッソで快勝劇の口火を切る
負ければJ1復帰が潰える可能性があった緊張の一戦を安部のゴラッソで快勝劇の口火を切った。
試合開始早々の前半2分に味方ロングスローのこぼれ球を回収したMF小西雄大が右サイド深くから折り返すと、パスを受けたMFイサカ・ゼインがキープから安部へバックパスを送り、背番号5は左足一閃(いっせん)。
「(イサカは)シュートを打とうと思っていたけど、僕がしつこく呼んでいたので出してくれた。試合の入りだったので、まずはシュートを打とうと思って、中の状況も確認したうえで足を振ったらゴールすることができました。今シーズンはヘディングで多くチャンスメイクをしていました。足でのゴールは喜びづらさがあったんですけど、うれしい限りです」と照れ笑いを浮かべた。
今季山形に加入した安部はこれまでゴールを挙げられずにいたが、加入後待望の初得点はチームを勢いづける決勝ゴラッソだった。
攻めれば精度の高い左足で攻撃の起点を作り、守れば身体を張った守備で相手の攻撃をシャットアウト。前半24分に千葉DF松田陸が得点機会阻止によりレッドカードを受けて退場したものの、相手の攻撃は侮れなかった。
リーグ戦23ゴールで得点ランキングトップに立つFW小森飛絢(ひいろ)を筆頭に、第38節時点ではリーグ2位タイの総得点数を稼いだ攻撃力が大きな脅威だった。それでも安部を中心に、ディフェンス陣による隙のない守備で完封勝利を飾った。
安部は昨季リーグ戦10得点を挙げたFW藤本佳希と練習中にマッチアップをする中で、対人守備の極意を学んだという。
「藤本選手はJ2のなかでもトップのストライカーだと思う。
学びを得て成長を果たした背番号5は小森やFW田中和樹とJ2屈指の個人能力を有する千葉のアタッカーを抑えてみせた。
指揮官はメンタリティを絶賛
試合後の監督記者会見で報道陣から安部の評価を聞かれた渡邉晋(すすむ)監督。左足の技術を評価しつつも、指揮官は背番号5の真価を説いた。
「僕が彼に対して絶大な信頼を置いている部分はメンタリティです。前半戦アウェイの(ベガルタ)仙台(戦)でやったときに前半途中で(安部が)負傷したけど、交代枠を早い段階で使うことは良くないと思ったので、ハーフタイムまで彼は頑張った。
その後、復帰の過程でもう1週間早く、『何としてでも出たいから出場させてくれ、ベンチでもいいから置いてくれ』と直訴してきました。
それは止めましたけど、彼のチームを思う気持ち、そこから生まれるエネルギー、彼のメンタリティは素晴らしいものがある」と絶賛した。
指揮官が称賛した精神性の素晴らしさは、取材時に発する言葉にも表れていた。千葉の強力なアタッカーを抑えた理由に藤本を筆頭に『先輩の助け』があったと仲間に感謝する真摯(しんし)な姿勢が自身の成長につながり、絶対に負けてはいけない決戦で勝利の立役者となった。
サポーターと山形一丸で戦う
この日会場に1万9316人と今季クラブ最多観客数をスタジアムに集め、試合前にサポーターは巨大なコレオグラフィーを作って山形イレブンを鼓舞した。
さらに『PARK』などの心を熱くさせるチャントをゴール裏から熱唱し続け、試合が決するまで青白のサポーターたちはチームと共に戦った。
POに向けて「まずは(PO)初戦を勝たなきゃ上がれない。引き分けを考えず絶対に勝つ。サポーターの皆さんには、きょう以上に『もっと力がほしい』と思っています。きょうと同じではダメだと思うので、これは選手一人、一人も常々口にしていること。モンテディオに関わる以上、僕は全員に求めたいと思っています。ファン、サポーターの皆さんは僕たちと一緒で、体調をしっかり整えて、スタジアムに足を運んでもらって、声援と手拍子でパワーをいただけたらと思います」とこれまで以上の力強い応援を求めた。
強敵を打ち破ってクラブ新記録の9連勝と終盤戦に快進撃を見せた山形は、この勢いを持続させなければならない。来月1日(時間未定)にホーム・NDソフトスタジアム山形で開催されるPO準決勝5位ファジアーノ岡山戦、同月7日の決勝を連勝して『山形一丸』で10シーズンぶりのJ1復帰を果たしてみせる。
(取材・文 高橋アオ)