2026年7月15日、香港メディアの香港01は「過小評価されてきた戦略レベルの『黄金のガス』、中国はなぜヘリウムの輸出を禁止するのか?」と題する記事を掲載。中国商務部と税関総署が7月10日にヘリウムガスの一時輸出禁止を発表した背景について、中国の科学技術系セルフメディア「科工力量」の記事を引用して報じた。

記事はヘリウムについて、人工合成が不可能で、大気中に放出されると宇宙空間に逃散してしまう再生不可能な資源だと説明。天然ガス田から副産物として採取されるものの、大半のガス田ではヘリウム含有率が0.1%に満たず、商業採掘の基準とされる0.3~1%に達する高濃度ヘリウムガス田はごく少数に限られるとした。

また、ヘリウムの沸点はマイナス268.9度と自然界で最も液化しにくい気体の一つであり、大規模な精製・液化が可能な企業は世界的にも限られていると伝えた。

一方で、単に風船の充填材として使われる一般的な工業ガスと認識されがちなヘリウムが、半導体製造におけるリソグラフィーやエッチング、光ファイバー生産、MRI装置、ロケット燃料タンクの加圧システムなど先端産業に不可欠であると指摘。このため、世界のヘリウム需要は2035年に約3億2200万立方メートルと現在のほぼ倍に達するというテック系市場調査会社IDTechExの予測を示した。

記事は、米国地質調査局の2025年データによると、世界のヘリウム生産が米国(42.6%)、カタール(33.2%)、ロシア(9.5%)の3カ国に約85%が集中しているとした上で、現在供給面で危機を迎えているとした。

そして、今年3月に中東情勢の悪化でカタールのラス・ラファン工業都市にある生産施設が損傷してアジア向け輸出が半減し、復旧に3~5年かかる見込みであること、ロシアも今年4月にヘリウムの一時輸出規制を発動し、ユーラシア経済連合(EAEU)域外への輸出は2027年末まで特別審査が必要となったことを紹介した。

さらに米国についても、連邦ヘリウム備蓄の民営化により、供給逼迫時に在庫を放出して価格を安定させる市場調整機能が事実上失われたと指摘した。

記事は、中国が23年時点でヘリウム消費量2618万立方メートルのうち約85%を輸入に頼っており、主にカタールからの輸入が打撃を受けていると説明。国内にはオルドス盆地、四川盆地、タリム盆地などに22カ所の高濃度ヘリウムガス田が確認されており、近年はヘリウム抽出プロジェクトの建設が進んでいるものの、大規模・低コストの生産基盤は発展途上にあるとした。

その上で、今回の輸出禁止について、中国が大量のヘリウムを保有して対外的に影響力を行使するためではなく、世界的な供給逼迫の中で限られた国産ヘリウムを国内の半導体やAI、商業宇宙産業向けに確保するための「資源防衛」措置だと結論付けた。(編集・翻訳/川尻)

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