パークファクターについて語った山本キャスター
さまざまなデータが重宝されるアメリカの中でも最近、特に重視されているのが「パークファクター」という要素です。パークのファクター。
日本でも球場の大きさが微妙に違ったりするように、まったく同じ球場はひとつとしてありません。その結果、ホームランが出やすい、得点が生まれやすい......といった差が生まれます。
例えば、MLBだとコロラド・ロッキーズの本拠地クアーズ・フィールドは「ヒッターズパーク(打者有利の球場)」として知られています。この球場は標高約1600mの場所にあり、気圧が低く、空気抵抗が少ないためボールがよく飛びます。球団も公式に「海抜0mの球場より10%ほど飛距離が伸びる」と認めています。
私がMLBの番組に出演していた時は、スタッフの方から「ロッキーズの投手たちの防御率は、1点マイナスしてちょうどいいくらい」と教えてもらいました。球場も広く長打が出やすいこともあり、とにかく打者が有利なスタジアムなのです。
ただ、MLBもそれを黙認しているわけではありません。試合球の湿度を、湿気を含ませる設備(ヒュミドール)で管理することを全球団に義務づけました。最近ではどこの球場も同じ湿度になるように調整していますが、高地にある球場では、他の球場に比べて湿度を高くしているそうです。
日本の球場にもパークファクターはあります。
こちらの「野球を数字で見るブログ」さんの記事(https://baseball-stats.jp/park-factor/)によると、神宮球場のホームランのパークファクターは2で、最も数値が低い甲子園は0.35。つまり、約6倍の差があることがわかります。さらに得点のパークファクターも、神宮球場が1.12で甲子園が0.84と、神宮がいかに打者有利な球場であるかがわかります。

先日、家族とドライブに。早めに出て、野球が始まるまでに帰宅するのが定番です。
「神宮は狭く感じる」
そうおっしゃっていたのは、元ヤクルト監督の真中満さん。副音声のお仕事でご一緒した際に、パークファクターの話題になったんです。
現役時代は外野手としても日本一に貢献された真中さんですが、神宮球場はなぜか狭く感じたそうです。神宮球場は両翼が97.5m、甲子園は両翼95mと、むしろ神宮のほうが少し広いのに、なぜホームランの出やすさに差があるか。それについて真中さんは、甲子園に吹く浜風の影響はもちろん、実は神宮の建てられている向きによって、追い風になりやすい傾向があるのではないか、と分析されていました。
さらに、神宮球場は太陽の光が入ってくる方向も外野手にとって不利に働いていたような気がすること、グランドに微妙に傾斜があったともおっしゃっていました。
パークファクターは、球団の編成にも影響を与えるでしょう。神宮球場でホームランが出やすいということは、長距離打者を多く揃えたほうが勝利に近づきそうです。
一方の投手は、当たったら反発が大きい速球派よりも、スライダーなど変化球が得意な投手のほうが活躍しやすいのかもしれません。来季も現役を続行することを発表した石川雅規投手が記録を更新し続けているのも、そんな要素が関わっているのかも。
私が球場で選手に送る声援もパークファクターになるかもしれませんし、たくさんビールを飲んだら、設備がより充実して選手がさらに活躍できる可能性も......。そんなことを思いながら、今後も球場で選手たちを応援しようと思います。
それでは、また来週。

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作