◆JERAセ・リーグ 中日5―7阪神(4日・バンテリンドーム)

 一瞬の静寂。その後、普段より2テンポ遅く歓声が響いた。

初回2死一塁、阪神・佐藤輝は、涌井の低め変化球に対応。最後は右手一本で捉えた打球は、右翼ポール際へ。超低空飛行の弾丸ライナーで、スタンドインだ。36号2ラン。「初回に先制できて良かった」。4番だからこその規格外の一撃に、どよめきも起きた。

 これでバンテリンドームで今季12戦7発。敵地にもかかわらず、上林、ボスラー(ともに中日)に並んで同球場の2025年本塁打数で1位タイに浮上した。さらに05年の金本を超え、同球場のシーズン本塁打で球団新記録を樹立。今季の進化を証明するように、広いバンテリンDで本塁打を量産している。本塁打、打点でリーグトップ独走の長距離砲が、今季最後の名古屋に強烈な置き土産を残した。

 主砲の一発を手始めにチームは10安打7得点。

今季初のブルペンデーは6回まで無失点と快勝ムードが一転、終盤に2点差まで迫られた。藤川監督は「修行ですね。強い選手、弱い選手、気が抜ける選手、気持ちが入り続ける選手も含めて、いい教訓にして」と厳しい表情。それでも、セ・リーグで唯一負け越していた中日との対戦成績を五分に戻し、マジックは2つ減って「4」。13カード連続負け越しなしで、12球団最速で5年連続のCS出場を決めた。

 5日からは広島3連戦を手始めに甲子園で6試合。最短Vは6日で、同8日に優勝を決めた90年の巨人を抜き、2リーグ制後の史上最速Vも現実味を帯びてきた。「ここから毎日大事なゲームが続く。今まで簡単に勝っているゲームはない」と指揮官。佐藤輝は「変わらずに一戦一戦、頑張ります」と冷静に言葉を連ねた。3、4月を貯金3でスタートし、一度も月間負け越しはなく、突っ走ってきたVロード。あすにも甲子園で藤川監督が宙を舞う。

(直川 響)

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