◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 あの方との出会いがなければ、今の自分はない―。読者の皆さんの中にも、人生におけるかけがえのない「恩人」がいると思う。

私も小学3年時の担任の先生、中学3年時の野球教室の指導者、大学時代の野球部の先輩…。何人かいる。

 今季限りでの現役引退を発表した中日・中田翔内野手(36)に聞けば、母校・大阪桐蔭の西谷浩一監督(55)の名前が出てくる。まだダイヤの原石だった中学3年時。実は、ずっと他の私立強豪校に入学するつもりだったという。そんな中で、指揮官が毎週のように大阪から広島市内の自身の中学校を訪れ、超熱心に誘ってくれた。「最初は大阪桐蔭を知らなかった。『大阪』ってついているから、大阪にある高校なんだとは思ったけど」。熱意に心を打たれ、最終的に進学先を変えた。

 高校入学前から「プロになると思っていた」と振り返る中田。後にプロ入りする2学年上のエース・辻内氏(元巨人)、主砲・平田氏(現中日2軍外野守備走塁コーチ)の存在が、成長を加速させた。「投げる方も打つ方も目標がいたから。

それは大きかったね」。右肘の故障で投手でプロの夢を諦めた時は、西谷監督に「打撃でプロを目指せるやろ!」と背中を押してもらった。「あれがなかったら野球をやめていたかもしれない」と感謝は尽きない。

 グラウンド外でも食事に行ったり、買い物に行ったり、中田家で飼っている爬虫(はちゅう)類のエサ用に1時間以上も一緒に虫を捕りに行ったり…。私にとって、本気で一挙手一投足を追いかけた特別な人だった。優しく厳しく、記者として育ててくれた恩人だ。(阪神担当・中野 雄太)

 ◆中野 雄太(なかの・ゆうた)2022年入社 小学3年から大学4年まで野球一筋。同志社大時代は巨人・小林と野球部寮で同部屋。23年は巨人担当、24年から阪神。

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