◆米大リーグ オリオールズ2x―1ドジャース(5日、米メリーランド州ボルティモア=オリオールパーク)
ドジャース・大谷翔平投手(31)が5日(日本時間6日)、登板回避から2日後の“漢(おとこ)気登板”で熱投した。敵地・オリオールズ戦に「1番・投手兼DH」で先発出場。
異例のスタンディングオベーションに大谷が包まれた。4回2死。三塁に走者を残して降板したが、敵地でも見る者全てを魅了していた。気温30度に迫り、湿気もあったベーブ・ルース生誕の地、ボルティモアで汗だくになりながら気迫を込め続け「最後はちょっと力入れて投げましたけど。(風邪は)もう治り際だったので」と振り返った。
始まりは試合開始の約5時間前。午後2時頃にプライアー投手コーチから登板を打診され「行けます」と快諾した。ロバーツ監督によると、先発予定だったグラスノーがこの日の午後になって背中の張りを訴えたことで登板回避。体調不良で3日(同4日)の登板を取りやめ、8日(同9日)に投げる予定だった大谷に白羽の矢が立った。
初回から全ての回で100マイル(約160・9キロ)以上を計測。直球は22球のうち11球が100マイルを超えていた。4回は無死三塁とピンチを招くと、走者ありでもノーワインドアップにしてギアチェンジ。5番カウザーは100・9マイル(約162・4キロ)で空振り三振。6番リベラはこの日最速の101・5マイル(約163・3キロ)などで追い込み、最後はスイーパーで空振り三振に斬った。直球の平均球速99・7マイル(約160・5キロ)は今季最速だった。
しかし、本人はイニング途中でマウンドから降りたことを悔やんだ。予定の60球をオーバーし、70球に達したためだが「できる限り長い回を投げたいと思っていた。相手もいいアプローチで空振りが取れなかったり、球数がかさんで4回を投げ切れなかった」。スライドではなく前倒し。登板前のルーチンを消化できない難しい条件にも「できなかった時にはそれでやるしかない。僕が体調が悪くて登板できなかった時はシーハンが投げていい仕事をしてくれた」と言い訳にすることはなかった。
打っては3打数無安打1四球に終わったが、「急な登板にもかかわらず、素晴らしかった」と指揮官は大谷を絶賛。「彼はチームを助けたいと思っていて、本当に尊敬している」と感謝した。4連敗でも、試合後のシャワールームからは大谷特有の笑い声が響いた。どんな時でも、視線は前を向いている。(中村 晃大)