◆JERA セ・リーグ 中日4―5巨人(6日・バンテリンドーム)

 巨人・坂本勇人内野手(36)が“あと1人”から起死回生の同点打を放ち、リーグ連覇消滅の崖っぷちで意地を見せた。今季無敗の中日守護神・松山に3―4の9回2死走者なしから3連打で満塁とすると、代打で中前安打。

続く吉川尚輝内野手(30)が適時内野安打で試合を決めた。9回2死からの5連打逆転劇は、1950年の2リーグ制後、球団初だった。6番手の田中瑛が移籍後初勝利。同じ日に同じ球場でプロ初安打を放ってからちょうど18年、背番号6が衰えぬ輝きを放った。

 右拳を勢いよく突き上げる。一塁ベース上、三塁側ベンチへ視線を送った坂本が笑った。9回2死満塁から同点の中前適時打。「良かったです。打つしかないので思い切って振りにいくことだけ考えていました」。追い込まれた状況からチームに勇気を与える一打で、続く吉川の決勝打への道をつないだ。

 閉ざされかけた扉をこじ開けた。1点を追う9回2死から3連打で満塁となり、代打で登場。

カウント2―1から松山の投じた外角低め155キロ直球に反応。最後は左手一本で中前に運んだ。両リーグトップの39セーブを挙げ、今季1度もセーブ機会で失敗がなかった守護神を攻略した。「セ・リーグでも一番いいストッパーだと思うので、そういうピッチャーから打てて良かったです」。この日はプロ1年目の2007年9月6日に決勝打となるプロ初安打を放ってからちょうど18年。2446本目のヒットは、同じ相手、同じ球場、2死満塁からの中前適時打までシンクロした。

 勝負どころで力を発揮するために変わらぬ姿がある。8月12日の中日戦(東京D)で先発して以降はスタメン出場はなく、9試合の出場にとどまる。ここ一番での代打であるがゆえに出場機会も限られるが、バットを振る量は減らさない。時には東京Dのベンチ裏にある投手の球速や変化量などを再現できる映像付きの打撃練習用マシン「トラジェクトアーク」を使用して感覚を養う。運動量を落とさないために、遊撃でノックを受けることもある。出番が減っても「ああいうチャンスだったりそういう場面で出されているので」と準備は怠らない。

阿部監督は「さすがの一言ですよね。試合もなかなか打席もあげられないけど」とうなった。

 復活を信じる声に自らを奮い立たせてきた。打撃不振でファーム調整中だった5月21日のG球場。自身の登場曲であるGReeeeNの「キセキ」が流れる中で、小林と1時間以上黙々とバットを振った。打ち終わるとファンから「絶対復活待ってます」「また1軍で打つって信じてます」と声が飛ぶ。熱い声援に「頑張ります」と再起を期した。苦しい時間も糧に、リーグ最終盤で輝きを放った。

 もし敗れて、阪神が勝てばリーグ連覇が完全に消滅する土俵際の一戦を制して連敗を止めた。最大4点差を逆転して3位DeNAに1・5差。試合前のミーティングで「ここまできたら気持ち」とナインを鼓舞した阿部監督は「そういう力を持ってるって僕は信じてますし。だからこそ去年優勝できた。

厳しいですけど、諦めることなくみんな最後までやってくれてる」と力を込めた。坂本は「明日につながると思うしね、まず明日勝ちたい」と誓った。劇的な逆転勝ちから連勝街道へと進んでいく。(宮内 孝太)

 ◆坂本のプロ初安打 プロ1年目の2007年9月6日・中日戦(ナゴヤD)。1―1の延長12回2死満塁で代打で登場。高橋から中前へ2点適時打を放ってプロ初安打初打点をマークし「落ちるかな、あっ、落ちちゃったという感じ。最高です」。通算3打席目での初安打が決勝打となった。

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