◆秋季高校野球石川県大会 ▽2回戦 金沢龍谷7―5輪島(14日・弁慶)

 部員9人で挑んだ金沢龍谷は、7―5で輪島に逆転勝利し、初戦突破を決めた。元金沢の監督として春4回、夏7回の甲子園出場を誇る浅井純哉監督(68)が8月1日に就任し、新チームで初勝利を飾った。

9回は二死満塁のピンチも迎えたが、最後はエース左腕、赤羽駿人(2年)が気迫の投球で右飛に仕留めてゲームセット。指導歴も長い浅井監督だが「今まで9人で戦ったことはないです。苦しいこともありましたが、40日間で一つの答えが出たのかなと思います」と感無量の表情を浮かべた。

 どん底からの再出発だった。昨秋は指導者の不祥事が発覚し、今春の新入部員は1人のみ。先の見えない絶望的な状況に、山田晟羅主将(2年)は「どうしたらいいのか、わからなかった。そもそも、試合に出場できるのかも、わからなかった」と振り返る。混乱の中、火中の栗を拾ったのが、浅井監督だった。「環境は整っているのに、この子たちは野球以外でも苦しい。外から見ていたが、大変な秋を迎えるだろうなと。金沢高校に勤めていたので、すぐに返事は出来ないと言ったのですが、少しでもお手伝いが出ればと言う気持ちになって」と熟慮の末に監督就任を決断した。

 2年生8人、1年生1人の小所帯で新チームをスタートしたが、この夏に消化できた練習試合は5試合のみ。

練習の準備や片付けにも多くの時間がかかった。9人しかいないため、ポジションや打順も試行錯誤。練習試合の結果も1勝4敗と、決して順調ではなかったが、のびのびとした雰囲気で浅井監督はいいプレー、悪いプレーにもていねいに声を掛け続けた。「チームの雰囲気も変わり、全員が勝利という目標に向かっているのを感じました」と山田主将。練習には3年生も参加してノックを打ち、準備、片付けも手伝って下級生を支えた。引退した3年生も一緒に指導した浅井監督は「本当に素直だし、教えてくれと言ってくる。私と話しているとメモも取っています」と、その意欲に驚いた。

 この日の試合でも、3年生1人が記録員を務め、2人は補助員として飲料水や攻撃の準備、球拾いなどでバックアップ。スタンドからも3年生全員がそろって大声援を送った。その声に応えて選手たちも奮起。エース、赤羽と左腕、田島來門一塁手(2年)が交互にマウンドに上がってピンチをしのげば、打線もつながって14安打と爆発。9回1死では4番・山田の左越え本塁打も飛び出し、部員全員で勝利をつかみ取った。

指揮官は「覚悟の上でユニフォームを着たが、外から来て初めてみんなの本心を知ることが出来ました」と振り返った。

 次戦は浅井監督の古巣でもあるシード校の金沢だ。「自分たちの持っているものをどれだけ出せるか楽しみ。やるからには、なんとか突破口を開いて欲しい」と指揮官。野球が出来る喜びをかみしめながら、チーム一丸となって強敵撃破を目指す。(中田 康博)

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