◆大相撲秋場所9日目(22日、両国国技館)
横綱・大の里が、西前頭4枚目・若元春を寄り倒して勝ち越した。横綱初優勝へ、1敗を守った。
館内の悲鳴が一瞬にして、大きなどよめきに変わった。もろ手突きで立った大の里は、バランスを崩して後ろ向きになる。背中を見せる大ピンチに、とっさにクルッと半回転。向き直ると右を差して寄りたて、豪快に寄り倒した。「背を向けた瞬間は危ないと思ったけれど、すぐにどっしりと腰を構えられた」。ヒヤリとはしたが、高い身体能力と馬力が詰まった6秒4の相撲で1敗を守った。
昨年初場所の新入幕から11場所連続での勝ち越しを決めた。昭和以降では横綱・照国と並ぶ3位タイの記録。給金直しについて問われても「目の前の一番一番に集中する」と表情は崩さなかった。
類いまれなる運動神経は、日体大時代から周囲を驚かせた。相撲以外にバスケットボールなど多くのスポーツを経験する中、特に陸上の授業では160キロを超える巨体で50メートルを7~8秒台で走り抜けたという。また、ハードルが好きで「ハードル間の歩幅が合っていたので、レポートを免除してもらった。体重の割には足は速いと思う」と話す。場所前には東京世界陸上を見る予定はなく、本場所に集中する意向を示していた。陸上選手の俊敏性とは比べものにならないが、アスリート能力の高さを土俵で証明した。
1敗を守り、全勝の豊昇龍と1差。優勝争いは「追う展開なので意識はしない。(優勝は)転がってくるものだと思って目の前の一番に集中する」と足元を見つめる。4日目に伯桜鵬に敗れたことを反省しつつ「前半戦の負けからしっかり立て直せている」と手応え。
(山田 豊)