◆JERA セ・リーグ DeNA8―9巨人(27日・横浜)

 無我夢中で佐々木は走り出していた。右前に打球が弾む。

あと1死でシーズン2位の可能性が消滅する土壇場で逆転の決勝2点打。「うれしかった。よく覚えてないです」。中山の生還を確認すると、佐々木は右拳を振り下ろしながら、歓喜の咆哮(ほうこう)。さらに愛称のジョージにちなんだ“おさるのポーズ”も決めた。

 食らいついた。1点差に迫って迎えた9回2死満塁。「前に飛ばすことだけしか考えてなかった」。1ストライクから伊勢の外角低め134キロフォークに反応。右手一本になりながらも拾い上げて、右前に運んだ。執念の技ありの一打で、9回に5得点を奪う劇的な逆転勝利を締めくくった。

 指揮官の教えを胸にはい上がった。

8月27日の広島戦(マツダ)の試合前練習。調子を落としていたタイミングで阿部監督から熱血指導を受けた。ティー打撃では指揮官がトスを上げ、全体練習後は実演を交えてもらいながらマンツーマンで20分以上の打ち込み。「『力があるのに長打があんまり出てないのがもったいない』ということと、インコースの打ち方について話してもらった」。左肩に寝かせていたバットを立てた。折るようにしゃがんでいた膝も真っすぐにするなど、打撃フォームを大胆に変更。「変えることに怖さはなかった」。進化を求めて前向きに取り組んだ。

 9月1日に出場選手登録を抹消されてからはファームで教えを意識しながら、鍛錬。「言われたことを自分の中で落とし込んで、つくり上げてきた」。微修正を施し、なじませた。21日に1軍再昇格すると、この日、“慎打法”で阿部巨人を救うV打。

小学校時代に自分の部屋に阿部監督の記事を飾っていた佐々木が期待に応えた。阿部監督は「自信にしてほしい」とさらなる成長を願った。

 2位・DeNAとのゲーム差は2・5。2位奪取へ残り3戦3勝しか許されない崖っ縁の状況には変わりないが、大きな勢いが生まれる劇的勝利だ。「全試合勝ってCSを東京ドームでできるように貢献したい」。はい上がってきた佐々木がチームに価値ある勝利をもたらした。(宮内 孝太)

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