年金制度の見直しが追い風となり、高齢者の就業意欲は確実に高まっている。ただし、その受け皿となる企業側の準備は十分とは言い難い。

人手不足が深刻化する中で、労働市場のミスマッチは依然として解消されていない。

 株式会社マイスター60が2026年3月、シニアを雇用する企業の人事担当者500人を対象に実施した調査によると、在職老齢年金制度改正の内容を理解している企業の78.1%が、シニア雇用の拡大や勤務条件の見直しを検討していると回答した。一方で、制度を知らない企業では同様の回答は9.9%にとどまり、認知の差が対応の差として表れている。

 しかし、実際の雇用設計には遅れがみられる。60歳以上向けに週4日以下の短日数求人を出したことがない企業は52.2%にのぼった。これに対し、別調査では働く意欲のあるシニアの72.0%が週4日以下であれば無理なく働けると回答しており、働き方を巡る需要と供給の間に明確な隔たりがある。

 短日数求人が進まない理由として最も多かったのは、そもそも検討したことがないという回答で30.7%だった。制度面やコスト以前に、選択肢として想定されていない現状が浮かぶ。正社員との処遇差への懸念や制度未整備も挙がるが、発想段階で止まっている企業が少なくない。

 一方で、業務の分担による対応余地はある。従来1人で担っていた業務を複数人で分ける働き方について、63.8%の企業が実現可能と回答した。さらに、短日数勤務など柔軟な働き方を提供している企業では77.3%がシニア雇用の拡大に前向きであるのに対し、未提供企業では8.3%にとどまった。

 制度改正によって働き手は増える可能性があるが、雇用の枠組みが変わらなければ人材は活かしきれない。人材不足が叫ばれるなかで問われているのは、採用数ではなく働き方の設計そのものだ。企業側の発想転換が進むかどうかが、今後の労働市場を左右する。

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