ラグビー・リーグワン1部の埼玉で9季目を迎えるSH小山大輝は、レギュラーシーズンの第15節、静岡戦(18日、34〇24)でチーム公式戦100キャップを迎えた。2017年度、トップリーグ時代のパナソニック(現埼玉)に入団した31歳は「自分の好きなチームで100試合出られたということが、すごく嬉しい」と顎にはひげを生やし、頬を緩めた。

 クラブハウスのトレーニングルーム。視線を上げると、100キャップを達成した選手の記念タペストリーが、23枚掲げられている。フッカー堀江翔太氏やプロップ稲垣啓太、そして田中史朗氏、内田啓介氏と同じポジションSHの先輩も名を連ねる。「こう見たら、社員選手って全然いないですね」と語るのは、チーム関係者。小山は入社以来、パナソニックの空質空調社の社員として活動する。選手のプロ化が進む近年。生え抜きの社員選手で100キャップ到達は、2013年のFW若松大志氏らまでさかのぼるという。

 入団当時は、2015年W杯初戦で南アフリカを破る「ブライトンの奇跡」を演じた田中氏や、筑波大時代から桜のジャージーを着た内田氏がいた。「史さんとウッチーさんがいて、自分は2、3年目までは年に3試合くらいしか出られなかった」。北海道・芦別高からラグビーを始めた元野球少年は、才能を見出されて高校日本代表などに選出。大東大から進んだチームでは「悔しさもあった」と言うが「当時はラグビーの知識がなかった。ワイルドナイツのラグビーを理解する上で、いい準備期間になった」と振り返る。

大きな背中を追いながら、成長。徐々にチームの信頼を勝ち取り、日本代表でも24年7月のイタリア戦で初キャップを獲得した。

 当時のパナソニックには、芦別高の恩師らの助言もあって社員選手として入団。後にも先にも、プロへの道は選択肢になかったという。空質空調社では、総務部に所属。シーズン中はラグビーに専念するが、オフは各部署を回って研修などを行う。工場勤務や営業、街中での販売などにとどまらず、法務部での研修も経験がある。現役引退後、配属先で働くための準備の時間という。小山は「会社に戻りやすいように、いろいろな経験をさせてもらっている。会社とつながっている、社員の皆さんに応援してもらっていると実感できる」と、実感を込める。

 埼玉は今季、23歳の 李錦寿、24歳の萩原周、27歳の本堂杏虎がいずれも試合に出場している。第2節から足の肉離れで約2か月戦線離脱していた小山だが、意外にも「焦りはなかった」と言う。

「一番調子がいい人が、出るべき」。若手との競争も歓迎だ。「毎試合毎試合、いいプレーをしないと抜かれると思ってやってるので。そこでは、まだ負けないように必死に頑張ってます」と小山。もちろん必死。「自分としては怖いですけど(笑)」と、突き上げを刺激に日々自らを高める。

 「パナソニックスポーツ」に勤める社員仲間のWTB長田智希、そして同じく社員で後輩の萩原とは、よくコーヒーを飲みに行く。萩原は、ポジションを争う新進気鋭の後輩。だが小山は、自身の経験も踏まえてチームマンに徹する。「チャンスをもらった時というのが、一番危ないんです。いいプレーをしようと思うと、うまくいかなくて。2、3年目、試合に出してもらうと、いかなくていい所を突っ込んで行ったり。

自分も、そういうことがあったので」。オンフィールド、オフフィールド問わず、言葉と姿勢で伝えている。3人でカフェに行っても、各々が練習の動画を見るのに没頭することもあると、笑顔で明かす。

 リーグワン初代王者の埼玉。優勝からは、3季離れている。ここまでレギュラーシーズンは、14勝1敗で1位。選手の入れ替わりが激しい今季でも「ワイルドナイツのラグビー」への理解度で、常勝軍団の強さを保っている。「リーグ戦は、あと3試合。プレーオフに向けて、チームのスタンダードをもう1個、上げられるように頑張っていきたい」と小山。チームの核として、復権への1ピースとなる。(大谷 翔太)

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