◆第152回ケンタッキーダービー・G1(日本時間5月3日朝7時57分発走、米国チャーチルダウンズ競馬場・ダート2000メートル)

JRA海外馬券発売対象で、米3冠初戦の第152回ケンタッキーダービーに日本調教馬2頭が参戦する。UAEダービーの覇者ワンダーディーンを送り込む高柳大輔調教師=栗東=が、単独インタビューで歴史あるレースへの熱い思いを明かした。

(取材・構成 山本 武志)

 ずっと見つめ続けている。初挑戦から2年。高柳大輔調教師=栗東=がケンタッキーダービーへ戻ってくる。

 「芝で日本ダービーがあるように、日本にもダートで一応目標はあるんですけど、世界の方がレベルも注目度も高い。やはり、世界のダービーですよね。ダートで3歳馬の頂点に立てる。行きたい、そして勝ちたいレースだと思っています」

 口調は冷静だが、行動は熱い。厩舎でこのレースの予備登録を行ったのは14頭。日本馬全体で40頭しかいない中、圧倒的に最多の頭数をエントリーした。今年に限った話ではなく、最近では毎年だ。

 「結構すごい数を登録したってヤフーニュースに出ているのを見て、逆にみんなしていないんだと思ったぐらいですけどね(笑)。可能性を高めるためにはしないと、と思っています」

 今年はワンダーディーン(牡3歳、栗東・高柳大輔厩舎、父ディーマジェスティ)で挑戦する。

年頭にまだ1勝馬の身ながら海を渡り、サウジダービー4着後、ドバイのUAEダービーで勝利をつかみ、道を切り開いた。

 「距離は長い方がいいし、ドバイは本当に具合がよかった。サウジより馬に張りが出て、ひと回り大きく見せていました。レースは前が止まると思って、後ろのパイロマンサー(3着)を見ていたんですが、なかなか相手が止まらなくて…。(鞍上の)クリスチャン(デムーロ)がいい判断で(序盤から)出していってくれました」

 2年ぶりに味わう「スポーツの中で最も偉大な2分間」。テーオーパスワードと挑んだ2年前の記憶はよく覚えている。

 「パドックでは内にぎっちり人がいる、人の壁みたいな状態。初めての経験だからイレ込んではいました。人も馬も(レース前に)歓声の中で馬場を歩くんですけど、それも初めて。色々なことに気を遣ったからいっぱいいっぱいで、達成感はなかったですね。ただ、もっとアウェー感があるのかなと思ったけど、みんながケンタッキーダービーを応援しているという雰囲気ではありました」

 血をつなぎ、心を通わせた“チーム日本”で挑む。自ら手がけた母のワンダーシエンプロはワンダーアキュート産駒。

父は現3歳世代の血統登録頭数が44頭と少ないディーマジェスティ。血統的な派手さは全くないが、しっかりと育て上げた“叩き上げ”のエスコートを、今回は坂井瑠星騎手に託す。

 「お母さんはずば抜けた能力があったわけじゃないけど、本当に丈夫で素直で、嫌な性格を出さないような馬でしたね。(血統的な地味さは)パスワードの時の方が思っていました(笑い)。瑠星も経験しているし、言葉の壁がないのはやりやすい。前回もそういう壁がないように(カナダリーディング3度の騎手で現在は米国拠点に活躍する木村)和士にお願いしたので」

 刻一刻と近づいている決戦の時。海外転戦を続け、たくましさを増している愛馬への信頼を深めながら、再び海を渡る。

 「馬場適性は行ってみないと分からない。ただ、馬場よりも1コーナーまでの位置取りや流れが厳しいので、それに対応できるかですね。まずは無事に出走したい。そして、出るからにはチャンスなので、勝てるように、ここからしっかり仕上げていきたいと思います」

【取材後記】

 相馬眼に国境はない。高柳大師はここ数年、毎年必ずアメリカに足を運ぶ。

コーディネーターを介して、現地の様々な牧場を巡り、庭先で購入できる馬を探すためだ。その初年度に見つけたダイヤの原石が当時1歳だったテーオーエルビス。昨年末のカペラSを制した4歳牡馬は今回、ケンタッキーダービー当日のチャーチルダウンズS・G1(ダート1400メートル)に出走する。

 牧場では血統などの情報は一切ない。ただ、馬体に目を凝らすのみ。その中でひと目ぼれしたのがエルビスだった。「馬房から歩いて出てきた時から、しっかり歩いて、リズムも良かった。結構ガッチリした感じでした」と懐かしそうに振り返る。

 今回は大切な一戦になる。日本では短距離ダートの番組が少なく、ここで好走すれば今後の選択肢も大きく広がる。「気性のメリハリが利く馬なので、海外遠征にも対応できないかなと思っているんですよ。ここで結果を出せば、(米G1の)BCスプリントとかも考えられますしね」とトレーナー。

一期生の“里帰り”を本当に楽しみにしている。(山本 武志)

 ◆テーオーパスワードの24年ケンタッキーダービー 新馬、伏竜Sと連勝し、わずかキャリア3戦目での出走。日本からはフォーエバーヤングも出走し、注目を集めていた(結果は3着)。現地で活躍する木村和士とのコンビで道中は後方に下がったものの、大外から位置を押し上げると、最後までしぶとく脚を使う5着。JRAオッズでも13番人気の伏兵扱いだったが、存在感を示した。

 ◆ワンダーディーンの血統 母のワンダーシエンプロはすべてダートを走り、5歳3月の引退時は3勝クラスに在籍。その父ワンダーアキュートは中央で出走した直子が6世代でわずかに23頭しかいない。また、テーオーパスワードも母系は兄姉3頭が中央未勝利で、父コパノリッキーもまだ中央では重賞勝ち馬を出していない。

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