歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」(27日千秋楽)

 立役か女形か、それが問題だ。尾上左近が3代目辰之助を襲名し、その披露興行が團菊祭。

私の関心はその問題にある。新辰之助は3演目の披露狂言「寿曽我対面」で曽我五郎時致、「鬼一法眼三略巻・菊畑」は奴虎蔵実は源牛若丸、そして「助六由縁江戸桜」では福山のかつぎを演じ、全て立役を選んだ。

 五郎時致の最初の出。兄・十郎の8代目菊五郎の後ろから足音高く7歩で花道へ出た。父の仇、工藤祐経の7代目菊五郎が上手にいる。「合点だあ」と本舞台へ移る間、工藤から目を離さない。必死の怒りの顔付き。若々しく爽やかな五郎だ。工藤ににじり寄る5回の見得はグッと体を沈めて決まる力強さがある。なにせ立ち姿がいい。

 虎蔵はさらに新鮮で颯爽(さっそう)としていた。凜々(りり)しい牛若丸だ。

福山のかつぎはウドンが頭に乗った門兵衛を見て「ざまあみやがれ」と走り去る勢いが面白い。こう見てくると華があり色気がある姿が持ち味と言える。課題は声量。

 彼が高校1年、16歳の折、舞踊会の帰りに浅草で食事をした。「先行き女形もやってみたい」と言った。「鏡獅子」を踊ってみたいとも言った。憧れの祖父、初代辰之助が演じた「『オセロー』にも」と抱負を語り、ブタ丼、卵焼きをほおばってよく喋(しゃべ)っていた。翌年では将来、父・松緑の当たり役「荒川の佐吉」に挑戦するという意気込みだった。

 立役か女形か。2年前、「妹背山婦女庭訓」で坂東玉三郎から雛鳥を習い、玉三郎は女形の素養を見抜いたようだ。立役女形を兼ねる先輩に8代目菊五郎がいる。やんちゃ坊主だった辰之助はもう20歳。

立派な姿・形の芸があるのだから兼ねる役者を目指せばいい。

(演劇ジャーナリスト・大島 幸久)

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