自衛隊、お笑い芸人など異色の経歴を持つ俳優の福澤重文(じゅうぶん)が、公開中の映画「君のクイズ」(吉野耕平監督)でクイズプレイヤー役を好演し、50歳にしてブレイクの兆しを見せている。

 パーマヘアと愛嬌(あいきょう)のある丸顔がトレードマーク。

「君のクイズ」ではクイズプレイヤーの馬場役で「関西弁で大阪のおっちゃん的なキャラクター。大阪出身なので、ネイティブの関西弁を披露しています」。キャッチコピーは中村倫也演じる三島玲央の「クイズに人生をささげた男」、神木隆之介演じる本庄絆の「世界を頭の中に保存した男」に対し、勢いが武器の馬場は「なにわのクイズブルドーザー」だ。

 吉野監督からはムードメーカー的な役割を求められ、「ほかのクイズプレイヤーにヤジを飛ばしたり、率先して絡むようにしました」。クイズを題材にしたミステリーでありながら、登場人物の背景も丁寧に描かれ、VFXを駆使した映像美も魅力。「もちろん、クイズの面白さもあるけど、最終的には人間ドラマに仕上がっています」と力を込めた。

 幼少期から役者志望だったが、高校卒業後に自衛隊に入隊。「自衛隊員をやりながら『役者として役立つことはないかな』とずっと考えていました」。憧れの松田優作さん(1989年死去、享年40)のような俳優を目指し、休日は演技レッスンに通い、筋トレにも熱心に取り組んだ。役者の道に専念するため、半年で自衛隊を辞めてからは劇団「関西芸術座」に入団。19歳でNHKドラマ「ワイン殺人事件25歳の夏」で念願の俳優デビューを果たした。

 96年度後期のNHK連続テレビ小説「ふたりっこ」で朝ドラに初出演するなど、順調に役者の道を歩み始めたが、劇団の同期にお笑いに誘われて上京することに。

当時は爆笑問題、くりぃむしちゅー、ネプチューンらを輩出したフジテレビ系「ボキャブラ天国」が大人気だった。「ブレイク大臣」というコンビ名でお笑いの世界に飛び込んだが、3か月ほどで相方がメンタルの不調で失踪。コンビを解散し、しばらくイベントの司会など、ピン芸人として活動した。

 事務所の後輩だった「タイムマシーン3号」の山本浩司に触発され、人生を見つめ直した。「山本くんは研究熱心で時間があれば、お笑いライブに行っていた。そうじゃないと、お笑いの世界では生き残れないよな」と気付かされた。そして「本来、自分は役者をやりたかったんだ」と原点を思い出し、再び演劇の道を歩むようになった。

 テレ朝系特撮ドラマ「王様戦隊キングオージャー」で共演した吉満寛人、森岡豊と東映撮影所近くの大泉学園の居酒屋で連日、酒を酌み交わし意気投合。おじさん3人組の「G3ユニット」を結成した。「3人で楽しいことができたらと思っています。まずは舞台ですけど、3人で映像の仕事もやってみたい」と意欲を燃やしている。

 昨年3月の旗揚げ公演「おじさんの恋」(新宿サンモールスタジオ)はチケットが1時間半で完売する人気ぶり。

それを受け、6月17~28日に新宿シアタートップスで第2回公演「三人の父親」を上演する。脚本・演出はブラジリィー・アン・山田が手掛けるコメディーで「おじさんたちの苦悩と困惑を笑ってください」と呼びかけた。

 自衛隊出身で舞台、映画、ドラマ、お笑い、司会と経験豊富なマルチプレーヤー。少林寺拳法は黒帯の腕前で、特技は自衛隊時代に腕を磨いた射撃だ。身体能力の高さが魅力で「動けるデブです」と自称する。近年は映画や舞台のプロデュースにも取り組み「いい年した、おっさんですが、やりがいのある仕事に呼んでもらえて、楽しいです。この年になって、やっとやりたいことができるようになってきましたね」と充実感を漂わせる。

 芸能生活は紆余(うよ)曲折と試行錯誤でドラマチックな30年。「悩むことがあっても、役者をやめたいと思ったことは一度もない」。衰えることのない意欲が原動力だ。「君のクイズ」で注目を浴びても浮足立つことはない。今後もマイペースに大好きな役者の仕事を続けていく。

(有野 博幸)

 ◆福澤 重文(ふくざわ・じゅうぶん)1976年3月6日、大阪府生まれ。50歳。95年にNHK銀河小説「ワイン殺人事件25歳の夏」で俳優デビュー。主な出演作は96年度後期のNHK連続テレビ小説「ふたりっこ」、25年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」、現在放送中の読売テレビ系ドラマ「スモークブルーの雨のち晴れ」(関西ローカル)など。身長169センチ。血液型A。

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