日本のサッカー界は、これまで多くの海外出身監督を招き、成長してきた。日本代表でもオランダ出身のオフト氏に始まり、8人の外国籍の監督が指揮を執った。

外国出身の監督から、日本サッカーはどう見えるのか。昨季、J1柏を2位躍進へ導いたスペイン出身のリカルド・ロドリゲス監督がこのほどスポーツ報知の取材に応じ、日本人選手が持つ「規律性」と「献身性」が今回のW杯の鍵になると指摘。「W杯優勝も決して不可能ではない」と日本代表へ太鼓判を押した。(取材・構成=浅岡 諒祐)

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 Jリーグに足を踏み入れてから9年。ロドリゲス監督は技術面ではなく、日本人が持つ性格を強さの源だとして挙げる。

 「日本が(目標とする)W杯で優勝するために、大きな武器となるのが規律性と献身性。それは世界トップレベルで、差を見せつけられる一番の武器。その部分は日本代表以外に出来るチームはない」

 規律性はピッチ内外に現れる。ピッチ上では、各選手が自身の役割を確実に遂行し、個の強さではなく、組織として戦う部分が日本らしさであり、強みだという。

 「日本はポジショナルプレーの傾向が強い。オーガナイズされたポジションバランス、ポジション取りを重要視するチームが多い。各チーム、それぞれの武器を有効に使おうという考えは当然あるが、速い攻撃が特徴のチームでさえ、ボールを持つのが得意。

チームのために汗をかき、努力する部分も日本の方が(欧州より)上。欧州のサッカーを見ると、守備の規律性が崩れて、J1ではこんなにスペースを与えてくれないよ、という守備をするチームが多々ある」

 22年カタールW杯で日本は、ロドリゲス監督の母国スペインを撃破した。大番狂わせとして世界に衝撃を与えたが、指揮官は逆転負けを「想定内」と断言した。その要因に、スペイン代表の守備の規律性の欠如、日本人選手がJリーグで培ってきた戦い方を挙げた。

 「スペイン代表の文化、歴史を塗り替えた名監督のルイスアラゴネスは『スペインの大きな武器は選手のタレントの高さである。彼らが融合すれば素晴らしい攻撃的なチームができる』と語っていた。その一方で、守備の規律性は決して大きな武器ではなく、それが前回のW杯で弱点になった。代表でローブロックの守備を5―4―1で固めているチームに点を決めることは難しい。ただ、J1では試合終盤、守備を固めた相手から点を取る能力のある選手たち、チームが多々あるのを私は知っている。スペインが先制点を決めた時に守備を固めたのは、日本相手にはいいプランだとは思わなかった」

 規律を守り、組織的に物事を進める日本人の性格はピッチ外でも表れる。

 「日本はきっちりと、計画通りに、オーガナイズされた形で物事が進む。おととしは中国で指揮を執っていたが、なかなか物事が計画通りに進まず、ストレスの多い1年間だった。

もし、もう一度スペインか欧州で仕事をするとなると、もう一度向こうの文化に適応しなければいけない。その適応がうまく行かない可能性もあるくらい、ここでの仕事の進め方、価値観にとても良い居心地を感じている」

 ロドリゲス監督は、選手の立ち位置を重視する攻撃的なサッカーを志向する。戦術が複雑で、選手同士の連携でゴールに迫る。そのために必要なのはサッカーIQが高く、献身的な選手だ。自身のサッカー哲学に適した選手像が、まさに日本人選手だった。

 「私が求めるスタイルは全員が攻守にわたってチームのためにやらないと機能しない。1人でもその機能性を継続しない選手がいるとチームが崩壊する。(徳島の監督に就任した)17年から、ピッチに立つ日本人選手が増えれば増えるほど、試合結果がプラスになった。20年にJ1昇格を勝ち取ったが(外国人選手は)ジエゴとCB1人だけ。去年もジエゴしかいなかったし、ジエゴは日本が長いのでほぼ日本人。今年は1人もいない。昨季は日本人選手で固めたチームで優勝争いをし、日本人中心でもタイトル争いが出来るという証明にもなった」

 森保ジャパンは世界一を今大会の目標に掲げる。

ロドリゲス監督は日本代表の完成度の高さに太鼓判を押す。

 「今の代表は完成度の高い、穴のないチームになっている。W杯では、明確にチームを引っ張る、世界でも名だたるゴールハンターがいる代表もある。ただ、日本は得点を取ってくれるフォワード1人に委ねず、よりコレクティブなプレーによって攻撃をして点を決められるチーム。もちろん三笘(薫)選手、南野(拓実)選手ら、重要な選手がけがで不在だが、彼らが不在だからといって、日本代表の攻撃力が劇的に下がるわけではない」

 今大会で日本代表の守護神を務めるGK鈴木彩艶は、浦和監督時の教え子でもある。当時、18歳ながらリーグ戦で先発を任せることもあった鈴木彩の成長にも目を細める。

 「フィジカルコンディション、メンタリティーが強く、ハングリー精神もあった。チーム練習後の、ジムトレーニングも、彼自身が二部練をコーチに希望していた。18歳と若いのにもかかわらず、更衣室でも全体にゲキを飛ばしていた。スタメンで起用される場合も、起用されない場合も、彼の行動は変わらなかった。彩艶の才能はまだまだ成長の余白があるし、それも才能の1つ。成長をやめない謙虚な選手で、欧州で経験を積めば積むほどさらに質の高い選手に育つだろう」

 ロドリゲス監督は、日本は「世界のトップ10」に入ると言う。

その上で「W杯優勝も決して不可能ではない」とも力強く語った。

 「今回のW杯で大きなことを成し遂げるためにはメンタルの部分が重要。どんな相手にも勝てる可能性を秘めているのが今の日本代表で、選手たちがそれを信じ抜くことができれば、今回のW杯で大きなものを成し遂げることができる。日本のサッカーのレベルの高さを誰よりも私は信じているし、それを世界中のより多くの人々に証明するためにも、今回の日本代表がより高いところまで到達できることを願っている。決勝戦ではスペイン対日本が実現して、より良い代表が優勝するというファイナルを期待しましょう」

 ◆リカルド・ロドリゲス・スアレス 1974年4月3日、スペイン・オビエド出身。52歳。17歳で左膝十字靱帯(じんたい)を断裂し選手生活を断念すると、オビエド大学でスポーツ科学の博士号を取得。98年からオビエドで指導者生活を始める。U―17サウジアラビア代表、ジローナ、タイの3クラブの監督を歴任し、17年からJ2徳島の監督に就任。20年にはJ1昇格を達成。21年から22年までは浦和を率い、21年は天皇杯優勝、22年にはACL決勝進出に導く。24年は中国・武漢で監督を務め、25年から柏を指揮。

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