アマチュア野球界の指導者が持つ育成論、指導論に迫るインタビュー「野球導」。第5回はマルハン北日本カンパニー硬式野球部「GIVERS」の館山昌平監督(45)。

24年の創部時から掲げる目標は創部3年での全国4強、5年で全国制覇。NPB、BCリーグを経てアマチュア野球の最高峰の舞台へと足を踏み入れた館山監督に、社会人野球だからこそできる育成へのこだわりについて聞いた。(取材・構成=秋元 萌佳)

 昨年は参入初年度ながら公式戦で2勝。今年は都市対抗の東北地区2次予選で昨年本戦出場のTDKを破って4強入りするなど、着実に存在感を示している。

 「自分がチームの軸になるという気持ちが強く、本当に選手が成長してきている。自分を主張して、やらされたではなく、自覚や責任を持って自分で表現できる選手が多いです」

 現代は球速など数値が評価されることも多いが、館山監督が重視するのはデータを生かして自分が生きる場所を探すことだ。そのために個人面談も夏の時点で既に3回行ったという。

 「情報過多な時代で、スイングスピードは150キロ以上、投手においては変化量は何センチという数字が独り歩きしている。そうではなくて、数値を見た上で自分の表現できるストライクの取り方は? 得意なヒットの打ち方は? そういうことを改めて考えてもらえるように後押ししてきた」

 投手全員が先発を経験したり、打順を柔軟に変えるなどそれぞれの挑戦を応援。自身も10度の手術を経験。その痛みが分かるからこそ、選手が負傷した場合にはチーム全員で原因を検証する。個人を尊重できるのは社会人野球ならではの特権でもあるという。

 「プロはあくまで『チームが勝つために』が一番大きい。自分がやりたくても、他の人との兼ね合いがあり、あまり大きい挑戦はできないと思う。でも社会人野球は全員が同僚で社員なので均等に挑戦してもらう。その中で発見があったとなれば、野球観も変わります。毎日試合がないからこそ選手の成長はすごくあって、本当に面白いです」

 成長に不可欠な「当事者意識」を育てるため、7人いるポジションリーダーは時期により変更するなど、各個人がリーダーとなれるような育成も行う。

 「ポジションが違うから分かりませんではなく、全ての人が理解している集団になりたい。社会人野球は社業の一環として、野球と本業の二兎(と)追うのが大事なので、どちらも生かしてあげたい。会社に入っていい経験ができたなと。野球を終えても彼らは同僚ですし、10年後、20年後に会社を支えているのを見てみたい、というのが社会人野球のやりがいだなと監督を任されてから感じています」

 さらにチームは、YouTubeで練習法やブルペンの様子まで包み隠さず発信する試みもしている。

 「上に行けば行くほど、勝利至上主義になってしまうという観点から、選手の情報を出さない企業も多い。でも選手を応援したい方にとっては見たいのに見られない。選手たちが育った土台があってこの舞台にいるから、その環境に感謝して成長している姿を見せてあげたいので。

もう一つは、自分も含めて最高峰の場所にいる集団だからこそ責任を持って発信できる情報もある。誰でも情報を発信できる時代に、一石を投じたい気持ちもあります」

 発足と同時に掲げた目標は3年で全国4強、5年で全国制覇。来年はその一つ目の節目を迎える。

 「100年近く続く社会人野球の歴史の中で、全国制覇の最短記録は日本石油(現ENEOS)さんの創部6年。時代は違いますけど、本気で達成しにいくんだというマインドになっている。ペースが速いか遅いかは別として、しっかり順序立ててここまで来られている。ただ、ここまではノーマークだったから来られたのか、自分たちの力があったのかというとまだ前者。今回の結果で、ある程度意識されるチームになれたと思う。今回の成績以下の結果はもう要らない。みんなで同じ方向を向いて、今できることプラス1を目指す。不可能はないと思う」

 ◆マルハン北日本カンパニー硬式野球部「GIVERS」 パチンコホールを中心に総合エンターテインメント事業を展開する、株式会社マルハンが24年春に仙台市を本拠地として発足。野球熱が高いことなどが加味され、仙台市が選ばれた。

東北地方で企業チームが発足するのは12年のトヨタ自動車東日本以来。「GIVERS(ギーバーズ)」というチーム名には「得るよりも多くを与え続ける」という意味が込められている。選手は球団の本拠地近くのマルハン店舗の契約社員として雇用されている。

 ◆館山 昌平(たてやま・しょうへい) 1981年3月17日、神奈川県厚木市生まれ、45歳。日大を経て2002年ドラフト3巡目でヤクルトへ入団した。09年に16勝を挙げて最多勝。19年に引退後、20年から2年間、楽天で2軍投手コーチ、22年から23年までBC福島で投手コーチを務めた。通算成績は279試合に登板し85勝68敗10セーブ、防御率3.32。

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