◆第108回全国高校野球選手権 第9日 ▽2回戦 英明6―1大分商(13日・甲子園

 夜空に、夏の終わりを告げるサイレンが響いた。大分商の投打二刀流、エースで主将の平田玲翔(れいと・3年)は、あふれる涙を何度もぬぐい、応援席に頭を下げた。

英明に敗れ、2回戦敗退。チームは1997年以来、29年ぶりの3回戦進出はならなかった。敗戦の責任を背負い、言った。

 「自分がふがいないピッチングをしたせいで、チームが負けてしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいです。最高の仲間に恵まれ、甲子園まで連れてきてもらったのに、恩返しができなかったのが悔しい。甲子園は一番楽しい場所ですし、一番怖い場所でもありました」

 1点を追う5回から救援。だが制球が定まらず、苦しい投球になった。直球の最速は148キロを計測したが、高めに浮いた。変化球主体に切り替えたが、センバツ8強の難敵に打ち返された。5イニングを投げ6四死球、3安打5失点(自責2)と思い通りにならなかった99球に「真っすぐにも変化球もついてくる。さすが強豪の英明さんだなと感じました。

調子が悪かったと言ったら言い訳になる。実力不足だと思います」と潔かった。

 最速152キロを誇る剛腕。注目の進路には「プロ一本」と明言した。50メートル走6秒0、高校通算20本塁打と俊足強打も注目されるが「チームを勝たせるエースを目指したい」と投手に専念する構えだ。

 プロのスカウト陣は甲子園大会で出場校が一巡した後、視察を終えるのが通例だが、この日は日本ハムの吉村浩常務取締役チーム統括本部長がネット裏に姿を見せ、熱視線を送った。平田は「今回出た課題を次の進路に向けて、全力で改善したい。ドラフトに引っかかるか分かりませんけど、全力で取り組みたい」と表情を引き締めた。

 劣勢にもかかわらず、アルプススタンドからの声援は最後まで温かかった。那賀誠監督(59)は「かなり疲労もあったんだろうと思います」とエースの奮闘をねぎらい、「平田で負けるのであればと私も腹をくくっています。平田のチームだったし、彼を主将に据えてからチームが一気にまとまって強くなった。彼の残した足跡は大商にとって、とても大きい」と感謝した。

 幼少期から、テレビで高校野球中継を見るのが好きだった。母・朋恵さん(49)は証言する。「甲子園をテレビで見ながら、自分でスライディングをしてました。自宅のリビングで服とかをベースに見立てて。ベースランニングをしていたんです」。死にたいくらいに憧れた大甲子園。だが、土は持ち帰らない。「もう一度、ここに帰ってくるんで。プロで、ここで1勝を挙げると誓ったんで」。涙は乾いた。多くの学びを胸に刻み、背番号1が聖地を去った。(加藤 弘士)

編集部おすすめ