◆凱旋門賞・仏G1(10月4日、パリロンシャン競馬場・芝2400メートル)

 10年前から物語は始まっていた。16年9月24日。

友道調教師はマカヒキで挑む凱旋門賞へ向かうための羽田空港で、ある管理馬がゴール前で差し切る瞬間を画面越しに見届けると、すぐに電話をかけた。「良かったですね」の言葉に返ってきたのは「お前も頑張ってこいよ」。相手は「アドマイヤ」の近藤利一オーナーで、勝ったのはアドマイヤミヤビ。のちにアドマイヤテラを生む芦毛の牝馬が2戦目で挙げた初勝利だった。「その子供で行けるなんてすごいよね」と不思議な巡り合わせに驚く。

 実は08年天皇賞・春で厩舎初のG1勝利を挙げたアドマイヤジュピタが挑戦するプランもあったがかなわず。利一オーナーが19年11月に死去した後、旬子オーナーがアドマイヤを引き継いだ。「亡くなった時に(所有馬を)色々と整理する中で、旬子さんが『ミヤビだけは(繁殖として)残したい』と言ってね。とにかく根底に馬が好き、という気持ちのある方。じゃないと、セリの下見であれだけ時間をかけられない」とトレーナーは笑う。

 16年のマカヒキで14着、22年のドウデュースで19着。「いい思い出はないかな」と冷静に受け止める。

ただ、苦い経験を無駄にはしない。過去2回は同年の日本ダービー馬だったが、3回目となるアドマイヤテラはG1未勝利馬。実績より適性を重視したうえ、前哨戦は今までの現地ではなく、国内の札幌記念を選択した。「今回は国内でほぼ100%にして、向こう(の滞在)を短めにして維持させるイメージ。香港やドバイはその形で(日本馬が)結果も出ているからね」と説明する。

 これまで海外でG1・2勝を含む重賞3勝を挙げながら、こだわりは「あまりない」と言い切る。ただ、凱旋門賞だけは少し違う。「やっぱり、日本で一番に勝ちたいよね」。トップトレーナーの至ってシンプルだからこそ伝わる強い意志。様々な運命の糸がつながった舞台で、アドマイヤテラと夢を追う。(山本 武志)

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