日本相撲協会は2日、福岡市内で大相撲九州場所(8日初日・福岡国際センター)の新弟子検査を行い、エストニア出身のザドロズノイ・アナトーリ(20)=秀ノ山=ら4人全員が身長167センチ、体重67キロ以上の体格基準を満たした。アナトーリは握力測定で“計測不能”となり機器を破壊するなど、優に握力100キロを超える怪力ぶりを披露。

内臓検査の結果を待ち、合格すれば(発表は8日)、興行ビザ取得後の来年初場所(1月)以降に初土俵を踏む。同国出身力士は元大関・把瑠都以来3人目。規格外のパワーを持つ逸材に注目だ。

 病院の一室に大きな音が響き渡った。握力の結果を聞かれたエストニア出身のアナトーリは「(握力計が)ブローク(壊れた)」と苦笑気味に告白した。昨年12月から研修生として本格的に日本で生活を始めたばかりで時折英語を交えての取材。握力計を右手で握ると「パーン」と音を立てて計測不能になったという。福岡市内の病院では毎年新弟子検査が行われているが、壊れた握力計の撮影に関しては、禁止の措置がとられた。

 握力計を製作する、ある体力測定器メーカーの担当者もあぜん。「測定で使用されたのは一般向けだとは思う。100キロを超えた力を加えると振り切れてしまうこともあるが、相当な力の持ち主なのでは」と驚いた様子で説明した。アナトーリも「力には自信があります」と即答した。

得意は握力を生かした右四つからの投げだという。

 13歳でエストニア王者になると、元大関・把瑠都のカイド・ホーベルソン氏と一緒に日本での白鵬杯にも出場した。同氏の勧めで現役時代にライバルだった秀ノ山親方(元大関・琴奨菊)が師匠を務める部屋に入門した。同親方に「もっと強くなれ」と発破をかけられ、私生活では「ちゃんこ鍋はおいしい。うどんなどの麺、焼き肉も好き」と食事は苦にしない。日本語は大好きなアニメ「BLEACH(ブリーチ)」の字幕を見て楽しく学んでいる。相撲界の握力自慢では、宇良の119キロが最高レベルで、アナトーリも推定100キロ超と、大きなインパクトを残した。

 初土俵に上がるのは早くて来年初場所。この日が20歳の誕生日で目標だった新弟子検査受検も終えた。夢を「師匠と把瑠都関と同じ大関」と掲げた。力士としての第一歩を踏み出し、「相撲が楽しい。もっと相撲が好きになりたい」。

同国の先輩である把瑠都は規格外の力で、所要8場所での十両昇進と歴代3位タイ(当時)のスピード出世を果たした。再びエストニアの怪人が令和の土俵を盛り上げる。(山田 豊)

 ◆ザドロズノイ・アナトーリ 2006年11月2日、エストニア・タリン生まれ。20歳。柔道やレスリングを経験し13歳から相撲を始めた。24年は世界選手権出場。得意は右四つ、投げ。179センチ、128キロ。家族は両親と弟2人。

 ◆力士の怪力メモ 日本相撲協会の公式YouTubeチャンネル「親方ちゃんねる」で130キロまで測れる握力計を用いて力士が計測に挑んだ。宇良の119キロ、照ノ富士と正代の115キロなど、100キロ超えを連発。また、同チャンネルでは横綱・豊昇龍が背筋力で290キロをたたき出していた。

 ◆エストニア出身力士 元大関で幕内優勝1度の把瑠都のほかに、北欧司がいる。2人は04年夏場所に初土俵を踏んだが、北欧司はホームシックのため8月に帰国。そのまま引退した。

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