最近、プラスチック製品の原料が高騰していて、パッケージの値上がりが相次いでいます。ただ一方で、昔ながらの「天然の包み」も、別の理由で手に入らなくなっているんです。
まずは、水戸名物の「わら納豆」。あの「わら」が足りないそうです。水戸納豆の老舗「笹沼五郎商店」の笹沼 寛さんに伺いました。
135年間守ってきたのに、一時販売停止に
「笹沼五郎商店」笹沼 寛さん
製造過程としては、お米を作る農家さんが小っちゃい稲刈り機で刈ったものを、洗濯物干す物干し竿みたいなのありますよね。ああいったやぐらを作って干し上げたものを、納豆の包材用として納品していただいているんですね。器として使うもんですから、納豆を包むのにどうしても最低75センチとかそこらぐらい必要なんですよね、長さ的には。そういったものを農家さんと契約して譲っていただいて、我々に供給いただくっていう流れがあったんですけれども。米を作る方たちも昨今の高齢化も含めて年々減ってっているもんで、わらの確保が年々減っていってしまってるという実情ですね。
基本的にはうちで製造ストップになったのは11月丸々1ヶ月ですかね。継続的に、今年も多分私もまた山にまた「わら探しの旅」に行かざるを得ないかなと思ってはいますけどね…。
そもそも、わら納豆の「わら」は、お米を収穫したときの稲わらを活用しているそうです。プラスチックのパックにしちゃえばいいのでは?と思いますが、稲わらで包んで発酵させると、わらの良い香りがうつって、香ばしさが生まれる。創業135年の笹沼五郎商店にも根強いファンが多いんです。
ところがその「わら」、農家さんが減っているうえに、今は機械でスパスパ細かく切り刻みながら収穫するのが当たり前。長さ75センチ以上の、納豆が包める長いわらが、手に入りにくくなっているそうです。そこで笹沼さんは去年、自ら車を走らせて農家を一軒一軒回って「わらをください!」とお願いしたそうですが、畳の芯に、競走馬のベッド…。「長いわら」はあちこちで引っ張りだこ。断られることも多かったそうです。
そしてついに去年の秋、創業以来はじめて販売を一時ストップ。現在は再開していますが、今年も「わら探しの旅」は続きそうです。
クマが出て、山に入れない
これと同じような問題が、新潟の名物「笹団子」でも起きていました。今度は「笹の葉」が足りません。新潟の「港製菓」の、大平 憲一さんに伺いました。
「港製菓」営業部主任 大平 憲一さん
<港製菓のHPより>笹の葉っぱをですね山に入って採取をしてくれる業者さん、我々「採り手さん」と呼んでいるんですけれども、その方たちが軒並み廃業や引退している状況にあるんですね。主に農家さんが田植えが終わった時期ですね、5月に田植え終わって時間ができた時に山に入っていって、集めていただいてるんですけれども。
近年だとですね、やっぱりクマとかイノシシの出没による被害も相当あって、めちゃくちゃ出るんですよ。
北海道とか秋田とか、人的な被害に遭われた方とかもいっぱいいらっしゃるので、そちらの方がニュース取り上げられるとは思うんですけれども、「出没した」っていうだけでいうと、ものすごいいっぱい新潟出てまして。皆さんやっぱり危ないので、家族から止められたりとかですね。我々もね、危険を冒して行ってくださいとは言えないので実際山に入られる方は本当に怖いんだろうなと思いますね。
笹団子1個を包むのに、笹が2~3枚必要。港製菓だけで年間1000万枚を使うそうです。これまでは田植えを終えた農家さんが、新潟や長野など県境の山に入って採ってきてくれていた。ところが近年、クマの出没が相次いで、その農家さんたちが山に入れなくなっています。「家族から止められた」と引退する人が続出しているそうです。
別の業者の話では、ササの仕入れ量が5年前の半分に減り、価格も1.5倍に跳ね上がっているとのこと。港製菓でも、一部「中国産」の笹で補わざるを得ない状況になっているんです。そんな中、大平さんはある振り切った新商品を作りました。
「笹むいちゃいました」誕生
「港製菓」営業部主任 大平 憲一さん
「笹団子の笹、むいちゃいました」という商品なんですけれども。
本当に足りないので、笹の葉っぱにくるまずに、中身のよもぎ餅だけをトレーに3個並べた商品です。緑のよもぎ餅が3つトレーに並んでいるだけ。笹がなければただのよもぎ餅でしかない。笹団子を笹団子たらしめるものがまさに「笹の葉っぱ」だと思うんですけど。その点は賛否両論というか、「笹を剥くあの手間がいいんだ」っていう方もすごく多いですし、否定的なご意見の方が正直多いんでうけれども。本音としては本家の笹団子を売りたい、作りたい、食べてほしいっていうところが一番なんですけども、それでもやっぱり新潟の大切な食文化なので、なんとか守っていきたい。知ってもらうきっかけに。
「笹がないなら、最初から剥いて売ればいいじゃないか」という、崖っぷちから生まれた商品。厳しい声もあるそうですが、「本音は笹に包まれた本家の笹団子を作り続けたい」と大平さんは話していました。
昔ながらの名産品をどう残していくか。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)

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