読者モデルというと、現在では「100億円ギャル」と言われる益若つばささん、バラエティで活躍中の鈴木奈々さんなど『Popteen』系の読者モデルさんを思い浮かべることが多いのではないでしょうか?彼女たちの活躍がとくに目立つため、まるで芸能界への扉のように思われがちですが、実際はとても狭き門。活躍できる方はほんの一握りという非常に厳しい世界です。


読者モデルは街角スナップから雑誌の読者起用は大昔からありました。ファッション誌の「街角スナップ」など、竹下通りを歩いていると「写真撮らせてください」と声をかけられる・・・。ドラマなどでも定番のあれです。実際今でも撮影部隊を見かけることは良くあります。

そして、ほとんどの方は一回限り。しかし、毎回おしゃれして撮影隊が出現するスポットを通りかかり、何度も声をかけられ、何度も出演することになり、やがて「街角スナップの常連」へ。そして読者からの支持を得る、それが読者モデルのはじまりです。

カリスマ読モの元祖は意外なあの人!読者が雑誌のメインモデルになる事。ギャル系雑誌『egg』が走りのように思われがちですが、それ以前にも「街角スナップ」の読者モデルが人気となり、普通のモデルのように特集が組まれていました。1984年『Olive』の読者モデル、栗尾美恵子さん(現・花田美恵子(元若乃花夫人))さんです。読者モデルのブームとまではいきませんでしたが、花田さん自身は読者の枠を超えて「モデル」として読者や有名写真家の支持を得ました。読者モデルは専業ではなく、あくまで「副業」。
花田さんも大学生で、そのまま航空会社へ就職し、当時は芸能界に入ることもありませんでした。

1995年、学生への携帯電話の普及で読モ界に追い風この年、前出の『egg』、そして『東京ストリートニュース!』(以下『ストニュー』)など「読者モデルありき」の雑誌が創刊しました。そして1996年「ちょっとエッチな女の子の雑誌」だった『Popteen』が方向転換し、ギャル向けファッション誌とリニューアルします。

ネットの普及で情報が瞬時に拡散するようになったため、編集サイドとしても「○日に撮影会やるよ!」と声をかけやすく、また携帯電話の普及で、「一人足りないんだけど、友達呼んできて」と気軽に声をかける事が可能になりました。それまでは家電話で取次ぎが必要で、さらに撮影日の変更や人数変更などとても労力が必要だったのです。

もともと読者モデルは「イベントに遊びに行く」という感覚の人が多く、ドタキャンも非常に多いため、たくさんのページを割けないという事情もありましたが、携帯電話の普及により、この問題がクリアされたのです。

原石を発見しやすいのでスカウトも目を付けている「素人なのに誌面をしっかり飾れるビジュアル」というのは芸能事務所にとって原石そのものです。しかも、ある程度業界に興味があるからこそ雑誌に出るのですから、街中で「芸能界に興味ありませんか」とスカウトして回るよりも、芸能事務所にとってはとても効率の良い話です。

山本梓さんは『ストニュー』『Cawaii!』の読モ登場をきっかけにデビューしました。他にも『ストニュー』には泉政行さん、忍成修吾さん、妻夫木聡さん、弓削智久さんなど今も活躍する有名俳優さんや、高島彩さん、青木裕子さんといった元アナウンサーなども登場していました。

定時制高校に通いながらラーメン店でバイトをし、『Popteen』で読モをしていた高岡奏輔さんは、ドキュメンタリー番組で取材をされたことでスカウトされました。『バトル・ロワイアル』『パッチギ!』などの名演技も、読モ活動あってこそかもしれません。


バラエティで活躍するPopteen系モデル前出の鈴木奈々さん、益若つばささんなど、Popteen系モデルはまた少し事情が違います。二人は「カワイイ」のはもちろん、特出すべきポイントがあり、鈴木さんは、その特異なキャラクターで人気、益若さんは私服や生活用品の高いセンスが評価されました。益若さんの経済効果は500億ともいわれています。プロデュースした商品もヒットを飛ばしていますし、読モから波及した仕事で売れている状況ですね。彼女たちにとっては、読モはあくまできっかけ。仮に読モがなかったとしても、何かしら他のチャンスからブレイクしていたかもしれませんね。

読者モデルは経験値モデルとして成りあがったと言えば、その代表格は押切もえさんでしょう。『Popteen』『egg』『ストニュー』に読モとして出演した押切さんは、自らプロモーション活動をし、ファッション系モデルへとステップアップしました。

後にパリコレモデルとなる寿里さんも、『ストニュー』出身。テレビ番組のモデルオーディションからプロモデルになり、エルメスなどのモデルを務める本格派モデルへとステップアップしました。彼らは読モからスカウトされたわけではありませんが、その経験をその後に活かしている事は間違いありません。

読モになったから芸能人になれるとも、モデルになれるとも限りません。
むしろその確率はとても低いのです。しかし、芸能界を志す人にとっては決して損にはならないでしょう。読者モデルとは、芸能界への扉というよりも、あくまで今後のための経験値を積む場、と考えたほうがよさそうです。

文/藤原ゆうこ
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