「クイズでわかる!資産形成」(毎週土曜日に掲載)の第46回をお届けします。資産形成をきちんと学びたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。


「円安株高」から「円高株安」に

 6月まで「円安株高」が続いていました。円安が進むとともに、円安メリットで日本の企業業績が改善する期待が高まり、日経平均株価の上昇が続きました。


 ところが、日経平均が最高値4万2,224円を付けた7月11日を境に、「円高株安」局面に転換しました。急激な円高が進むとともに、円高で企業業績が悪化する懸念が出る日本株が売られ、日経平均が急落しました。


<日経平均とドル/円為替レート推移:2023年1月4日~2024年9月9日>


円高メリット株はどれ?日本株ポートフォリオに組み入れた方が良い?
出所:QUICKより作成

 米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が9月以降、利下げを続けると、円高がさらに進む可能性もあります。


 そこで今日は、円高が業績にプラス効果を及ぼす「円高メリット株」を当てるクイズを出します。


今日のクイズ:円高メリット株はどれ?

 次の5銘柄のうち、2銘柄が円高メリット株で、3銘柄が円安メリット株です。


 円高メリット株2銘柄は、【1】~【5】のうち、どれですか?


【1】 日本マクドナルドホールディングス(証券コード2702)
【2】 セブン&アイ・ホールディングス(3382)
【3】 トヨタ自動車(7203)
【4】 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)
【5】 ニトリホールディングス(9843)


ドル/円為替レートは何によって動く?

 ドル/円を動かす要因は、たくさんあって分かりにくいですが、日米の金利に注目すればシンプルです。米国の金利が高く、日本の金利は低くなります。日米金利差が開く時は円安(ドル高)、日米金利差が縮小する時は円高(ドル安)が進む傾向が顕著です。


 もちろん、ドル/円が、それ以外の要因で動くこともあります。短期的には金利差と異なる方向に動くこともあります。それでも、長期目線で見れば、日米金利差がドル/円の動きを決める最も重要なファクターであることが分かります。


 特に良く動きを説明できるのは、2年金利差です。

2年金利差というのは、米国と日本の2年国債利回りの差です。


<日米の2年金利と2年金利差の推移:2008年1月~2024年9月(9日)>


円高メリット株はどれ?日本株ポートフォリオに組み入れた方が良い?

<ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2024年9月(9日)>


円高メリット株はどれ?日本株ポートフォリオに組み入れた方が良い?
出所:QUICKより作成

 2008年以降の動きを見ると、おおむね日米2年金利差と、ドル/円は連動していることが見て取れます。もちろん政治圧力などによって、金利差とは異なる動きをしている時期もあります。


クイズの正解:日本マクドナルドとニトリ

 クイズの正解は


【1】日本マクドナルドHD(2702)と
【5】ニトリHD(9843)


 です。


 日本企業全体で見ると、円高は業績にマイナスですが、この2社は、円高が業績にプラス寄与します。これからさらなる円高が進む可能性もあることを考えると、このような円高メリット株をポートフォリオに少し入れておいても良いと思います。


 一般的に、輸入産業は、円高になると輸入コストが低下するのでメリットを受けます。小売業や外食業は、「海外から輸入して、国内で販売する」ビジネスモデルをとっていることが多いので、円高がメリットとなることもあります。


【1】日本マクドナルドHDは、米国産牛肉を輸入して、食材として使っているので、円高になるとメリットを受けることがあります。


【5】ニトリHDは、中国などで生産した家具や住居製品を輸入して販売しているので、円高になるとメリットを受けることがあります。


「受ける」と言わないで「受けることがあります」と言うのには理由があります。「円高還元セール」のようなことをして、円高によってコストが下がった分、値下げしてしまうと、円高メリットが出ないこともあります。

厳しい競争にさらされているスーパーマーケットや外食業では、円高になっても、値下げが広がってメリットがほとんど残らないことがあります。


 日本マクドナルドやニトリは、競争力が高いので、円高メリットが残ると考えられます。ただし、一部が値下げに回る可能性はあります。


 日本マクドナルドやニトリは、これまで円安によって輸入コストが上昇するデメリットを受けてきました。日本マクドナルドは値上げによって円安のデメリットを減少させていました。


 以下3社は、円安メリット株です。円高になると、業績にマイナス影響を受けます。


【2】セブン&アイHD(3382)
【3】トヨタ自動車(7203)
【4】三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)


 3社の共通点は、米国など海外で稼ぐビジネスモデルを確立していることです。海外で稼ぐ、ドル建ての利益の円換算額が、円安だと膨らみ、円高だと縮小します。


 海外で1億ドルの利益を稼ぐ会社を例にとって説明しましょう。1ドル=100円の時は、1億ドルの利益は100億円になります。円安が進み、1ドル=150円となると、同じ1億ドルの利益は150億円になります。

日本企業は、円建てで決算を発表するので、円安によって海外の利益は増益となります。逆に円高が進むと、減益となります。


 セブン&アイHDは、米国セブンイレブンのドル建て利益が大きいので、円安がメリットとなります。円高になると、米国の利益の円換算額が縮小するので、マイナス影響を受けます。


 セブン&アイHDは小売業なので、国内のセブンイレブンには、ある程度円高メリットもあると思われます。ただし、それを上回るマイナス影響が米国の利益の円換算額の減少から生じると考えられます。


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